名作ホテルとともに生まれたラウンジチェア

  • 文:竹内優介(Laboratoryy)
  • 編集:山田泰巨
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Vol.48
名作ホテルとともに生まれたラウンジチェア
エッグチェア

アルネ・ヤコブセン

文:竹内優介(Laboratoryy) 編集:山田泰巨

素材とフォルムに向き合い続けたアルネ・ヤコブセンは、これまで家具に使用されたことのない材料と技術を導入することで、新鮮なかたちを実現させました。デンマーク・コペンハーゲンの中央駅前に立つSASロイヤルホテルのロビーで、多くのゲストを迎え入れるためにデザインされた「エッグチェア」もそのひとつです。

ヤコブセンは、彫刻家のように粘土を使って完璧なファルムを探究しました。「デザインとは、デコレーションではなく、プロポーションなのだ」。そう言い放った彼の言葉にも頷けます。
サイズはW860✕D790-950✕H1070✕SH370mm

クラシックな建物が並ぶコペンハーゲン中央駅近くに建てられたSASロイヤルホテルは、言わずと知れたアルネ・ヤコブセンの名作建築です。1950年代半ばにスカンジナビア航空(SAS)が計画し、すでに国際的な名声を得ていたヤコブセンが建築の設計、そしてホテルを構成するあらゆるエレメントを手がけることとなりました。1960年の完成後、幾度となく改装が重ねられ、2018年にはヤコブセンの意思を尊重しつつ次世代につなげる空間へと大規模にリニューアルが行われました。しかし「606号室」だけは、竣工当時のオリジナルをいまに遺しています。

ヤコブセンのSASロイヤルホテルは高く評価され、この空間のためにデザインされた家具や照明、ドアノブ、カトラリーなど、多くがのちに製品化されます。なかでも空間の要となったのが、ロビーに設えられた椅子「エッグチェア」。直線をベースにしたシャープな建築とは対照的に、有機的なフォルムが空間の美しさを際立たせています。硬質発砲ウレタンを家具に用いることで実現したシルエットは、それまでの家具の歴史や人々の常識を一変させ、その安楽性ともあいまって、世界中のセレブリティを虜にしました。

シェル側面のレバーでチルトの強弱の調整が可能で、自重による心地よい揺らぎを実現します。有機的なフォルムとやわらかなファブリックのシェル、それらと対比をなすスタイリッシュな造りのベースは回転式で、安定感に優れた設計に。

ロビーの喧騒から隔離し、プライベートな空間を演出するために大きな背もたれをもつデザインとしました。同じデザインのオットマンもあり、安楽性を高めます。