![ワインは自然派](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/statics.pen-online.jp/image/series/natural_wine/pc/title.png)
ワイン好きなら知っておきたい、希少品種。
こころみノートンココ・ファーム・ワイナリー
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ノートンという品種をご存じでしょうか? ピンと来たあなたはかなりのワイン通。というのもこの品種は、世界各地にあるようなヨーロッパ系の品種ではないからです。日本でも、この「こころみノートン」をつくった栃木県足利市のココ・ファーム・ワイナリー以外に、ノートンを育てているところはほとんど見られません。
グラスに注いでみると、黒紫色が美しい、深みのある色合いです。カシスのような香りに加えて、次第にジャスミンの花のような香りが立ち上ってきます。そしてわずかに酸を思わせるようなニュアンスも。しかしなんといっても驚くのは、その口当たりのなめらかさ。いままで私が飲んできたノートンのワインとは、一線を画するおいしさです。
醸造を手がけたのは、ココ・ファーム・ワイナリーの桒原(くわばら)一斗さん。桒原さんは、敬愛するフランス・ロワールのナチュラルワインのつくり手、クロード・クルトワのように、醸造家である前に農夫でありたいと言います。自分で醸造もするようになって、より一層この思いを強くしたそうです。
「ワイン自体は醸造家がつくるのですが、その味わいはほぼすべて、ブドウにかかっています。醸造の仕事は、ブドウがなりたいワインになるように見守るもの。その言葉の通り、培養酵母を加えずに酸化防止のための亜硫酸の添加を最小限にするには、健全でポテンシャルのあるブドウを収穫することが大切なんです。化学合成農薬を減らした栽培も重要です」
ノートンという品種は、アメリカ中部のミズーリ州が原産地。粒は小さめで、粒と粒の間には隙間があり、よく見かける生食用のブドウとはまったく異なります。そうした房の形状もあって、ノートンは病気に強く、ワイン用ブドウを育てるには厳しい気候の土地でも、化学合成農薬をできる限り減らすことができるそうです。
桒原さんは、果梗(かこう)を取り除いて軽く破砕した後は、そのまま野生酵母が湧き出すのを待って醸造。さらに数日後、少し収穫が遅い区画のノートンを房のまま、発酵中のもろみの上に乗せたのです。そうすることで、足利産ノートンの個性である華やかな香りと酸をもった、やわらかな質感のワインに仕上げることができました。
日本ではまだ無名に近いブドウの力とつくり手の思いが、一緒になって誕生したワインなのです。
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なめらかさとフレッシュな果実味を併せもち、ぐいぐいと飲めてしまう赤ワインです。04年にココ・ファーム・ワイナリーに入社した桒原さんは、現在は栽培チームのリーダーを務めていますが、この2~3年で醸造も手がけるように。彼が農夫としての立ち位置をベースにしながら、これからつくるワインが楽しみです。
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ココ・ファーム・ワイナリーでこの品種を育て始めたのは2000年。日本の気候に適した品種を求めて世界中を探し、見つけたのがノートンでした。現在は、ワイナリーの前にある急斜面で栽培されています。気候変動の激しい近年こそ、気候に合った品種を探すことの大切さを教えてくれる品種です。
自社管理面積/約6ha
栽培醸造家名/桒原一斗
品種と産地/ノートン(栃木県足利市)
ワインの容量/750ml
価格/¥3,800(税込)
つくり/果梗を取り除いた後、軽く破砕してタンクに投入し、野生酵母での発酵を待つ。4~5日して発酵開始後、2度目の収穫のノートンを房のままその上に乗せた。5%甕で発酵させたタナをブレンド。フランス産オークの古樽で6〜6カ月半の熟成後、清澄せず無濾過で瓶詰め(瓶詰め時のみトータルSO2、20ppm)全行程において、果汁やワインの移動では、ポンプを使わず重力を利用。そうすることで亜硫酸の使用量を減らすことができる。
栽培/リュット・レゾネ。化学合成肥料・除草剤の散布はなし。不耕起草生栽培。殺菌剤は年に1回使用。
問合せ先:ココ・ファーム・ワイナリー
https://cocowine.com
TEL:0284-42-1194
※この連載における自然派ワインの定義については、初回の最下段の「ワインは、自然派。について」に記載しています。さらに毎回極力、栽培・醸造についての情報を開示していきます。