Vol.46 コレクターの熱意が結集した、ブリンキー・パレルモの「史書」。

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    写真・文:中島佑介(POST)

    Vol.46 コレクターの熱意が結集した、ブリンキー・パレルモの「史書」。

    “Blinky Palermo: Drucksachen” / Blinky Palermo / Rüdiger Maaß
    『ブリンキー・パレルモ:ドルックザッヘン』/ ブリンキー・パレルモ / リューディガー・マース刊

    書店という立場上、個人的に本を収集しないように心がけていますが、「本や印刷物に関する本」は手元に留めてもよいことにしています。なかでも最近見つけた『ブリンキー・パレルモ:ドルックザッヘン(Blinky Palermo: Drucksachen)』は、ひと際印象的な本でした。

    この本は、アーティスト、ブリンキー・パレルモに魅せられたコレクターのリューディガー・マースが出版しました。パレルモは1960年代にヨーゼフ・ボイスに学び、ゲルハルト・リヒターやジグマー・ポルケといった芸術家たちと親交のあった作家です。単純な色彩と抽象的な形を使った作品群は、ドイツの抽象画における重要な作品として高く評価されています。

    本書には、作品集やグループ展の展覧会図録、展示のインビテーションカードなど、リューディガーが蒐集したパレルモにまつわる印刷物がまとめられています。印象的なポイントのひとつめは、複数の本が重ねて撮影され、ページをめくるごとに一冊ずつ本が少なくなっていくという図版。この種の本は資料的なまとめ方が多いですが、本書は独創的な編集方法でビジュアルブックとしての面白さを見せながら、掲載されている印刷物それぞれのサイズ感も把握できるような仕掛けになっています。

    印象的だったもうひとつのポイント、それはコレクターの成果によって生まれた本であることです。本書はコレクターが個人的に蒐集したパレルモの印刷物のアーカイブのみならず、ひとりのアーティストの活動を追った研究書であり、当時の動向を伝える史書でもあり、グラフィック・デザインのレファレンスとしても機能します。見方によってさまざまな可能性を秘めた本書は、コレクターの個人的な目的を超えた意義が宿っています。

    アートについて語られる際、作家もしくは作品にスポットが当たることが多いなか、実はコレクターの存在も欠かせません。この本は、コレクターの活動が直接的に文化へと貢献した好例でしょう。

    積み重なっている本が、ページごとに1冊ずつ減っていくのが面白い図版。デザインはミュンヘンを拠点とするデザインチーム、「デイリー・ダイアログ(Daily Dialogue)」によるもの。

    グループ展の図録を収録した章では、パレルモの作品が掲載された見開きのページも掲載。それぞれの展覧会で彼がどのように取り上げられたのかがわかります。

    展覧会のインビテーションカードなどもコレクションの一部。処分されてしまいがちなこれらの印刷物も、熱心なコレクターは蒐集の対象としています。

    “Blinky Palermo: Drucksachen” / Blinky Palermo / Rüdiger Maaß
    『ブリンキー・パレルモ:ドルックザッヘン』/ ブリンキー・パレルモ / リューディガー・マース刊
    タイトル:『ブリンキー・パレルモ:ドルックザッヘン』
    出版社:リュディガー・マース
    ページ数:480ページ
    サイズ:23×16.5 cm
    ISBN-13:978-3-00-061022-6
    出版年:2018年
    価格:¥8,640(税込)

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