Vol.3 Yチェア

  • 文:竹内優介(Laboratoryy)
  • 編集:山田泰巨

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Vol.3
Vol.3 Yチェア
Yチェア

ハンス J. ウェグナー

文:竹内優介(Laboratoryy) 編集:山田泰巨

シンプルで機能美を備えた北欧家具の多くは、私たち日本人の感覚とも親和性が高く、時代を超えて愛されています。名作も数多い北欧家具のなかでも、もっともよく愛されている椅子といえばYチェアでしょう。日本の住空間にも合わせやすく、長く愛用できる飽きのこないデザインはどのように生まれたのでしょう。

日本ではYチェアの名で知られますが、ヨーロッパでは鳥の胸骨に似ていることからウィッシュボーンチェアの通称で愛されています。サイズはW550×D510×H760×SH450mm

わずか13歳で家具職人の修行を始め、17歳にしてマイスターの資格を取得したハンス J. ウェグナー。デザイナーでありながら、木の特性を熟知した職人の腕を持ち合わせていたからこそ生まれた一脚が、このYチェアです。デザイナーと職人の両面をもつウェグナーは、表現の幅が広がるのであれば、と機械加工も意欲的に取り入れていました。そんな柔軟な考えをもつ彼の姿勢をよく体現するYチェアは、中国の明王朝時代の椅子にインスパイアされて1950年に発売されました。制作過程の多くに機械を用いながら、繊細な作業を必要とするやすり作業や組み立て、座面に使われるペーパーコードの編み込みなどを手作業とすることで、コストを抑えながらも高い品質を維持しています。巧みな技能の使い分けに裏付けられているからこそ、見た目にも美しく、座り心地の良い椅子が実現しました。

緩やかな曲線と細い部材からやわらかな印象を受けるYチェアですが、ブラックフレームを選ぶことでクールに引き締まります。たとえば、木の質感が楽しめるソープ仕上げのオーク材のテーブルと組み合わせてコントラストを効かせ、モダンな山荘のような温もりあるインテリアにするのも素敵です。

背もたれと肘掛が一体となった馬蹄型のバックレストは体格差に関係なく背中の丸みにフィット。丸棒を曲げたアームに肘を掛ければダイニングチェアの域を超えたくつろぎを体感することができます。

ビーチ、オーク、ウォルナットのウッドカラーに加え、現在では25色の塗装カラーを展開。シンプルな椅子だからこそ多彩なカラーで、どんなインテリアにもマッチします。