好敵手、ボルグとマッケンローがテニスウエアをファッションアイテムに変えた。

    Share:

    好敵手、ボルグとマッケンローがテニスウエアをファッションアイテムに変えた。

    文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一
    イラスト:Naoki Shoji

    第4回 「ウイルソン 」のラケット

    プロテニスプレイヤー、大坂なおみが全米と全豪オープンの女子シングルスを日本人で初めて制覇し、日本でもテニスが大きくクローズアップされています。
    いまから40年近く前の1980年、テニス史に残る名勝負がありました。それはウィンブルドン選手権の男子シングルス決勝です。戦ったのは、スウェーデン出身の“氷の男”ビヨン・ボルグ(当時24歳)と、ニューヨークの“悪童”ジョン・マッケンロー(21歳)です。風貌もプレースタイルも大きく異なる2人。試合は1−6、7−5、6−3と進み、第4セットはタイブレークの末、マッケンローがこのセットを獲得、誰もがマッケンローに勝負の流れが移ったと思いますが、ボルグが最終セットを8−6と接戦で取り、ウィンブルドン5連覇を達成しました。時間にして3時間53分。テニス史に刻まれたこの壮絶な試合は、2017年に『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』のタイトルで映画化もされました。
    世界中でどれだけの人がこの試合に興奮し、彼らのプレースタイルを真似てテニスをしたでしょうか。そして、2人が着ているユニフォームやラケットや靴を手に入れようと躍起になったことでしょうか。
    いまでこそ普通になったファッションの文脈で語るスポーツミックス。インスピレーションのもとはこの頃だったのかもしれません。
    今回は1970〜1980年代にテニスで世界中を熱狂させた2人の男たち、ビヨン・ボルグとジョン・マッケンローの愛用したものを紹介します。

    ロジェー・フェデラー愛用のテニスラケット「PRO STAFF RF97 AUTOGRAPH」。黒をベースにした精悍な印象を備えたミッドサイズのモデル。素材は「パサルト・ファイバー+カロファイト・ブラック・ブレイディッド・グラファイト+ケブラー」。重さは平均で340g。¥45,360/ウィルソン ラケットスポーツ

    ビヨン・ボルグとジョン・マッケンローが対した1980年の試合を再度見ると、何か違和感を感じます。2人が使うラケットがものすごく小さく感じるのです。この試合の2年前、ストリング面が110平方インチ(1960年までは最大68平方インチという規則があった)のいわゆる“デカラケ”が開発され、ラケットのサイズにスポットが当たりました。しかし“デカラケ”を使うプロテニスプレイヤーは当時まだ稀で、この試合で2人が使っていたのもレギュラーサイズのラケットでした。それで現在のテニスの試合とは様相が違って見えたのです。
    ボルグが使っていたのはベルギーの「ドネー」、一方、マッケンローが当時契約していたのが、アメリカの「ウィルソン」のラケットです。この試合で使われたのは「Jack Kramer PRO STAFF」というモデルです。
    実はその後継とも呼べるモデルを使っているのが、現在、史上最高のテニスプレイヤーと言われる、ロジャー・フェデラーです。今回紹介するのは「PRO STAFF RF97 AUTOGRAPH」というモデルで、フェデラー自身がチームの一員に加わり、コンセプトからデザイン、パフォーマンスまで開発段階から参加して生まれたモデルです。長年「PRO STAFF」を使い続けるフェデラーですが、「回り込んで打つ、逆クロスでの精度、球威を向上させたい」とのフェデラーの要望から、このモデルではあえてラケットループの強度をわずかに下げて製作されました。またこのモデルからフレームに彼のサインが大きく入っています。フェデラーのプレーのため、フェデラー自身のためにつくられたテニスラケットの逸品で、「新世紀のPRO STAFF」と言えます。

    「ウィルソン」はアメリカのイリノイ州で1913年に創業された老舗です。テニス、野球、ゴルフ、アメリカンフットボールなどのスポーツギアを中心に商品を展開しています。日本の錦織圭も現在、「ウィルソン」のテニスラケットを使っています。

    「PRO STAFF」は同ブランドの代表的なモデル名。ジョン・マッケンローをはじめとして、多くの有名テニス選手に使用されました。

    フレームの内側には、グランドスラムタイトル獲得を20ももつ、名選手ロジェー・フェデラーのサインがレーザー彫刻技術でプリントされています。

    問い合わせ先/アメアスポーツ ジャパン TEL:03-6831-2710