東京車日記いっそこのままクルマれたい!
第76回 ALPINE A110 / アルピーヌ A110
もしかしてキミは夢で見た“星の王子様”!?アルピーヌ A110が、首都高に降臨する夜。

オリジナルのレガシーを見事に蘇らせたアルピーヌ A110。威圧感はもちろん、まったく嫌味がないデザインだ。
アルピーヌはもともと1950年代に、ルノーのディーラーでレーサーだったジャン・レデレによって創設されたスポーツカーブランド。なかでも有名なのが名車A110で、ラリーの夜間走行で使用する大型のフォグライトが特徴的なライトウェイトスポーツだった。日本で知られるようになったのはスーパーカーブームの時かな。最高速度を競うタイプのスポーツカーではなかったこともあって、知る人ぞ知る通好みな車種だったよね。
ブランドを傘下にしていたルノーは、95年以降はしばらくアルピーヌを寝かせていたんだけど、ようやく復活させた。それもA110の名を冠した新型車とともに。50台の初回限定車は約20倍もの応募が殺到し、即完売。
その気合いの入り方も半端ない。フロントにはオリジナルの大型フォグライトを彷彿とさせるライトがあって、アルピーヌのレタリングが真ん中できりりと顔を引き締める。こだわり抜いたスタイリングが特徴で、特にリアはファストバックなクーペスタイルを効果的に見せるためオーバーハングを少々長めに取っている。これがテールエンドにかけて上向いていて、リアウイングを断固拒否しているかのようなんだ(笑)。オリジナルのA110シリーズも代々、クーペスタイルのリアビューとそのルーフラインには一家言あったから、DNAなのだともいえる。「美しくなければならない」という、フレンチスポーツカーの金字塔への思いの深さを感じられるよね。
走りもとにかく傑出した面白さ。A110にちなんだかどうかはわからないけど1110kgの驚異的な車重に、カーブではぐいぐいインに切れ込むスーパーハンドリングマシンだ。
唯一無二のデザインで、フレンチスポーツを体現。
メガーヌRSと同じ構造だけど新開発の1.8Lエンジンは、乾いたエキゾーストノートを響かせ、ターボのメカニカルノイズやアフターファイア音を派手に効かせている。試乗中はほぼトラクションコントロールをオフにしたレースモードで走っていたんだけど、テールスライドにいつでももっていけるこのモードが、いちばんいきいきと走らせられるからに他ならない。よりスライドしやすいように専用タイヤまで備えているチューナー魂は、我が子のデビュー戦に足型を取って専用スパイクまでつくってしまうサッカーファンの親心に通じるかもしれないね(笑)。
トヨタ 86の向こうを張るようなAマークのロゴや、メーターパネルに表示される主張が強いシフトナンバー、はたまたその背景が星空になっていたりとか、アラフィフには少々気恥ずかしくなる演出傾向はあるものの(笑)、純粋であることに至上の価値を置くフランス人らしくて断然ありですよ。アイドルか王子様って感じでね。
ロータス エリーゼやアルファ ロメオ 4C、おそらく意識しただろうポルシェの718 ケイマンと同様に峠を攻めるのにうってつけ。だけどA110は他社のストイックさとは逆方向の、日常の足としてガンガン使えるカジュアルさ、陽性のフィーリングがなにより魅力的。惜しむらくはマニュアルの設定がなく、今後も追加の予定はないってところかな。足まわりはオリジナルと同じダブルウィッシュボーン構造で昔気質な味つけだから、マニュアルだとさらにオリジナルに近い感じが出せたんじゃないかな、とかね。もちろんこのままでも、十分に楽しめそうな王子様ではあるけどね。
ウインカーはヘッドライトリングが点滅する仕様。
シートはサベルト製のバケットシート。リクライニングは固定だが快適性は非常に高い。
A110のシグネチャーロゴ。
出力やトルクも表示される情報量多めのメーターパネル。
完璧なバランスの側面にはトリコロールのワンポイントが配されている。
ボリューム感を強調したリアビュー。
●エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
●排気量:1798㏄
●最高出力:252PS/6000rpm
●駆動方式:MR(ミッドシップエンジン後輪駆動)
●車両価格:¥7,900,000~
問い合わせ先/アルピーヌ コール
TEL:0800-1238-110
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