全否定の「囚人筋トレ」が普通の自重筋トレと違う3つの理由

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全否定の「囚人筋トレ」が普通の自重筋トレと違う3つの理由

写真はイメージです。 Satyrenko-iStock.

<ジム通いのみならず、プロテインやステロイドも「すべて不要」と言い切る話題の『プリズナートレーニング』。「著者が元懲役囚」「300ページ超」「(それなのに)初心者でも取り組みやすい」という、異色の筋トレ本だ>


アメリカといえばファストフードばかりで、アメリカ人は太っている人が多い――そんなイメージを持っている人がいるかもしれない。

だが現実には、アメリカ人の体格は二極化していると言える。成人の約40%がボディー・マス・インデックス(BMI)で「肥満」に分類されるほどの「肥満体国」であることは事実だが、経営層やホワイトカラーの間では体を鍛えている人が少なくない。肥満は自己管理ができない証拠とばかりに、採用や出世においてマイナス評価になるとされているのだ。

「デキるビジネスパーソンほど体を鍛える」――そんな「アメリカンスタンダード」が今、日本に到来している。サントリーホールディングスの新浪剛史社長やGMOインターネットの熊谷正寿会長兼社長など、トレーニングしていることを公言する経営者や起業家が増加中だ。

経営層だけではない。「筋トレ」はもはや一大ブーム。スポーツジムが有名人を使ったテレビCMをバンバン流し、NHKで放送された筋トレ番組がネットでバズる。書店に行けば、「筋トレ本」が数多く並んでいる。

ブームの一角を担うのが、いわゆる「自重トレーニング」の広がりだ。器具を使わず、自分の体の重みだけを使って鍛える方法である。筋トレをしたいがジムに通うのはお金が掛かると敬遠する人もいるし、ジムに通っている人も、出張時など道具なしでトレーニングしたい場合がある。そして「自重こそが真の筋トレだ」という信念の人も。

そんな人たちに絶大な人気を集めている本がある。ジム通い、器具を使ったトレーニングのみならず、プロテインからトレーニング用サプリメント、ステロイド(筋肉増強剤)に至るまで、すべて不要だと言い切って全米ベストセラーとなった『Convict Conditioning』だ。

2017年7月に刊行された邦訳版『プリズナートレーニング』(山田雅久訳、CCCメディアハウス)も話題を呼び、版を重ねて現在10刷。アマゾンで200以上のレビューが付いて、平均4.3の高い評価を得ている。

【参考記事】ジム通いもプロテインも不要な「塀の中の筋トレ法」が日本上陸

著者のポール・ウェイドは元懲役囚だ。ヘロイン密売の罪で投獄されて20年以上を刑務所で過ごし、そこで自重トレーニングの師匠――70歳近い元SEALs(米海軍特殊部隊)隊員の終身刑囚だ――に出会った。鋼のような肉体をつくり上げて過酷な獄中生活を生き抜くと、釈放後、自重トレーニングの伝道師に。まさに「塀の中の筋トレ法」である。それだけでも大多数の「筋トレ本」と一線を画している。

その内容も、「筋トレ本」としては異色かもしれない。『プリズナートレーニング』も、その続編となる『プリズナートレーニング 超絶!!グリップ&関節編』(2018年4月刊行、山田雅久訳、CCCメディアハウス)も、共に300ページを超えるボリュームがあり、あらん限りのポール・ウェイド流「筋トレ哲学」が文字でつづられているのだ(もちろん、トレーニングの写真も豊富だが)。

実は初歩の初歩から解説

腕立て伏せは、立って壁に手のひらを置くところから

さらには、「塀の中の筋トレ法」というコワモテなイメージと異なり、実は初歩の初歩から解説してくれる点も特徴的である。
例えば、プッシュアップ(腕立て伏せ)だけで10のステップを踏むよう説くが、壁と向かい合わせに立ち、手のひらを壁に置いて行うウォール・プッシュアップ(下写真)など、最初の4ステップは誰もが知る普通の腕立て伏せ(フル・プッシュアップ)より負荷が小さい。筋トレに自信のない初心者でも取り組みやすいのだ。

プッシュアップのステップ1、ウォール・プッシュアップ(『プリズナートレーニング』73ページ)

1冊目の『プリズナートレーニング』では、解剖学や運動療法に基づき、人体すべての筋肉を働かせる基本動作として、以下の6種目(ウェイドは「ビッグ6」と呼ぶ)について解説している。6つを超えるトレーニングはやり過ぎで、5つ以下だと、体のどこかに未発達の筋肉ができてしまうのだという。

・プッシュアップ(腕立て伏せ)
・スクワット
・プルアップ(懸垂)
・レッグレイズ(脚挙げ)
・ブリッジ
・ハンドスタンド・プッシュアップ(逆立ち腕立て伏せ)

この「ビッグ6」それぞれに10のステップがある。ステップごとに見開き2ページでまとめられ、文字に写真を(時にイラストも)交えて分かりやすく説明されている(下写真参照)。どのような動きが要求されているのか、理解できずに戸惑うことはまずないだろう。

スクワットのステップ3、サポーティド・スクワットの解説(『プリズナートレーニング』118~119ページ)

ウェイドによれば、自重トレーニングにおいて重要なのは、毎日何時間もトレーニングすることではなく、適切な筋群を一緒に鍛えたり、トレーニングにかける時間を制御するといった「戦略」を立てることだという。

「基本の動きをマスターし、技術的なバリエーションを見つけ、時間をかけて強度を上げていく」と、原書の出版元ドラゴンドアとのインタビューでウェイドは語っている。「このような方法でトレーニングすれば、短期間でとても強くなり、筋肉も大幅に発達する。また、この方法は関節にも優しい」

そんなウェイドだが、かつては何時間も、繰り返しトレーニングに励んでいた時期もあった。「服役中は完全にオーバーワークだった! 特にアンゴラ(編集部注:ルイジアナ州の刑務所)では、毎日1000回のプッシュアップを繰り返していた」

だが最終的に、それが間違いであることに気付いたという。「自重トレーニングはウェイトを使ったトレーニングと同様であるべきだ。きついトレーニングを短時間行い、次第に強度を上げていくべきなのだ」

「私は自重トレーニングに取り組むアスリートに対して、通常は、まずウォーミングアップを行い、余力が残る程度で2~3セット、とアドバイスしている。これがほとんどの人に適した方法だ」

【参考記事】筋トレは量か強度か 「囚人筋トレ」のポール・ウェイドが全てを語った

ケガなく、真に強靭な体を

続編は上級編というより、関節やライフスタイルを扱う

ウェイド流「塀の中の筋トレ法」に取り組み、「ビッグ6」のそれぞれで先のステップへと進んでいけば、相当な筋力を得られるだろう。何しろ、プッシュアップの「ステップ10」は「ワンアーム・プッシュアップ」、つまり片腕での腕立て伏せだ。下の写真を見てもらいたい。

「肩と肘を曲げ、顎が床面からこぶしひとつ離れた位置にくるまで、体をコントロールしながら下ろしていく」(『プリズナートレーニング』91ページ)と書かれているが、この域に達することができる人は果たしてどれだけいるのか。

プッシュアップのステップ10、ワンアーム・プッシュアップ(『プリズナートレーニング』91ページ)

とはいえ、だからといって続編の『プリズナートレーニング 超絶!!グリップ&関節編』が、1冊目の内容をこなした超・超・上級者のみ対象の本というわけではない。

1冊目の刊行後、読者から寄せられた質問に答えるべく制作されたこの続編は、「特殊な部位の鍛え方」「関節トレーニング」、そして「脂肪の減らし方、疲労からの回復法など、ライフスタイル上のアドバイス」の3つをテーマとしている。

ウェイドによれば、自重トレーニングでグリップ(握力)や関節にまで気を配りながら鍛えることで、ケガなく、真に強靭な体をつくり上げることができるのだ。無理な筋トレで関節や腰を痛めた経験のある人には、見逃せない内容ではないだろうか。

【参考記事】ジム不要の「囚人筋トレ」なら、ケガなく身体を鍛えられる!

1冊目の『プリズナートレーニング』でウェイドはこのように書く。

現代的なジムトレーニングといにしえのキャリステニクス(編集部注:自重トレーニングのこと)の違いについて、長い論文を書くこともできる。しかしスペースがないので、基本的な話にとどめる。キャリステニクスが他の現代的な方法よりも優れている領域は6つある。(44ページより)

そうして8ページにわたって6つの「利点」を説明している。

1. 自重力トレーニングは器具をほとんど必要としない
2. 自重力トレーニングは有用で機能的な運動能力を発達させる
3. 自重力トレーニングは筋力を最大化する
4. 自重力トレーニングは、関節を保護し、より強いものにする
5. 自重力トレーニングは完璧な体を開発する
6. 自重力トレーニングは、あなたの体脂肪レベルを正常化し調整する

もはや自重トレーニングに、取り組まない理由はないと言えるかもしれない。あなたが体を鍛え、デキるビジネスパーソンになりたいのであれば、なおさら。

文:ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

『プリズナートレーニング――圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ』
ポール・ウェイド 著 山田雅久 訳
CCCメディアハウス

『永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ プリズナートレーニング 超絶!!グリップ&関節編』
ポール・ウェイド 著 山田雅久 訳
CCCメディアハウス

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