生まれ育った扇状地でつくった白は、出汁を効かせた和食にしみじみ寄り添う。

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    日本ワインで乾杯!We Love Japanese Wine!

    #43|
    鹿取みゆき・選&文
    尾鷲陽介・写真
    selection & text by Miyuki Katori
    main photograph by Yosuke Owashi

    日滝原

    山地が国土の7割以上を占めている日本では、河川山地から平野盆地に流れて行く場所などに、多くの扇状地が形成されています。まるで扇のように広がった水はけのよい土地は、その広々とした景観から、土地の名に「原」が付くことが多いようです。「桔梗カ原(ききょうがはら)」しかり、「岩垂原(いわだれはら)」しかり。長野県北部にある「日滝原(ひたきはら)」も、千曲川に流れ込む支流によって形づくられました。

    こうした扇状地の土壌は、小石を多く含み、水はけが良好。けれどその反面、水はけのよさが農家にとってはあだになり、水不足によって稲がまともに育たないという苦労をしてきたようです。そのため日本では、扇状地では米ではなく、水はけのよさを好む果樹を育ててきました。本州でワイン用ブドウの畑を拓くならば、まずは扇状地を探すべきだと、私自身も思っています。

    「日滝原」というこのワインは、同じ名前の扇状地で育てられたブドウでつくられました。日滝原で生まれ育った楠茂幸さんが、第2の人生でワインづくりをする一歩を踏み出した時、あと押ししてくれたのが、この土地の抜群の水はけのよさでした。そして楠さんがこの地でつくりたいと思ったのが、お出しを使った和食に寄り添うワインでした。

    「日滝原」にはふたつの品種が使われています。ひとつはセミヨン、もうひとつは、ソーヴィニヨン・ブランという品種です。セミヨンはふくよかな味わいを、ソーヴィニヨン・ブランはキリッとした爽やかな味わいを生み出します。

    「セミヨンのふくよかさは、出汁の味わいを包み込み、ソーヴィニヨン・ブランの爽やかさは、あと味のキレをよくします」と楠さんは言います。

    がつんとしたインパクトや、こってりとした樽の風味はありません。しかし、じわじわ伝わってくる繊細で優しい味わいは、出汁を効かせた煮浸しや野菜の炊き合わせにぴったり寄り添ってくれます。

    生まれ育った扇状地でつくった白は、出汁を効かせた和食にしみじみ寄り添う。
    楠茂幸さんの以前の勤務先は航空機器のリース会社。まったく異なる業界からワインづくりに転身する際は、かなり迷いもあったそうです。しかし、数十年後に後悔するくらいならば、一歩を踏み出そうと、ワイナリーの設立を決心しました。白だけでなく、ピノ・ノワールやメルロもお薦めです。

    日滝原

    ワイナリー名/楠わいなりー
    品種と産地/セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン(長野県須坂市)
    容量/750ml
    価格/¥3,240(税込)
    問い合わせ先/楠わいなりー
    TEL:026-214-8568
    www.kusunoki-winery.com 

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