写真:宇田川 淳
Vol.11 雨や雪に備えたい! 都市生活にフィットする防水バッグのセレクション
ドラマやCMでありがちなシーンのお話。ビジネス街で働く人が、急に雨が降ってきたとき、バッグを頭上にかざして小走りに駆け出す光景ってありますよね。でもこれって、「リアルじゃない」と思ってしまうのです。なぜって?バッグに収納したパソコンなどの電子機器や、取引先に渡す重要書類が濡れてしまったら、洒落になりませんから! 髪の毛やスーツがずぶ濡れになり、風邪をひこうが転ぼうが、社会人が守るべきモノはバッグの中身です。雨の日は傘を差しても、手持ちのブリーフケースは確実に濡れます。ファスナーから水が侵入してきます。背中に背負ったバックパックも、傘から飛び出た部分がびしょびしょ、って経験は誰しもあるはず。
バッグに関していえば、『水濡れに強い』=『正義』です。反論無用の正しい公式です。ところが、世の中の撥水性が重視されたバッグは、本格アウトドア向けのものが大半。大人が街中で、ビジネスの場で、使いやすいシックなモデルはごくわずかです。アウトドアブランドのラインアップの中にも都会的なデザインはありますが、休日や仕事終わりの印象があるブランドのロゴが大きく主張するバッグを、ウィークデイに用いることに抵抗がある人もいるでしょう。今回の「着る/知る」は、そんな水濡れに強い洒落たバッグをセレクトしました。どれもスポーティで、プライベートでも気負わずに使えるものばかりです。
まず、このページに掲載したのは、海外の高級レインウェアブランド、「ノルウェージャン・レイン」の最新2WAYバッグ。バックパックとして背負うことができ、ブリーフケースとして手持ちもできます。英国のベテランバッグデザイナー、アリー・カペリーノとのコラボモデルです。さらに、その横にある英国製レザーシューズも水が滲み込まない工夫に満ちているのですが、これらの機能説明は次ページで、ノルウェー在住のデザイナー、T-マイケル自身に語っていただきましょう。
人物・店舗撮影:高橋一史
縫い目止め加工された本格派の、レトロモダンなデイリーバッグ
大雨の中でも快適に過ごせる高機能レインコートが話題の、「ノルウェージャン・レイン」。ハイクラスなセレクトショップでの取扱いが大きく広がっています。彼らが満を持して今季発表したのが、いつでもどこでも愛用できるこのバッグです。
「エレガントで、且つスポーティなものをつくりました。ひとつ持っていれば便利に使えますよ。余計なディテールを省いた、『ザ・ノルウェージャン・レイン』といえる自信作ですから、色バリエーションもこの黒しか用意していません」
と、デザイナーのT-マイケル。
背中はクッション性のあるパッド入りで、内側にはパソコン収納部とオープンポケットがあります。本体は同ブランドのレインコートと同じ再生繊維の生地で、内側にフィルムが貼られた防水仕様です。縫い目はシームテープ加工により、水の侵入をシャットアウト。風格を高めるため、タブやストラップには本革が配されています。革は完全防水とはいえませんが、耐水性のあるものが選ばれています。このように、機能とファッション性のバランスに優れる点に、ノルウェージャン・レインの大きな特長があります。
「止水ファスナーを見れば、誰でも一目で防水性のあるバッグだと分かるでしょう。コラボしたアリー・カペリーノらしい味のあるカジュアル感も大切にしました。我々の思想と、彼女のモノづくりを融合させ、お互いにベストな着地点を目指したのです」
T-マイケルがいる部屋は、ブランドのプレスルーム。うしろに見えているコートは、今季のコレクションです。このラインアップの中で、気になる靴を発見しました! 英国靴好きにはお馴染み、「グレンソン」とのダブルネームシューズです。
「サンプルをつくったときに、グレンソンのティム・リトルから、『13時間も水に浸けたけど、滲み込まなかったよ! 』とすごく嬉しそうなメールがきたんです(笑)」
ソールとアッパーをつなぐ縫い目の内側に、自転車用のゴムを巻きつけ、水の侵入を防いだ靴です。グッドイヤー製法でつくられ、通気性も確保。撥水性のある革は、「チタニウムタンニング」という技術で鞣されています。
「まだこの技術を知らない人は多いでしょうね。革の鞣しは『クロム鞣し』という化学薬品を使う手法がポピュラーですが、これは環境汚染につながります。チタニウムタンニングは、その心配がない最新の技術です」
コートの素材にも、製造工程でCO2削減に配慮した生地が使われています。
「現代におけるラグジュアリーとは、内面の豊かさのことを差すと思っています。我々デザイナーも、それを踏まえた仕事をすべきでしょう」
次ページでは、あの「水沢ダウン」のブランドの、「ポーター」コラボが登場。
ミニマルシックな、都会を駆けるスポーツバッグ
東京・代官山に直営店を構える、2ブランドのバッグをご紹介しましょう。まずは、スキーウェアで名高い「デサント」のハイエンドライン、「デサント オルテライン」から。店名は「デサント ブラン」で、アウトドアに対応する本格防水ウェアがずらりと揃っています。高機能なのに先端モードのエッセンスに満ちているのが、デサント オルテラインの魅力です。大ヒットの「水沢ダウン」も、このブランドのアイテムの一つ。
シェルのようにストイックなバックパックは、「ポーター」とのコラボ。スーツスタイルにも似合う洗練されたデザインで、出張時にも活躍しそうです。既存のポーターの型を流用した別注品ではなく、まったくのオリジナルでつくり上げたバッグです。
一般のバックパックのアウトポケットは出っ張っていたり、口が開いているものが主流ですが、それだと雨が内部に入りやすくなります。このバッグはディテールを覆い隠すことで、雨が下に流れ落ちるように工夫されています。生地も撥水力が高く、街歩き程度の用途なら十分に中身を守れるでしょう。ただし縫い目はシームテープ加工されていませんし、ダブルファスナーの位置によっては隙間ができます。 “防水” とは呼べないのですが、実は本格的な雨降りの対策も考えられており……、
バッグ底面のポケットにレインカバーが収納されていて、これで全体を覆えば、もはや土砂降りも怖くありません。カバーにもファスナーポケットがついており、頻繁に出し入れする財布やスマホなどを入れておけます。細部までよく考えられた製品なのです。
斜めがけ用ショルダーストラップつきの2WAYトートも、ポーターとのコラボアイテム。ストラップ調整で、メッセンジャーバッグのように体に密着させる使い方ができます。内袋がシームテープ加工されており、カバーなしでも高い防水性を誇ります。よりシックなバッグを使いたい人は、こちらを選択してはいかがでしょうか?
DESCENTE BLANC
デサント ブラン 代官山店
東京都渋谷区猿楽町19-4 CUBE代官山 C棟
営業:11時~20時
TEL:03-6416-5989
不定休
www.descenteblanc.com/
ブランド名変更で、新生スタートした注目株
代官山に行ったらぜひ立ち寄っていただきたい店が「ROOT」です。八幡通り沿いにあり、並木橋近くで駅から離れていますが、昔ながらの代官山らしさが感じられる地域に佇むムードのいい小さな店です。服から小物までアウトドアテイストのアイテムが充実している中で、注目すべきはROOTを運営する会社のオリジナルバッグブランド、「F/CE.®(エフシーイー)」。5年間「フィクチュール」という名で展開していたブランドがリネームされて、今年の夏以降に新登場しました。
シリーズ化されている防水バッグも、バックパックからスモールグッズまでバリエーション豊富です。男が好きなアウトドア感覚がベースにありながら、すっきりとシンプルで、都会にも違和感なく馴染むデザイン。仕事で使いたい人は、上写真のカメラバッグがお役立ちでは?内側にカメラやレンズを固定するボックスケースが入っており、取り外せば普通にトート、ショルダーの2WAYで使えます。
トップをグイッと捻って開く独特のファスナー構造により、水が侵入する余地がありません。キャンプや釣りでも使えますし、ジム通いで持ち歩いてもいいでしょう。ひとつ持っていれば、何かと便利に使えるスグレモノです。
しかもお値段が、意外なほどのリーズナブルさ。 大量生産のアウトドアブランドと、価格帯はさほど変わりません。各パーツにも手抜きなく、新ロゴデザインを手掛けたのは、著名なアートディレクターの平林奈緒美さん。スタイリッシュでありながら身近な、嬉しいバッグブランドの誕生です。
今回の「着る/知る」は、いかがでしたか?お気に入りのバッグを入手したら、ぜひ雨の日だけでなくデイリーに愛用してあげてください! (高橋一史)
ROOT
ルート
東京都渋谷区猿楽町4-5 J&Hビル101
営業:12時〜20時(日曜のみ、19時まで)
TEL:03-6452-5867
不定休
root-store.com