#24西海岸のいまを知る、モダンクラフトのミュージアム
ファッションの街・原宿に、本格的なモダンクラフトの宝庫が眠っていたとは! そんな驚きを与えてくれるのが、明治通りに面したファッションとクラフトの複合ショップ「CPCM」です。「Crafts and Permaculture Country Mall」の名が示す通り、広大な2階フロアには、陶器、家具、照明、ラグなど、多種多様なアイテムが所狭しと飾られており、その品揃えで訪れるものを圧倒します。
カリフォルニアのモダンクラフトを中心にしながら、ヴィンテージ、日本からヨーロッパ、さらにはメキシコの民芸まで、時代も、洋の東西も問わず、集められた品々が並べられたさまはまるで博物館のよう。見たことのないさまざまなアイテムが不思議と調和する魅力的なコーナーをつくり出したのは、ディレクターである熊谷隆志さん。現在は、LAのインテリアショップ「ローソン・フェニング」の日本初となるポップアップ・ショップが開催されています。
「ローソン・フェニング」は、カリフォルニアの自然美とミッドセンチュリーのデザインを融合させたスタイルで人気を集めるインテリアショップ。もともと美術学校でデザインを学んだローソンとフェニングは、ヴィンテージにアレンジを加えた家具から出発したといいます。そのためか、彼らがデザインするオリジナルアイテムにはヴィンテージ感と現代的な香りがほどよく両立されています。さらにオリジナルに加えて扱うのが、カリフォルニアを中心としたデザイナーやアーティストの作品。
たとえば、有機的なフォルムが50年代のフランスの照明デザイナー、セルジュ・ムイユを彷彿とさせるジェイソン・コアリックの照明は、ポップな色使いがミッドセンチュリースタイルのアクセントにぴったり。プリミティブなテクスチャーと洗練されたフォルムのヘザー・ローゼンマンのセラミックは、サイドボードの上に飾るアートピースとしても存在感を放ちます。花びらをモチーフにしたメレディス・メットカフの陶器はサボテンや多肉植物の鉢カバーとして、購入する人も多いそう。こうした実用性だけでなく、自然や手仕事の温かさを感じるクラフトを手掛けるデザイナーや作家たちが、近年LA周辺に集まっているといいます。そうしたインディーなコミュニティの雰囲気がショップにも醸し出されています。
西海岸のいまを知る、現代クラフトのショーケース。
西海岸的モダンクラフトのショーケースの様相を呈しているCPCM。熊谷さんは年にひと月ほど海外を旅し、インスタグラムや現地のショップで知ったアーティストやデザイナーの作品を直接買い付けているといいます。その他にも店内イベントやアイテムの入荷により、ほぼ毎月レイアウトが変わるそう。西海岸の同時代のクラフトの動向と熊谷さん独自の関心をミックスし、タイムリーに反映した店づくりと言えるでしょう。
陶器のほかに力を入れているのは、インテリアトレンドとしても注目されるウォールハンギングです。熊谷さんの一押しだというボリューミーな白のタペストリーは、LAのエースホテルのロビーにも飾られているタニア・アギニガのもの。マクラメのプラントハンガーは、サンフランシスコのヴィンテージショップ「no shop」のオーナーによる手編みのものやヴィンテージのもの。空間を縦に使うアイテムは、インテリアのアクセントとなってリズムを生みます。こうしたあまり馴染みのないアイテムを取り入れる参考となるのが、店内のディスプレイ。流木を渡し、複数の長さを変えながら吊るし、壁面のデコレーションにしています。
ベースとなる陶器に合うものとして、イタリア・トスカーナの陶芸家、クリスチャン・ペロションのパステルカラーの陶器があったり、ミッドセンチュリーに連なる文脈として、イームズ邸でも使われていたモロッコのベニワレンのヴィンテージラグがあったり、さまざまなものがミックスして織りなす宝箱のような店内。用途が明確にあるわけではない、オブジェのようなクラフトは、なかなか買うきっかけがないもの。でも、西海岸のモダンクラフトには懐の深い大らかさがあって、そこにあるだけで、大地や自然を感じさせてくれます。それがいま求められる理由かもしれません。
欲しいものを買いに行くのではなく、なにが待っているかわからない、店での偶然の出合いにかける。旬のスタイリングが施されたディスプレイを巡りながら、自分の感性にしっくりくるものを探し出す。ネットショッピングでは味わえない、一期一会のマーケットのようなわくわく感が待っています。
CPCM
東京都渋谷区神宮前6-12-22
TEL:03-3406-1104
営業時間:11時〜20時
https://cpcm-shop.com