#20叢・小田康平さんが提案する、植物との暮らし。
きれいに整った部屋……だけどそこになにか物足りなさを感じた時、植物を加えてみると部屋に生き生きとした気配が漂いはじめます。けれども、まめに世話できるかわからないとためらう人も多いのではないでしょうか。 今回は個性豊かな姿かたちに心動かされ、同じ空間にいると気になって日々眺めてしまうような植物を紹介します。
傷がついていたり、途中で枯れかかったり、それでも生き抜いてきたたくましい多肉植物やサボテンたち。そうした個性ある植物を、その魅力を引き立てる器とともに提案するのが、「叢(くさむら)」の小田康平さんです。小田さんは陶芸家がつくる器を鉢に用いた提案も多く、現在は陶芸家の寒川義雄さんとコラボレーションした展示会『叢 - 器を纏う - 』をシボネ青山にて開催中です。
同じ広島を拠点にする小田さんと寒川さん。以前から花器も制作し、自身でも花を活ける寒川さんが、小田さんのアーティスティックな新しい植物の提案に興味をもったことから、2人のコラボレーションはスタートしました。植物と鉢とのコーディネートに定評のある叢ですが、「普段、僕の意識のなかで鉢のウェイトは1%くらい。植物の足を引っ張らない色やかたちの植木鉢を探してきます。それが陶芸家とコラボレーションするときは植物と鉢のバランスは50:50くらいになる」と小田さんは言います。
今回は寒川さんの鋭利で繊細な器に対し、トゲが特徴的なサボテンを多く選んだとのこと。マットなテクスチャーの器が、乾いた地域を原産とするサボテンの背景を引き立てます。またシャープでモダンなフォルムで植物たちの豊かな個性はさらに高まり、それぞれが自らのキャラクターを主張しはじめるかのようです。
そんな植物たちを眺めながら寒川さんは、「植物と鉢の組み合わせは、料理の盛りつけに近いのかも。自分の器が別の表情になるのがおもしろい」と小田さんのセレクトには抜群の信頼を寄せます。今回の鉢合わせはすべて小田さんによるもの。多種多様な器で、植物の魅力をより強く引き出していきます。たとえば、表皮が枯れて色が抜けた株元に見どころがある個体には口が広がった器を合わせて、見どころとなる背景をつくります。また、丈のある植物には高さがある鉢を合わせることでバランスを見ます。
道具と組み合わせることで生まれる、植物のしつらい。
今回の展示では、照明器具や陶板など、植物を部屋に飾るためのしつらい道具もともに提案されています。小田さんが「Kekkai」と呼んでいる照明具は、もともと窓がない室内でも光合成ができるよう、木製のフレームに照明を仕込んだものです。植物に直線的に光が当たるよう設計されているため、夜になるとまるでショーケースに入ったアートピースのように、美しく浮かび上がります。
「本当は白いすっきりした空間に植物をぽつんと置くのがかっこいいけれど、家ではなかなか難しい(笑)。でも夜、照明を落として、これだけを灯すと雑多な背景が消える。それを眺めながら、植物や空間を楽しめたら最高です」
また、鉢の下に敷く陶板も寒川さんが制作。花を活ける時に板を敷くのと同じように、陶板を取り入れ、鉢とのコーディネートを考えるのも楽しそうです。板は古材を用いる感覚で、オブジェやヒビの入った陶板を転用。「食器と違い、縛りがなく自由な感覚で遊べたのが楽しかった」と寒川さんは手応えを語ります。
植物を入れる鉢にこだわるのも、飾るための道具に気をつかうのも、ともに暮らす植物に目を向けて欲しいからこそ。「買った時が一番ではなく、生き生きと生長するさまを愛でてほしい」と小田さんは言います。そのためには、光と風と温度がある植物にとって良い環境に置き、適切に管理することが大切。小田さんは植物の見せ方の提案にまで踏み込むことで、管理する人の関心を高めようとしているのです。
「叢」のお客さんには、「うちの子」と呼んでかわいがる人も多いのだとか。確かに、個々にまつわるストーリーを聞き、ぴったりあつらえた衣服のような器に仕立てられた植物と暮らしていたら、愛着もひとしおでしょう。インテリアのいち要素として捉えるのではなく、それくらい佇まいが気に入った植物を選び、一緒に暮らということに植物の魅力があります。手をかけ、愛情をかけることで、生き物としての植物の生命力に気づく。それが植物と暮らす醍醐味なのではないでしょうか。
CIBONE Aoyama
東京都港区南青山2-27-25オリックス南青山ビル 2F
TEL:03-3475-8017
営業時間:11時~21時
www.cibone.com
※『叢 - 器を纏う -』展は9/20まで。
9月10日 (土) 14時~15時には小田さんと、小田さんが植物監修を行った「ボーイ ミーツガールの極端なもの」の著者・山崎ナオコーラさんのトークイベントが開催されます。予約・参加費不要。