写真:SHINMEI(SEPT)
Vol.06 もっと知りたい、メゾン キツネの“和モノ”の世界
今回は人気ブランド「メゾン キツネ」の最新秋冬の服から、「カフェ キツネ」の夏の新作コーヒードリンクまで、盛りだくさんでお届けします!
近頃気になるのは、ニッポンらしさを感じるファッションです。華美に装わない我々の服の着方や、若手ニッポン人デザイナーのストイックな服づくりは、「世界に誇れるスタイル」でしょう。西洋由来の “ファッション” と、“和” が混じり合い、違和感なく共存する日常が広がったら楽しいですね。前回の「着る/知る」Vol.05では、現代人に似合う浴衣に着目しました。ぜひそちらもご覧いただければ幸いです。
さて、そんな考えを抱きつつ秋冬の服をチェックしていたところ、「これ!」と思ったのがメゾン キツネの和柄シリーズ。子ども時代からフランス・パリに移り住んだクリエイティブ ディレクターの黒木理也さんならではの、 和と西洋が絶妙なバランスで融合した服です。ここに掲載したセーターのモチーフはまさしく、我が国を象徴する自然の風景。日の出、松、富士山などが表されています。それらの和の記号をグラフィックの材料として用いて、抜群に完成度が高いシックな服に仕上げた、そのアレンジ力が秀逸です。
合わせるパンツは、濃紺のブルーデニムでセーターの上部分と色を揃えてもいいですし、ベージュのチノパンでも、ミリタリーパンツでもウールパンツでも自由自在。都会の街中に映える一着ですが、ニッポン庭園のような場所に着ていっても洒落てます!
最新秋冬コレクションに息づく和モノ
「メゾン キツネ」2016-17年秋冬コレクションは、メンズもレディスも「日本の伝統」にインスパイアされています。心惹かれるアイテムをピックアップしてみました。
画像提供:メゾン キツネ
ジャケットとして着られるマルチカラーの異素材使いのシャツ。形やディテールはシンプルなワークウェアで、インディゴデニムとストライプ生地の組み合わせによって和モノな雰囲気に。一方で、西洋的と感じる人もいるでしょう。ストライプはテーラードジャケットの裏地によく使われますから、テーラードを裏返すとこんな感じになります。ニッポン的にも西洋的にも、どちらにも解釈できるデザインがステキです。
カーディガンジャケット? いえ、「どてら」ですね! 東北地方で野良着として親子代々受け継がれてきた、布を継ぎ合わせた「ぼろ」を彷彿とさせるパッチワークのアウターです。今季コレクションの中で、これがいちばん “和モノ” かも。
ストリートテイストのミリタリー迷彩柄コート、と思いきや、柄の中には富士山や日の出が! モチーフといい、黒線で縁取られた図案といい、浮世絵の味わいがたっぷり。近くで眺めると、絵柄のうねりもすべて雲や山の風景に見えてきませんか !?
今年2月にオープンした「メゾン キツネ代官山」も、ニッポンの建築が取り入れられています。かつて建築を学んでいた黒木さんの思いが詰まった空間です。彼いわく、
「海外からの観光客に向けた店舗というより、ニッポンの若い人に自分たちが住む国のよさを知ってもらいたかったんだよね」
秋冬モノが出揃った頃にでも、蔦屋書店「代官山 T-SITE」の裏手近くにあるこの店を訪れてみてはいかがですか?
パリ発ブランドのカフェは、ニッポンの伝統をリスペクト
「メゾン キツネ」がニッポンの伝統を意識していることを強く印象づけたのが、2013年に東京・表参道にオープンした「カフェ キツネ」。内装が和風なのに、メニューはエスプレッソを中心にしたコーヒーというあたりが、和洋折衷の美学です。
店舗撮影:高橋一史
エントランスにはテラス席もあり。小道を通って店に入る誘導もニクい演出です。
格子状になった長方形の窓は伝統建築の意匠。店内は直線で構成されています。
額装の絵は、あじさいと、ききょう。
天井の左側の模様は伝統の「青海波(せいがいは)」。
カウンターには、ちょこんとキツネが。「カフェ キツネ」の名前に合うユーモアです。
では最後に、この夏限定イチオシ人気メニューをお届け!
トニックウォーターにエスプレッソを注ぎ入れ、レモンを浮かべて完成。
上に載る泡がそそります。豊かなフレーバを味わうために、ストローでなく直接飲むのがポイント。
肝心のお味はというと……、「ウマい!」。
まずエスプレッソの苦味を感じ、すぐあとにトニックウォーターの軽い甘味と清涼感が口に広がります。ジュースのような酸味があるのは、コーヒー豆がフルーティだからでしょうか、トニックウォーターの成分でしょうか。巷でも流行中のドリンクという「エスプレッソトニック」(¥600)は、暑い夏にピッタリ!
涼を取るには空間から、です。すぐ近くにはカフェと同日に誕生した国内初のファッションの旗艦店「メゾン キツネ」もあります。秋冬アイテムをチェックしつつ、コーヒー片手に表参道を散歩するのもオツなものですね。(高橋一史)