世界最軽量PCをつくり出した、日本のものづくり。

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    青野 豊・写真photographs by Yutaka Aono

    世界最軽量PCをつくり出した、日本のものづくり。

    マグネシウムリチウム合金を実用化したNECだからこそ開発できた世界最軽量。実勢価格¥189,800

    ノートパソコンで最も重要な条件は何か。それは「軽さ」だと、毎日ノートパソコンを鞄に入れて持ち歩いている私は、断言する。軽くても、小さきものはだめだ。キーピッチが狭く、スムーズに原稿が書けないからだ。さらにいうと、立ちながら書けるならより効率的だ。紙とペンの時代は画板に原稿用紙を挟み、電車で立ちながら原稿を書いていたが、ノートパソコンは、いずれにせよ座らなければ書けない。でもタブレット形で使えるなら、立ちながらの原稿やメモ書きも可能だ。 

    徹底的に軽く、タブレットとしても活用可能なノートパソコンが、NECのLAVIE Hybrid ZEROだ。11.6型のディスプレイそのものがタブレットとして取り外して使え、重量は合計わずか798g。 
    なぜに、これほど軽いのか。その秘密が新素材、マグネシウムリチウム合金だ。NECが世界で初めてノートパソコンにて同合金を実用化したのは、2012年8月発表の「Lavie Z」だった。実はマグネシウムリチウム合金はそれまでは実用不可能といわれていた。リチウムの活性が非常に強く、すぐに酸化することで、プレス加工に必要な金型表面の潤滑性が低下し、亀裂が走る。原因となる亀裂は、どこかに必ず起点があるはずだ。不純物を顕微鏡で探しても何も見つからない。でも少しずつ角度を変え、合金断面を根気よく観察し不純物の粒子を見つけた。 

    表面処理も難しかった。金属の塊を板状にして切断しプレス。そのままではすぐ酸化してしまうので防錆用の表面処理を施し、塗装のための下地をつくる。これら数々の困難を乗り越え、遂に実用化に成功した。感動するのは、マグネシウムリチウム合金の効用で軽くて薄いだけでなく、同時にとても堅牢なことだ。原稿書きとは思いを吐き出す行為である。頭に浮かんだフレーズを間髪入れずに、神経系が両指を動かしてキーボードを叩かせる。その熱き思いを受け止めるキーボードとボディがやわであれば、書くほうもそれを感じて、萎えてしまう。本機はしっかりと、書き手の思いとアクションをキャッチしてくれる。 

    もうひとつ優れているのが、画面にぎらつきがないことだ。テレビと同様にギラギラ反射画面にしたパソコンもあるが、自分が映り込むので、もの凄く不快だ。その点、本ディスプレイは表面が非反射なので、安心して原稿を書いていられる。特に明るい屋外では助かる。モバイル環境でいかに仕事をスムーズに進められるかに一点集中して開発されたLAVIE Hybrid ZERO。日本のものづくりという観点からも、スター製品である。

    ディスプレイを簡単に取り外すことができ、タブレットに。タブレットとしても410gと、非常に軽い。

    麻倉怜士
    デジタルメディア評論家。1950年生まれ。デジタルシーン全般の動向を常に見据え、巧みな感性評価にファンも多い。近著に『高音質保証!麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)『パナソニックの3D大戦略』(日経BP)がある。
    ※Pen本誌より転載