トンボの羽根が送り出す、強く優しい風。

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    青野 豊・写真photographs by Yutaka Aono

    トンボの羽根が送り出す、強く優しい風。

    従来の空気清浄機とは一線を画すデザイン。シンプルで、どんなインテリアにも合う。実勢価格¥45,000

    空気清浄機というのは24時間365日使ってこそ、その機能が活き、効果が発揮されるもの。ずっと出しておいて稼働させるという点では冷蔵庫と似ている。だから、シャープがデザイン性や設置性を高めた新機軸の空気清浄機「S-style」を投入してきたことは、大変喜ばしいことだと思っている。1年の半分以上タンクを空のまま使う“加湿空気清浄機”のなんと不毛なことか。本体サイズが大きくなり、見栄えにも少なからず影響する。大型のリビング向けなど、これまで通りの加湿空気清浄機のシリーズも残しつつ、空気清浄機能単体に絞った、薄型でコンパクトな新シリーズを打ち出してきたシャープに喝采を送りたい。 

    ところでこの「S-style」、デザインありきだったのではないという。同社のデザイナー、奈良俊佑氏によれば、「シャープならではのネイチャーテクノロジーという技術の裏付けがあり、そこに上質な空気を具現化する美しいデザインの空気清浄機をつくりたいという思いが重なったところに、商品企画チームを加えての設計、という流れで実現した」と。
    シャープは自然界に存在する技術を家電に応用するのを得意とするが、今回お手本にしたのは、驚くほど速く飛べるトンボの羽根の原理。網目状の凹凸に覆われたトンボの羽根から学んだテクノロジーによって、摩擦抵抗が小さく、薄型にしても風量低下が少ない“ネイチャーファン”が誕生。薄型でも音が静かでしっかりと風を送る構造を可能にしたのだ。本体の厚みはわずか10㎝弱。スタンドも15㎝程度なので、床はもちろんデスクや棚の上にも置ける。 

    電源ボタンを押すとファンが回転し、すっくと立ち上がるように開く送風口。そのカバーの裏に反射するLEDランプがほのかに光る様子が美しい。しかも空気の状況によってランプのカラーが変わる仕様だ。 背面の吸気口――そのカバーがまた繊細な柄を紡いでいて見事なのだから吸い込んだ部屋の空気は、0.3㎛の微粒子を99.97%以上、集じんできる高性能フィルターによって浄化される。静電気を帯びたフィルター繊維にしっかりと吸着されるため、目詰まりしにくい。 

    高濃度プラズマクラスターイオンで浮遊ウイルスの作用を抑える機能まで備えるのは、これからの季節、特に心強い。ブドウのようなイオンのマークが左上に奥ゆかしく鎮座しており、シルバーに光るイオン発生ユニットの交換口もホワイトの本体の心地よいアクセントになっているなど、その機能とデザインとが融合している点にも好感がもてる。同シリーズには、これと共通のデザインコンセプトをもつ新しい加湿器もラインアップしているので、季節や環境の変化に応じて併用するのもいいだろう。

    天面部の操作ボタンもいたってシンプル。PM2・5などの微小な粒子の濃度を知らせてくれるランプも。

    神原サリー
    新聞社勤務を経て「家電コンシェルジュ」として独立し、豊富な知識と積極的な取材をもとに、独自の視点で情報を発信。2015年2月、表参道に「家電アトリエ」を開設。テレビ出演や執筆、コンサルティングなど幅広く活躍中。
    ※Pen本誌より転載