創刊以来、新しい世界の扉を叩く表現者たちに注目し続けてきた雑誌『Pen』。昨年に続き、今年、躍進を遂げた日本のクリエイターたちをたたえる特集号「クリエイター・アワード 2018」を12月1日に発売しました。なかでも最も光り輝いた6組のクリエイターを招き、12月初旬に東京・有楽町のザ・ペニンシュラ東京にて授賞式を開催。その模様をレポートします。
「クリエイター・アワード 2018」授賞式当日は、マスコミ関係者を含む約180名の招待客が会場に。これは、去年と比べてほぼ倍の人数です。日本の未来を担う表現者=クリエイターが、いかに注目されているかがうかがえます。
Penが独自の視点からその活躍を検証し、受賞者を決定する「クリエイター・アワード」ですが、今年の受賞者の活躍するフィールドは大きくふたつのジャンルに分けられます。そのひとつが、アート。建築、彫刻、デジタルアートと受賞者のジャンルはそれぞれ異なりますが、三者三様それぞれに世界を驚かせる偉業を成し遂げています。
そしてもうひとつが、演劇。映画をはじめ日本の演劇が改めて世界から注目を集める中、前例のないものに挑戦し、結果を出してきた3人の役者たちが受賞しています。未来を担う彼らの可能性に会場から惜しみのない拍手が送られ、非常に有意義な一夜となりました。
国境を越え躍進するアーティストや、新しい世界に挑む俳優たちが一堂に。
司会進行を務めたのは、J-WAVEナビゲーターの山中タイキさん。紹介動画とともに名前をコールされ、まず登場したのは建築家の石上純也さんです。石上さんといえば、日本建築学会賞や、2010年のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の最高賞である金獅子賞を獲得するなど受賞歴多数。18年3月からはパリの美術館「カルティエ現代美術財団」にて個展『FREEING ARCHITECTURE(自由な建築)』が開催され、その独自の世界を存分に表現したところ、あまりの話題性の高さに会期が延長されたほど。そして同年6月には、栃木県那須町にボタニカルガーデン「水庭」が完成。その創造力の高さを国内外に知らしめました。
石上さんに続いて壇上に上がったのは、彫刻家の名和晃平さん。名和さんといえば、パリ・ルーヴル美術館の象徴であるピラミッドの中に展示中の、光り輝く黄金の彫刻『Throne』が話題になっています。これは日仏友好160周年記念イベント「ジャポニズム2018」の一環として展示されているものですが、あまりの人気で会期が1カ月延長されたほどです。
猪子寿之さん率いるチームラボもまた、お台場の『森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボ ボーダレス』と豊洲の『チームラボ プラネッツ』というふたつの大型美術館を完成させるなど、世界を驚かせる偉業を今年は達成。充実感に満ち満ちていました。
会場が一気に盛り上がったのが、4組目の受賞者である吉田鋼太郎さんが登壇した瞬間です。吉田さんといえばやはり、今年の話題はドラマ『おっさんずラブ』の大ヒット。妻子がいながら部下の男性、春田への恋心を抑えられない“ヒロイン”黒澤役を見事に演じ切りました。テーマのひとつにLGBTも含めたこのドラマは、コメディゆえに笑いを交えながらも、視聴者の大いなる共感を得て巷の話題をさらいました。吉田さん自身も「ただ面白おかしくやるのとは違うと感じていた」と語っています。
また自他共に認める“シェイクスピア俳優”である吉田さんは、2019年に開幕する舞台『ヘンリー五世』にも出演。恩師・蜷川幸雄さんの遺志を継ぎ「彩の国シェイクスピア・シリーズ」の2代目芸術監督にも就任するなど、多方面で活躍しています。
拡張し続ける、日本のクリエイターの可能性。
2018年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した、是枝裕和監督の『万引き家族』。その重要な役どころを見事に演じたのが、女優の松岡茉優さんです。三谷幸喜演出の舞台『江戸は燃えているか』にも出演するなど、18年は女優としての可能性をぐっと拡張させた年となりました。
また、18年が文字通り“新しい一年”となったのは、俳優の稲垣吾郎さん。4月公開の『クソ野郎と美しき世界』、19年春公開の『半世界』とふたつの映画に主演、さらにふたつの舞台をこなすなど、まさに躍進の年に。新しい扉が開かれた1年だったといっても過言ではないでしょう。
「Pen クリエイター・アワード 2018」授賞式に続いて、Pen Onlineの人気連載企画「#バズ美女」の表彰式も開催。佐藤マクニッシュ怜子さんはモデルであり、「和」x「洋」がコンセプトのナイトウェアブランド、アマテラスを立ち上げたビジネスウーマン。中村真里さんはインダストリアルでノームコアな世界観を表現したブランド、RIM.ARKのクリエイティブ・ディレクター兼デザイナー。丸林広奈さんは雑誌「CanCam」で活躍するスタイリスト。村田倫子さんは商品のプロデュースも手がける多才なモデル。それぞれ異なる世界で活躍し、多大なる発信力をもつ女性4名にも、会場から惜しみない拍手が送られました。
ひとつの立ち位置にとどまらず、常に変わることが求められる時代。そこで必要なのが、クリエイターの力です。創造性とは、芸術やファッションや音楽などの文化的な面にのみ寄与する力ではなく、企業の進化や発展にも必要とされつつある能力。「Pen クリエイター・アワード」は、その一端に触れる企画としてお楽しみいただけたのではないでしょうか。今後もPenは、明日を切り拓く力をもったクリエイターたちを応援し続けていきます。
●「Pen クリエイター・アワード2018」を受賞した6組については、Pen 2018年12月15日号 No.465「クリエイター・アワード 2018」号で特集しています。