よりカジュアルに多様化する現代のビジネススタイルですが、大人のベーシックはやはりオールレザーのブリーフケースで決まりです。しかもビジネスシーンはもちろん、オフタイムでも使えてさりげない特別感と個性を発揮できる、そんな費用対効果抜群の名作6点を厳選して紹介します。

使用するシーンやオケージョンに合わせて取り揃えておきたいバッグですが、汎用性が高くオールマイティに活躍してくれる逸品があれば理想的。そのぶん、購入資金を集中投下することもできるからです。さらに現代の働き方、ビジネススタイルやフォーマル度は実にさまざま。そこでお薦めしたいのが、ラグジュアリーメゾンやラゲージ専業ブランドが手がける、品格と個性を兼ね備えた革製のブリーフケースです。いずれも装いの主役になる、才色兼備のマスターピース。多彩なスタイルにフィットし、デイリーに使いまわせること間違いなしです。
1.ベルルッティ――絶妙な進化を遂げた、定番モデルの最新作。
2.ロエベ――硬軟自在に使える、知性が薫るコンパクトモデル
3.ダンヒル――シルバーメタリックという、紳士の新たな選択。
4.ヴァレクストラ――現代性も備えた、オフホワイトカラーの気品。
5.グローブ・トロッター――気高く凛々しい、英国紳士の王道スタイル
6.シャンボール セリエ――出自を物語る、カービーなトップライン
ベルルッティ――絶妙な進化を遂げた、定番モデルの最新作。

1895年、イタリアの靴職人アレッサンドロ・ベルルッティにより、パリで創業したビスポークシューメーカーの「ベルルッティ」。現在では靴にとどまらず、ラゲージやレディ・トゥ・ウエア(既製服)、ホームコレクションまでクリエイションの幅を広げ、ライフスタイル全般のフルオーダーメイドが可能な、世界唯一のメゾンとして知られています。
その象徴はなんといっても、門外不出の“ヴェネチアレザー”、色鮮やかな“パティーヌ”、そして“スクリット”と呼ばれるモチーフでしょう。ヴェネチアレザーは厳選された最高級の原皮のみを使用し、独自の鞣し加工によって透明感のある艶としなやかさを表現したもの。パティーヌは「黒か茶のみ」という革靴の縛りから現代紳士を解き放った、独特のグラデーションと艶をもたらす染色技法です。さらにスクリットは、18世紀の古文書から着想を得たカリグラフィーモチーフ。すべては女性らしい柔軟さとアーティスティックな感性、大胆なチャレンジ精神を併せもった4代目当主、マダム・オルガが生み出した偉大なレガシーといえます。
この「アンジュール ミニ」は、2007年に初登場した「アンジュール」をコンパクトにサイズダウンした定番モデルの最新作。必要十分な収納力と取り回しのよさを備え、圧倒的な品格と存在感で、装いを格上げしてくれます。そんな名作をさりげないスパイスでさらに進化させたのが、新クリエイティブ・ディレクターに就任したばかりのクリス・ヴァン・アッシュ。これまで正対で刻印されていたスクリットを斜めにすることでグラフィカルに。そしてほどよいコントラストを生むアイボリーカラーを配し、あくまで上品にスクリットの存在感を主張しています。小ぶりで実用的なのに、ひと際エレガントで芸術的。そんなブリーフケースは、この「アンジュール ミニ」をおいて他にないでしょう。

ロエベ――硬軟自在に使える、知性が薫るコンパクトモデル

スペイン王室御用達ブランドとして名高い「ロエベ」が創設されたのは、1846年のマドリード。世界的な原皮の生産国として知られるスペインにおいて、最も優れたクオリティのものを優先的に使用することができる特権を活かしながら、伝統のクラフツマンシップとモダンな創造力を融合させたモノづくりで人気を博しています。
「ゴヤ シンプリー ブリーフケース」は、ダブルハンドルのジャストサイズなブリーフケース。麻袋のような表情豊かな文様が型押しされたカーフレザーは耐久性にも優れ、しなやかさと緊張感のある美しいラインを両立したデザインが秀逸です。その見た目を裏切る収納力を誇る内部には、ファスナー式のポケットやスリットポケットなど多彩なコンパートメントを装備。ビジネス書類や毎日の必携品などをもち運び、必要な時にさっと取り出すことができる機能性も併せもっているのがポイントです。
特に惹かれたのが、熟したオリーブの実のような深みのあるグリーンの発色です。この鮮やかすぎず渋すぎない洗練されたグリーンは、ビジネスシーンならネイビーやグレー、そしてブラウンのスーツにも馴染む汎用性の高い色味。さらに合わせる靴はブラックでもブラウンでもOKです。もちろんカジュアルシーンでも、スマートで知的な印象を演出してくれるので、きっと重宝するはず。ちょっと小ぶりなこのサイズ感が、実に“いまっぽく”見える秘訣です。

ダンヒル――シルバーメタリックという、紳士の新たな選択。

馬具の製造卸売業をルーツとし、1893年にロンドンで創業した「ダンヒル」は、まさしく由緒正しき英国紳士のためのラグジュアリーブランド。加えて時代に先駆け“モータライゼーション”にフィットする製品展開で支持を得た、革新的なメンズブランドでもあります。当時は単なる移動手段ではなく、上流階級の遊び、進取の精神と権威の象徴であった自動車に、いち早く着目したというわけです。
そんなダンヒルの正当性と革新性を十二分に感じられる逸品が、この「デューク ダブル ドキュメントケース」。“公爵”を意味するシリーズ名が付けられていることからもわかる通り、堂々とした風格と余裕をもった収納力を誇る本格派です。しかも最大の特徴は、これまでにない鈍色のボディカラーでしょう。
上質なカーフレザーを使用しながら、シルバーカラーのコーティングを施したボディの迫力は圧巻のひと言。加えて長年使い込んだような風合いのアンティーク加工を施すことで、温もりやクラフト感、クラシカルな味わいが堪能できるようになりました。これこそ進歩的なジェントルマンにふさわしい、現代的なブリーフケース。伝統を受け継ぎ革新を求め続ける、ダンヒルらしい名作といえます。

ヴァレクストラ――現代性も備えた、オフホワイトカラーの気品。

創始者のジョヴァンニ・フォンタナは、伝統的な職人技とミラノスタイルのデザイン性を融合させたラゲージづくりを志し、のちにイタリアを代表するブランドへと成長する「ヴァレクストラ」を設立。1937年のことでした。「フォルムは機能に従い、機能はフォルムに従う」というブランド哲学に貫かれたクリエイションは、常にミニマルにしてグラフィカル。控えめでありながらも大胆で型にはまらないデザインと最高峰のクオリティによって、世界中の名士やセレブリティたちを魅了しています。
そんなヴァレクストラには、実に魅力的なブリーフケースがラインアップされています。「ダブルハンドル ブリーフケース」は、アクティブなビジネスパーソンにとって理想的なルックスと機能性を備える、軽くて薄いモデル。内部にはノートパソコンやタブレットを収納するのに適した保護パッド、A4サイズのファスナーポケット、ペンホルダーなどを配し、スマートな機動性を約束してくれます。
機能面で特筆すべきは、サイドの深くまで広がる開口部。フルオープンにすればほぼ死角がなくなり、内部に手を差し込んでゴソゴソ小物を探すような、エレガントとはいえない仕草を避けることができます。またこのブリーフケースを魅力的なものにしている要因は、“ペルガメーナ(羊皮紙)”と呼ばれるオフホワイトカラーが醸し出す優雅な品格でしょう。エレガンスを極める繊細なホワイトカラーですが、意外にもデニムスタイルなどカジュアルな装いとの相性も抜群。手に入れて損はない、使えるマスターピースなのです。

グローブ・トロッター――気高く凛々しい、英国紳士の王道スタイル

象が乗っても壊れない――。そんなセンセーショナルなプロモーションで当時の人々の度肝を抜いた英国のラゲージブランド、「グローブ・トロッター」が誕生したのは1897年。しかもトラベルケースの素材が紙(ヴァルカンファイバー)というのだから、その衝撃の大きさは想像に難くありません。さらに驚くべきはいま現在も、この堅牢かつ軽量な“19 世紀の最先端”素材を使用したトラベルケースが、当時と変わらぬデザインと製法で生産され高い人気を保ち続けているということ。いかに無駄のないタイムレスなデザインと、優れた機能性を併せもった製品であるかの証明といえるでしょう。
この「センテナリー ブリーフケース」は、ブランドの創設100 周年を記念し発表された定番コレクション「センテナリー」の象徴的なデザインを踏襲した、非常に優美なブリーフケースです。一見するとシンプルでクラシカルですが、グローブ・トロッターのヘリテージとアイデンティティを色濃く受け継ぐタイムレスなデザインが光ります。
当然のことながら、出張や旅行でセンテナリーのトラベルケースと合わせれば、完璧に調和したスタイルを演出。熟練した職人たちによるビスポークのようにていねいな仕事ぶりも、トランクケースと同様です。ノートパソコンや書類など、現代のビジネスパーソンの必需品をすっきりともち運ぶことができる普遍的なブリーフケースでありながら、定番コレクションの系譜に連なるデザインとクオリティ。老舗ラゲージ専業ブランドの懐の深さを感じさせる名作です。

シャンボール セリエ――出自を物語る、カービーなトップライン

現在、高い技術力と完成度で人気を得ているブランドの多くが、長年OEM生産を手がけていたファクトリーの自社ブランドであるというのは、比較的よく知られている事実。この「シャンボール セリエ」も、そんなブランドのひとつです。一流メゾンの革製品を60年にわたって手がけ、2004年に満を持して自社ブランドを設立。以来、地元であるフランス・ロアール地方を象徴する馬具をモチーフに取り入れながら、優雅で気品漂うラゲージコレクションを展開しています。
この「リルブリーフ」は15年に定番を中心としたラインアップに加わり、瞬く間に大人気となったマスターピース。フェミニンにならない絶妙な長さに設定したハンドルにより、従来のかっちりとしたブリーフケースとは一線を画すほどよいカジュアル感を演出できます。まさにビジネスシーンからオフタイムまで、幅広い使用シーンに対応する汎用性が魅力です。
さらに波打つようにカーブしたトップラインも目を引きます。ミニマルなデザイン性はそのままに、馬具を彷彿とさせる有機的な曲線を強調。しかも控えめに個性を主張するこの曲線は、開口部のファスナーの開け閉めをスムーズにするという機能的なメリットも兼ねています。また底鋲付きなので、気兼ねなく床置きも可能。置いた状態でも美しい、希有なブリーフケースといえそうです。
