パリ発の紙まわりのプロダクトブランド「パピエ ティグル」が、下町情緒漂う日本橋浜町に2号店をオープンしたのは2017年秋のこと。パリよりもお洒落と評判のお店を訪ねてみました。

古くからの街並みに新しいスポットが点在し、魅力的なエリアへと育っているイースト東京。なかでも、隅田川のほとり、人形町や水天宮からもほど近い日本橋浜町は、粋な江戸文化が息づくなかに、オフィスや住宅、新感覚のショップが融合し、若い世代の人口も増えている注目の町です。そこに、パリの人気ステーショナリーブランド「PAPIER TIGRE(パピエ ティグル)」の2号店ができました。
1961年に建てられた築50年以上の建物をリノベーションし、パリらしいポップで洒脱な世界観が展開されています。古さと新しさ、西洋と東洋がミックスした温故知新の紙ものの世界を見てみましょう。
デジタル時代ならではの、温もりとユーモアに満ちた紙ものブランド


「パピエ ティグル」は2012年、パリをベースにするデザイナーのジュリアンとアガット、マーケティング&広報担当のマキシムの3人により設立されました。3人は同じデザイン事務所で働いていた同僚であり、グラフィックと印刷に関するエキスパート。大の日本好きでもある彼らは、日本の文房具の膨大な種類や品質の高さに魅了されていました。ある時ふと、自分たちの身の回りには使いたい文房具がないことに気がつき、パリ発の紙ものブランドを設立したと言います。グラフィカルで、大人のための遊び心ある文房具はこれまでにないプロダクトとして、鮮烈な印象を残し、瞬く間に世界中で注目されました。



パピエ ティグルの特徴は、ファッションブランドのように年2回シーズンごとに異なるコレクションを発表していること。2018年はメキシコのマヤ文明をモチーフにしたコレクションでした。限定デザインのため、完売しても同じものはつくらず、定番はないそう。その場で買わないとなくなってしまうかもしれない、ちょっと特別感のある、持つことがうれしくなるようなプロダクト。文房具が日用品として、いつでも同じものが手に入ることが求められた時代とは違う、現代的なスタンスに感じます。一方で、少しざらっとした手触りのある再生紙を使用し、デジタル化によるペーパーレスが進む時代に、書くこと、手を動かすことへのこだわりを見せます。
「デザイナーのジュリアン自身もデザインを考える時はノートに手描きでスケッチをします。旅先でインスピレーションを得ることも多く、目で見たもの、感じたことというリアリティを大事にしています。かと言って、まったくのアナログ志向なわけではなく、SNSを駆使して情報発信をするなど、スマートに使い分けていますね」と店長の中山千明さんは言います。


実際のプロダクトを見てみましょう。
一番人気はブランドの顔とも言えるノート。色鮮やかで力強いグラフィックパターンの数々は持っているだけで心躍るアイテム。ところどころに遊び心あふれるページが隠されているのも楽しい。また、いつからでも始められる卓上カレンダーは、メモを書き込めるスペースも大きく、デスクの上に置いて、1週間の予定を管理するのにぴったりです。「クオバディス」とコラボレーションした手帳は2019年版も新しいデザインが発表されるとのことで、シンプルな手帳に飽きた方はぜひ検討してみては。
紙もの以外にもバイカラーの配色が絶妙なボールペンやペンケースなど、センスある文房具やアクセサリー類も揃っています。持つことでちょっとハッピーになる、そんなアイテムが豊富です。
ハイセンスとゆるやかさが共存するイースト東京の、新たな顔となる店。






「パピエ ティグル」では、インテリア・デコレーションにもなるペーパーアイテムを提案しています。レトロなフォントが洒落たアルファベットのカードは組みひもに通して、ガーランドのように使えます。名前や“HAPPY BIRTHDAY”などのメッセージを作れば、ウェディングや誕生日パーティの飾り付けにもぴったり。
また、ブランドのアイコンとなっている虎は、お店にメールを送ると、データが送られ、DIYでお面がつくれるようになっています。可愛いけれど子供っぽくなく、どこかクールで男性にも似合う、ロゴマークをぜひつくってみてください。ちなみに「パピエ ティグル」は直訳すると「紙の虎」ですが、いわゆる「張り子の虎」の意味ではなく、弱い紙でもクリエイティブな力によって強くなれるという意味が込められているそう。




店内には日本茶のティーサロン「サロン・ド・テ・パピエ ティグル」も併設されていて、本格的な日本茶をいただけます。フランスブランドに日本茶という組み合わせがまたクール。目の前の茶釜で湯を沸かし、煎茶を3煎まで淹れていただけます。3煎目は炒り玄米を足して、玄米茶として楽しめます。お茶に合わせた和菓子は地元・人形町の老舗「玉英堂」のどら焼きやお団子。虎のマークを焼印した最中はオリジナル。スイーツや軽食、お酒も用意しています。
「カフェがあることで地元の人がふらりと訪れてくれます。本店のある北マレもパリの東側で、のんびりとしてクリエイティブな雰囲気が似ていると創業者の3人も喜んでいるようです」と中山さん。パリと東京の下町が入り交じり、とびきりハイセンスだけれど、どこか緩やかな空気が流れる。そんな空気感を味わいに、日本橋浜町界隈をぜひ散策してみてください。
31回と続いてきたこの連載も今回で最後となります。必要なものはあるけれど、心動かされる「ONE MORE THING」を生活に取り入れたい。そんな気分に合うアイテムを紹介してきました。気がつけば、センスあるライフスタイルショップが街のあちこちにでき、生活の中でそうしたアイテムと出合うことも増えたのではないでしょうか。多くのものはいらない。自分が満たされるものが見つかりますように。
PAPIER TIGRE
住所:東京都中央区日本橋浜町3-10-4
TEL:03-6875-0431
営業時間:11時〜20時(10月〜4月は11時〜19時)
定休日:月、火(定休日が祝日の場合は営業)