焙煎とブレンドに注力する気鋭のロースター「トリバコーヒー」のオーダーメイドサービスを活用した、ファッションブランド「フィルメランジェ」のオリジナルブレンドをクローズアップしました。
一杯のコーヒーとともに朝を迎え、日中は喉に流し込んでリフレッシュし、家路につきリラックスして味わう。上質なコーヒーはいまや、毎日袖を通す日常着と同じように暮らしを豊かにする必需品です。
Tシャツやパーカなど快適なデイリーウエアを展開するファッションブランド「フィルメランジェ」と、東京・銀座で豆の焙煎とブレンドに力を注ぐ気鋭のロースター「トリバコーヒー」とが出合ったのは、時代の必然といえるでしょう。
フィルメランジェ・ディレクターの尾崎雄飛さんが今回チャレンジしたのは、ブランドの世界観とリンクするオリジナルのブレンドづくり。トリバコーヒーが行っているオーダーメイドサービスを活用した新商品の開発です。このオーダーメイドは広く一般向けにも行われており、誰でも申し込むことができます。
コーヒー好きの尾崎さんとトリバコーヒーとのセッションを通して、自分だけのブレンドづくりの醍醐味を思い描いてみてください。
完成したのは、3種類の焙煎ブレンド
まずはさっそく、完成したコーヒーを見ていきましょう。トリバコーヒーとのセッションから生まれたブレンドは、一日のシチュエーションで飲み分けることを想定した全3種類。朝用の「味爽時(あさあけどき)」、昼用の「八つ時(やつどき)」、夜用の「黄昏時(たそがれどき)」です。尾崎さんが、それぞれの味とコンセプトを解説します。
「店を訪れるお客さんの、そのときどきや嗜好性にフィットするコーヒーです。朝をイメージした『味爽時』は、苦味や酸味が前に出る味わい。寝起きの目を覚ます役割をもたせています」。「『八つ時』は、3時のおやつのシーン向け。コクも苦味もすべてがフラットで、スイーツを口にした後に飲むと、食べた味によってコーヒーの味も変化する不思議なブレンドです」。「『黄昏時』は、夕食後の口をすっきりとさせる、苦味とコクの強さが特長。酸味が少ないのでフルーツなどのデザートとも相性良しです」
東京・千駄ヶ谷のショップ「ハウス・フィルメランジェ」では以前から、お客さんにほうじ茶やコーヒーをサービスしていました。今回オリジナルブレンドをつくることになったのは、トリバコーヒーの新サービスがきっかけでした。
「店で販売するにふさわしいコーヒーを探していたタイミングで、トリバコーヒーさんがオーダーメイドを始めることを知りました」と尾崎さん。「彼らはコーヒーを使って、シチュエーションや気分を表現する人たち。豆のウンチクをあまり語ろうとしません。フィルメランジェも素材など語れる要素がたくさんありますが、ウンチクに共感されるより、『着心地がいいから』と思って購入していただくほうが嬉しい。トリバコーヒーさんとの共通点はお互いのそんな姿勢にあると思っています」
フィルメランジェの、朝・昼・夜。
カットソー素材を軸にしたブランドとして、2007年に尾崎さんらの企画チームが立ち上げたフィルメランジェ。
オーガニックコットンをはじめとする高品質な素材を用いて日本製を打ち出したコレクションは、瞬く間に評判を呼びました。こだわりの日常着、ルームウエアのブームの先駆けとなったブランドといえるでしょう。旗艦店、ハウス・フィルメランジェのオープンは2011年で、品揃えはオリジナルアイテムが中心です。根強いファンが多いパーカやスウェットパンツに加えて、この店らしい人気の品がアンダーウエア。
尾崎さんにちょっとウンチクを披露していただきましょう。「朝・昼・夜の一日の中で、朝に身につけるアイテム。化繊は混ぜていません。ウエストにはゴムを入れていますが、肌に触れる部分はコットンが当たるようにしていて、優しい着心地です。通常の下着は頑丈にするため縫製糸に化繊糸を用いますが、これはコットンを使用して肌触りの良さを重視しています」
外出するときも、寝るときでも一緒に過ごせるのがフィルメランジェです。スウェットパンツひとつでもシルエットや生地の風合いにバリエーションがあり、着こなしやシチュエーションに応じた一本を探すことができます。「服は、自由に組み合わせて着ていただければと思います。新商品のコーヒーも、飲む時間帯をイメージしてはいますが、実際にはお好きな味をお好きなときに飲んでいただけるようにつくりました」。店ではコーディネートのアクセントとして、「エンダースキーマー」のシューズ、「デサント」のアウトドアウエア、「kiruna(キルナ)」の別注バックパックなども扱われています。
トリバーコーヒーとのセッション
オリジナルブレンドづくりは、着地点を探るセッションからスタート。トリバコーヒーを設立した鳥羽伸博さんと尾崎さんは旧知の間柄ですが、先入観をなくすためか、鳥羽さんらのチームは一般の人がオーダーするときと同様に、一からブランドのコンセプトやスタイルを尋ねました。
鳥羽「フィルメランジェはどのような生活をイメージしていますか?」
尾崎「シンプルな気持ちになれる服を着る生活です。気取らず自分らしく」
鳥羽「コーヒーに、“意外性” に対する期待感はありますか?」
尾崎「リラックスしつつ、少し自己主張もあるのがフィルメランジェだと思います。コーヒーにも、服の着心地の良さを初めて知ったときの驚きに通じるものがあれば」
鳥羽「好きな食べものの傾向はどのようなものでしょうか?」
尾崎「焼き魚でしょうか(笑)。和の要素を取り入れた服ですから。でも仕立てはアメリカンですし、和を強調するブランドではありませんね」
長く続いたお二人のセッションから見えてきたのは、飲む人のイメージ、飲まれるシチュエーション、コーヒーの存在意義などを探るトリバコーヒー独自のやり方。豆の種類、焙煎方法、味、香りより前に、何を目的としてオーダーするのかが大切にされているのです。ディテール偏重になってきた昨今のコーヒーの世界を、素直に「おいしい」と言えるものに取り戻そうとしているかのようです。
セッション終了間際に、鳥羽さんがこう切り出しました。「私たちは、コーヒーに情が移りすぎるのを避けるため、豆の産地や農園を打ち出していません。でもフィルメランジェの場合は、何らかのストーリー性のあるコーヒーがいいかもしれませんね。店に来るお客さんが納得するのは、そういう品かもしれない。焙煎は『フィルメランジェらしい繊細な味』、をイメージするのはどうでしょう」。こうしたセッションを経て完成したのが、朝・昼・夜で区別された3種類のブレンド豆です。
トリバコーヒーでオーダーするには。
豆販売の専門店「トリバコーヒー ブティックコーヒーロースター」を、銀座7丁目に構えるトリバコーヒー。2014年にオープンしたばかりながらクリエイティブな感性で彩られています。
ショップの2階には3台の焙煎機があり、焙煎された新鮮な豆が随時店に運ばれています。コーヒーのことを知り尽くした鳥羽伸博さんが、独自の考え方を提案すべく立ち上げたのがこの店です。店頭で販売するコーヒー豆は、自家農園から届くハワイコナと、5種類のブレンドのみ。「私たちのブレンドは、生豆の段階でブレンドするプレミックスが基本。すべての豆をなじませるイメージで焙煎します。一釜失敗したら全部無駄になりますが、そのポリシーを変えることはしません。ブレンド豆によって伝えたい味があるんです」
どなたでもオーダーメイドのブレンドをつくることができます。プロセスは以下の通り。
店頭で申し込み → メール案内を受けて日時を決定 → 初回訪問で約90分間、コーヒーを試飲しながらカウンセリング → 次回訪問で約60分間、コース(下記参照)やパッケージデザインなどを選定 → オリジナルブレンド完成。
完成までの期間や訪問回数は随時、専任スタッフにお尋ねください。気になる料金は税抜きで、1K(キログラム)コース(100gあたり¥3,000相当)¥30,000、3Kコース(同 ¥2,333相当)¥70,000、5Kコース(同 ¥2,200相当) ¥110,000、10Kコース(同 ¥2,000相当)¥200,000。相応に値が張りますが、たとえば結婚式の引出物にしたり、数名のグループで共同制作するのもいいでしょう。500gの業務用袋の使用や再注文での、特別割引もあります。コーヒーのプロによって表現された、自分の個性漂うオリジナルブレンドを味わえる貴重な機会を、どうぞさまざまなアイデアで活用してみてください。(高橋一史)
ハウス・フィルメランジェ
東京都渋谷区神宮前2-6-6
営業時間:12時~20時(土日祝は11時から)
不定休
TEL:03-6447-1107
http://www.filmelange.com
トリバコーヒー ブティックコーヒーロースター
東京都中央区銀座7-8-13 Brown Place 1F
営業時間:11時~21時(土日祝は19時まで)
不定休
TEL:03-6274-6611
http://www.toriba-coffee.com