秘境の地で巡り合う、ラムと和の匠たち。

  • 写真:森山将人(mili)
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最高峰のプレミアムラムとして、世界中で高い評価を得ている「ロン サカパ」。誕生の地である中米のグアテマラに足を踏み入れ、その味わいの魅力に迫りました。

琥珀のやわらかい色がグラスの中で揺れ、見た目にコニャックのような優雅さをもつプレミアムラム「ロンサカパ」。海抜2300mの、雲よりも高い場所で長期熟成により生まれるその味わいは、奥深く、神秘的な魅力を飲む者に与えます。

そんなラムに感銘を受けたひとりが、今回取材に同行いただいた名古屋を拠点に活躍する日本料理人、大谷重治さん。彼は「日本の料理」をテーマに、世界各地に足を運び、現地の食材や料理人とセッションを行う、型にとらわれない日本料理人でもあります。大谷さんとともに、この秘境の地を巡るところから始まります。

至高のラムを生みだす、大地の恩恵を受けた土地。

グアテマラは数多くの古代マヤ王朝の遺跡を残す、世界有数の国。
高地に位置するアンティグアの国土は、森林に恵まれているのと同時に、豊かな火山灰土壌が特徴となっている。

中米に位置するグアテマラは、古代マヤ王朝が栄えた都市でもあります。その魅惑の土地で生まれたラム「ロン サカパ」の味わいの秘密をひも解きましょう。
そもそもこの「ロン サカパ」がつくられるグアテマラは、中央アメリカ北部に位置し、北にメキシコ、南は太平洋に面した共和国です。バンコクやマニラとほぼ同じ北緯14・5度で、中央部は火山が点在する高原地域。海沿いを除けば年平均気温19度で湿度が低く、とても快適な気候となっています。ところで、この「ロン サカパ」というユニークな名前。実はグアテマラ東部のサカパという街名にちなんだもの。サカパ市創立100周年に当たる1976年、記念すべき出来事を祝うために、特別なラムがつくられました。現地で、長きにわたり積み重ねられた専門的な知識と技術を結集し、プレミアムラム「ロン サカパ」は誕生したのです。

「古いグアテマラ」と意味する古都アンティグアは、山々に囲まれた美しい街。
コロニアル建築が美しいグアテマラ第三の都市、アンティグアの街並み。
今回の取材に同行いただいた日本料理人の大谷重治さん。アンティグア中央市場にて、地元のマーケットを視察。
アンティグアの中央市場は、毎日豊富に食材を揃えている。

複雑な味わいと神秘的な琥珀色の「ロン サカパ」。実はその生産地の背景に、古代マヤ文明が深く関わっていることを知れば自ずと合点がいくでしょう。グアテマラの芸術や文化、そして言語にいたるまで、人々の暮らしにはいまもなおマヤ文明の影響が色濃く残っています。たとえば、「ロン サカパ23」のボトルに使われている〝ぺタテ〞と呼ばれる装飾。実は、古代マヤ王朝における「時」と「空間」、「大地」と「空」の融合の象徴として、古代から脈々と受け継がれてきたものです。その技法は、いまも現地の女性たちの手によって継承され、暮らしを支える生活の糧となっています。

グアテマラ南東部に当たるレタルウレウに広がるサトウキビ畑。毎年11月半ばから本格的な収穫がスタートし、「ロン サカパ」では厳選した原料のみを使用している。
サトウキビ畑で、収穫の作業に従事する男性スタッフ。
“ぺタテ”は乾燥させたヤシの葉を使い、このように一点ずつ手織りでていねいに製作されている。

古代マヤ文明の遺跡が最も多く残るグアテマラは、肥沃な火山性の土壌に恵まれた、景観の美しい土地。「ロンサカパ」の生産は、その南東部に当たるレタルウレウから始まります。肥沃な土壌と熱帯の太陽は、ラムの原料となるサトウキビ栽培において理想的な気候を与えます。11月半ばから1月半ばが収穫時期に当たりますが、甘くフレッシュなサトウキビにこだわり、最初に収穫したものだけを厳選し使用する点に、プレミアムラムの所以が垣間見られるのです。同行した大谷さんも、「これだけ原料を選び抜いているのは本当にすごい。素材の善し悪しが決め手になるのは料理も同じ」と語っていました。恵まれた環境で育つ、質のよいサトウキビ畑は、海沿いの平地一面に広がります。グアテマラに暮らす人々にとってサトウキビは、国を支える主要な農産物であると同時に、神からの恩恵でもあるのです。

異国情緒あふれる街並みに、自然と寄り添う「ロン サカパ23」

雲の上の熟成庫で生まれる、唯一無二の奥深き味わい。

“雲の上の家”と呼ばれる「ロン サカパ」の熟成庫工場のエントランス。グアテマラからヘリコプターで30分ほど移動した、海抜2,300mの高地のケツァルテナンゴという涼しい気候の土地に拠点を構える。
「ロン サカパ」熟成庫工場のエントランスに飾られている、スペシャルエディション版のボトル。日本では発売されていない希少な「ロン サカパ」がディスプレイされている。見慣れない歴代のボトルデザインがズラリ。

「私たちは品質にこだわり、〝バージンシュガ―ケイン〞と呼ばれる一番搾りのサトウキビジュースだけを使っています」と語るのは、今年キャリア30年を迎えた、女性マスターブレンダーのアンナ・ロレーナ・ヴァスケスさん。通常は、砂糖を製造する際の副産物である廃糖蜜(モラセス)のみを使用しますが、「ロン サカパ」は異なります。自社農園で収穫したサトウキビを、工場へ運び小さく粉砕。その後、圧力をかけて汁へと変化させるのですが、全体のうちわずか14%しか取れない汁のみを使用しているのです。砂糖の精製は3回に分けて行いますが、原材料への徹底したこだわりが味の違いを生むとロレーナさんは話します。そして、蒸留と熟成の「ロンサカパ」独自の工程を経て、その違いは決定的なものとなります。

ラムの世界では3人しかいない女性マスターブレンダーの一人、アンナ・ロレーナ・ヴァスケスさん。ラムの専門知識以外に、化学の学士号取得や食品技術、経営学を学んだ経歴をもつ。
ロレーナさんと熟成施設で原酒のテイスティングを行う大谷さん。1日約500樽の原酒が詰められる。「フルーツやバナナの匂いがします。きっと熟成させるとキャラメルのような香りが強くなるんでしょうね」と大谷さん。
熟成庫施設内では、1日120~150前後の、樽焼きが行われている。

「バージンシュガーに、水とパイナップルから取った独自の酵母を入れて、5日間以上かけて発酵。これはよい香りと味を生むために行います。そして、蒸留では不必要な成分を取り除くのです。タンクの中には原液、下からは蒸気を出します」とロレーナさん。こうして蒸留を終えると、ラムはケツァルテナンゴにある熟成庫へと運ばれます。サトウキビの栽培から蒸留にかけては海沿いの熱帯気候で行いますが、一方、熟成は海抜2300mの気温の低い高地が基本。ここにあの優雅な味わいの秘訣が隠されているとロレーナさん。
「酸素が薄く、気温が低い土地で熟成することで、樽がもつ色と味、そして香りをラムが受け継ぎます。これは、シェリー酒の熟成方法〝ソレラ・システム〞がベースです。それにロン サカパ独自の方法を加えています。私たちのソレラ・システムは、さまざまな年数、性格の違うラムをブレンドします。そして異なる性格の樽を使い、古いラムを混ぜて、複雑でいて優しい味わいとなるのです」

蒸留を済ませ、樽で3年間ほど寝かせたラム。
「ロン サカパ」熟成施設でディスプレイされている「雲の上の家」と書かれた看板。

「ロン サカパ」の味わいの最大の決め手は、このユニークな熟成システムにあると、ロレーナさんは語ってくれました。蒸留したラムを、アメリカンホワイトオークの樽で3年間熟成し、古いラムとミックス。ここから、内側を焦がした樽、オロロソシェリー樽、ペドロヒメネス樽という順に樽を入れ替えながら熟成させるのです。驚くべきは、その過程の合間に、年代の異なる古いラムを幾度もミックスしている点。こうして最低6年間熟成させたのが「ロンサカパ23」、フレンチオークの樽でより寝かせたものが「ロン サカパXO」として出荷されます。そのため前者は、華やかな立ち上がりの香りが特徴となっていて、後者はフルーツ、甘味、スパイスの余韻が楽しめる味となっています。大谷さんが「まるで人を育てるようですね」と語ると、ロレーナさんはこう微笑みました。「そうね、ラムは私の子どもみたいなものよ」と。

和とラテンの調和で奏でる、〝おもてなし〞の料理を披露。

型に捉われない日本料理人、大谷重治。2005年には「愛・地球博」の前夜祭およびエンディングセレモニーの料理を担当。
現地の野菜を見事な手さばきで桂むきする大谷さん。

今回の取材に同行いただいたのは、名古屋を拠点にしながら世界各地で日本料理の腕を振るう大谷重治さん。マスターブレンダーのロレーナさんとは、「以前、僕のお店に来てくれたことがあるんです」と語っているように、その時以来の再会に喜びを隠せない様子。彼も取材班とともに、「ロン サカパ」の熟成庫施設やグアテマラ市内を視察しながら、「ロレーナさんに僕の料理をぜひ食べてほしい」と話していました。そこで実現したのが、現地でも指折りの料理人として知られるホテル「カサ・サント・ドミンゴ」のレストランシェフ、マリオ・デルカルネさんとの料理セッション。和とラテンという違いはありますが、国境を越えたマジカルなコラボレーションが実現したのです。

長期熟成させた和牛を初めて手にするマリオシェフと和牛の魅力を語る大谷さん。
「和牛ヒレ肉のステーキ」を一枚ずつにていねいに盛り付けるマリオシェフ。

「カサ・サント・ドミンゴ」のレストラン内で初対面となる大谷さんとマリオシェフ。
それぞれ「ロン サカパ」を料理のスパイスに使いながら、オリジナルの料理を披露してくれました。

この日、大谷さんが持参したのは、静岡県沼津市産の「牛山精肉店」のヒレ肉です。実は半年間かけて大谷さんが長期熟成を施したもの。「マリオシェフには、熟成肉を見て、彼が感じたように料理をしてほしい」といっていました。
一方のマリオシェフは、大谷さんの印象を「こんな異国の地に来てまで、料理をみんなにふるまうなんてすごい。エネルギッシュで創造性にあふれた料理人だ」と認めています。
大谷さんから熟成肉を手渡されると、「和牛を見るのは初めて。とてもやわらかな肉だね」とマリオシェフ。大谷さんは、市場で調達した現地のパクチーなどの野菜について「こちらの野菜は、匂いが個性的で強い気がします。料理するのが楽しみ」と笑顔を見せました。

「サーモンのキャッサ蒸し」のソースをつくる場面。干しシイタケのだしに「ロン サカパXO」をぜいたくにブレンド。
キャッサバ”と呼ばれる現地で調達した芋とニンジン、リンゴを練り合わせ、サーモンを敷いた「サーモンのキャッサ蒸し」。それぞれを同時にオーブンで蒸し、現地で手に入れたパクチー、豆味噌、ワサビをトッピング。
マリオシェフが手がけたのは、六か月間長期熟成をさせた和牛のヒレステーキ。そこに大谷さんが持参した国産のシイタケ煮、ブロッコリー、赤カブの芽、空豆のクエスト、ポレンタを添えた。焼き加減はミディアムレア。

大谷さんとマリオシェフによる料理がロレーナさんに振る舞われました。
「お肉も魚もとてもラムとあっています。お肉と一緒にロン サカパを飲むとよりお肉のジューシーな味にフィットする気がします。またサーモンは、パクチーやワサビを薬味に使っていますが、XOと合わせると香草とラムの余韻が残ります。」とロレーナさん。
もちろん料理は、和とラテンというそれぞれのジャンルは違いますが、それぞれの国の食材をお互い交換する形で上の写真で紹介したように調理されました。そして、いずれもマジカルなエッセンスを加える火付け役として使われたのは、「ロン サカパ」でした。

「ロン サカパXOは、コラージュのように複雑な味わいです。そして余韻を楽しめるラムだと思うんです。今回はそれをサーモンのソースに絡めてみることで、余韻を楽しめる料理にしました」と大谷さん。
一方、マリオシェフは「ロン サカパ23をフライパンにミストで吹きかけています。こうすることで、肉の味に厚みが出るんだ」と話します。それぞれの特徴を活かしながら、これまでにない、枠にとらわれないメニューが完成し、マスターブレンダーのロレーナさんへと料理はもてなされました。ロレーナさんに料理の感想を聞くと、最後にこう話してくれました。

「大谷さんの料理を食べて、料理人としての情熱を感じました。ラムづくりも一番大事なのは情熱です。これがなくては前には進みません。今回の素敵な再会に感謝しています」(Pen編集部)

「ロン サカパ23」をよりカジュアルに楽しむなら、こんなビタースイートなドリンクスタイルがお薦め。トニックでアップしたら、オレンジスライスを2、3枚入れるだけのお手軽なカクテル。是非とも自宅で試してほしい。
左:ラムとは思えないほど贅沢な味わいと香りが広がる。バーボンやシェリー、上質なペドロヒメネスの樽を使ったソレラ・システムで6~23年間熟成させた、まさに極上品。ロン サカパ 23¥5,832 右:甘味、フルーツ、スパイスの複雑かつ完璧なバランスを誇るラム。8~25年間熟成したラムをブレンドし、コニャックの樽で最後に熟成を加え、芸術的な味わいに。ロン サカパ XO¥15,120

●問い合わせ先/MHD モエ ヘネシー ディアジオ  TEL 03‐5217‐9735

フェイスブックで「ロン サカパ」の最新情報を。

今回取材に同行頂いた日本料理人の大谷重治さんによる寄稿や、ロン サカパに関する最新情報をwww.facebook.com/RonZacapa.jpにて紹介しています。ラムの新しいカクテルスタイルや、誌面では紹介しきれなかった「ロン サカパ」の魅力を伝える情報は「ロン サカパ」と検索し、要チェック。