永く愛される、ミサワホームの住宅デザイン

  • 写真:尾鷲陽介
  • 文:高野智宏
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グッドデザイン賞を25年連続で受賞するなど、ハウスメーカー随一のデザイン力を誇るミサワホーム。 その思想と未来像など、“デザインのミサワホーム”の核心に、「Pen」の安藤貴之編集長が迫りました。

住宅におけるデザインの本質とは。

大きな開口部が設けられた明るいダイニングキッチン。陽光の取り込みや屋内からの眺めを考慮したことはもちろん、地域社会とのつながりを育む、コミュニケーション的な機能をも有している。
私はデザインを「アイデアや方向性を指し示すもの」、つまり、飾り立て加えるのではなく、ものの本質を突き詰める行為だと思っています。となれば、住宅におけるデザインとは、住まう人が心地よく快適に暮らせる場所の創造であると考えていますが、白浜さんはどうお考えですか。
まさにその通りです。デザイン=意匠や造形ではない。デザインとは設計そのものであり、意匠と機能の双方をバランスよく形にし、「快適」という方向に向かって示していく行為だと思います。
デザインといってもさまざまで、たとえばファッションは春夏と秋冬の年2回の発表機会があり、極端にいえば半年間飽きられないデザインであればいい。対して住宅は人が生活する基盤となる場所で、その寿命はきわめて長い。白浜さんもそうした未来を見据えてデザインをされているのですか。
もちろんです。ただ、未来に目を向けすぎると、現在の生活に馴染まないことも多い。建築には数百年単位で愛されるものがあり、私たちに多くの発想や教訓を与えてくれます。そんな過去の伝統、現代の技術、そして未来の要素を、「過去5:現在3:未来2」程度の割合で融合していくイメージですね。
左、住宅デザインは「家族が心地よく暮らすための方向性を示すもの」と、白浜さん。右、吹き抜けのリビングに設置された格子は、冷温水のふく射で室内温度を調整するクリーンな冷暖房システム。
<font size="1">RIGHT PHOTOⓒMISAWA HOMES CO., LTD.</font>
自然とのシームレスな関係性を実現する、環境配慮型住宅の「Eco Flagship Model」。象徴的な軒下は日本家屋の縁側をモダンに再現した、屋内の安心感と屋外の心地よさが共存する空間だ。
今回訪れた住まいのテーマパーク「ミサワパーク東京」(高井戸、上写真)には、築20年を経ていまなおモダンな雰囲気の「THE CENTURY」や、環境配慮型住宅の「Eco Flagship Model」など、多彩なモデルが展示されていますが、それらのコンセプトや方向性はどうやってつくられるのですか。
まず、時代に即したコンセプトワークを行い、それに応じたデザインや機能を付加していきます。その核となるのが、暮らす人、家族のストーリーです。「Eco Flagship Model」で想定したのは、環境配慮や健康意識の高い家族。たとえば、朝は早起きしてジョギングなどの運動を欠かさず、食べる野菜は有機栽培もの、自宅でも家庭菜園を実践しているなど、詳細な家族像をつくり込んでいくのです。
なるほど、まずは住まう家族ありき。住宅デザインは家族のためにあるものであると。
そうです。冒頭でおっしゃった、住む人が快適に暮らせて、心身ともに元気となってもらえることが第一です。住宅という「モノ」ではなく、快適な暮らしという「コト」が住宅デザインの本質だと考えています。

ゆるぎない「シンプル・イズ・ベスト」の基本理念。

御社が“デザインのミサワホーム”と称される背景には、グッドデザイン賞を1990年から25年連続して受賞しているという、群を抜く受賞歴が挙げられると思います。そもそも御社には、デザインを重視する文化や社風、あるいはデザイナーが社の意向を牽引する風土などがあったのですか。
創業時からしてデザインに高い意識をもっており、そうした文化は全社員に受け継がれています。その結果として、25年連続、計128点がグッドデザインに選ばれたことはうれしい限りですね。
“デザインのミサワホーム”の根底には「シンプル・イズ・ベスト」というテーマがあると聞きます。四半世紀にわたりグッドデザインに選ばれたその背景には、時代が変わろうとも「シンプル・イズ・ベスト」の基本理念がすべてのモデルにしっかりと宿っているからなのではないでしょうか。
住宅デザインで最も重要なことは、いかに永く暮らしていただけるかということです。もちろん、時間の経過とともに住む人の好みや趣向、さらには住む人自体も変わっていきます。その時に間取りやしつらえが変えられるなど、融通の利く空間であったほうが都合がいい。となれば、基本となる空間はシンプルであるべきで、家族がそのときに必要な要素を「足し引き」できるほうがベター。弊社としては、各モデルでコンセプトは違えども、基本の器はシンプルで美しいものを提供しようと。そこをご評価いただいているのかもしれません。
1996年発売の「GENIUS 蔵のある家」からさまざまなモデルへと継承される、人気の「蔵」空間(右下)。その結果、吹き抜けのリビングやスキップフロアが生まれるなど、多彩な空間表現が可能に。
2階ベッドルームから吹き抜け1階のリビングダイニング、そして、正面の開放的なバスルームを望む。右手には寝室からバスルームへと伸びた、屋外との一体感を感じるスカイバルコニーが広がる。
96年には「GENIUS 蔵のある家」で、住宅メーカー初となるグッドデザイン賞のグランプリを受賞されました。その後、「蔵のある家」シリーズは累計6万棟以上を販売し、ミサワホームを代表するヒット商品に。本来は屋外にある蔵を、屋内空間として配置した発想はどうやって生まれたのですか。
当時の役員の言葉をきっかけに生まれました。役員は陶芸を趣味としていて、所有する多くの作品をしまう納屋的な空間が欲しいと。そこで試行錯誤を繰り返し、1階と2階の間に高さ1.4mまでの半階の空間を設け、風呂やトイレの上は収納スペースとし、リビングはそのまま吹き抜けにする構造に着地しました。やはり大きな収納はニーズがあり、また、グッドデザイン賞の後押しもあって、現在は「GENIUS」のみならず、他のモデルにも蔵を設けるなど多彩に展開しています。
しかも「蔵」は、デザインや機能のみならず、国から容積率の緩和(※)を受けた建築基準法においてもエポックメイキングなプランであり、構造であったと伺いました。
当時の建築基準法では、蔵のスペースを面積算入されると違法になってしまう。そこで、国に対し「天井高3.2mの開放的な空間をつくりたい。すべてを3.2mにはせず余った場所を収納とするが、そこは容積率の面積算入から外してほしい」と要望しました。実は当時、国が住宅空間を広く快適にしていこうという動きもあり、認定をいただくことができました。その後、このルールはオープン化され、他メーカーさんも共有できるようになりました。そういう意味では、有意義な提案だったかなと思いますね。

※自治体により、床面積として算入している場合もあります。また、居室としての使用はできません。

多彩なニーズに対応する自由なデザイン

広々とした「Eco Flagship Model」の玄関。外のアプローチからエントランスホール、そして廊下にかけての壁と床のタイルを統一している。
<font size="1">PHOTOⓒMISAWA HOMES CO., LTD.</font>
「Pen」恒例の「住宅特集」を長年手がけてきて感じたことですが、以前は注文住宅といえば建築家に“作品”をつくってもらうという感覚でした。しかし現在は、情報量の拡大や好みの多様化などの影響で、施主側が自分たちの趣向を反映した物件を建築家に依頼する形へとシフトしています。ある種、施主の“わがまま”を聞かなければならない現在、工業化住宅を手がけるハウスメーカーはより大変なのではありませんか。
確かに、施主様それぞれに趣向や希望があり、高度経済成長期のような画一的なロールモデルが当てはまる時代ではありません。ただ、施主様のなかにはデザインと機能、そして品質が担保され、また、価格も通常の戸建住宅と変わらない、ハウスメーカーを好む方も多いのです。また、弊社でもそうした施主様のニーズに対応できる仕組みがすでに出来上がっています。
シンプルなスクエア(四角)の集合により構成された「INTEGRITY(インテグリティ)」の外観。3つのコード(決めごと)のなかで、好みに合わせたデザインに仕上げることが可能な、新たなデザイナーズ住宅だ。
<font size="1">PHOTOⓒMISAWA HOMES CO., LTD.</font>
「INTEGRITY(インテグリティ)」には、リビングからも容易にアクセスできる、半屋内型の中庭を配置。ここは、家族との繋がりを育む、コミュニケーション空間だ。
<font size="1">PHOTOⓒMISAWA HOMES CO., LTD.</font>
この春に発売された住宅「INTEGRITY(インテグリティ)」(上写真)は、そのデザインの「範囲」をあらかじめ設定した、新たなデザイナーズ住宅づくりの提案ですね。
そのデザインの「範囲」のもととなるのが、弊社が培ってきたノウハウや設計思想をパッケージ化した「ミサワデザイナーズコード」です。外観デザインの基本となる「作法のコード」、質感や色合いの決め手となる「素材のコード」、アイテムなどディテールまでこだわる「造りのコード」の3つの「決めごと」を設定して、施主様の好みや要望に合わせ、デザインすることを可能としています。
いわば、(コース料理の)「プリフィックス」的にデザインを選べるわけですね。今回、「INTEGRITY(インテグリティ)」が2014年度グッドデザイン賞を受賞した理由も、そうしたデザインの自由度が評価されたのですか。
この商品は、玄関先に広い軒下を設け、敷地外からのアクセスが容易な中庭をつくったことで、近隣住民の方とのつながりを生む設計となっています。デザインに加え、そうした地域社会との交流を育む、ある種の“機能面”に対しても、ご評価いただいたようですね。

「見てほしい」と思えるほど愛着がもてる家を。

「地域社会とのつながり」というお話がありましたが、特に海外で感じるのは、住宅デザインが地域社会の景観に大きな影響を及ぼしているということです。特にヨーロッパでは名所だけでなく、住宅地であれ思わずカメラを向けたくなる風景に多く出合います。対して、日本では残念ながら……。
確かにヨーロッパの街並みはフォトジェニックですね。その水準までいくには、街並みを構成する住宅デザインのレベルを上げる必要がある。それこそ、写真に撮りたくなるような住宅デザインですよね。そして、そのためには生活者が暮らしに対する意識や欲求を上げる必要もありますね。
「写真に撮りたくなる住宅」って、いいですね(笑)。そんな素敵な家が立ち並び街並みを構成すれば、暮らす人の意識も向上し街全体の水準も上がるはず。それはまさしく、デザインがもたらすハッピー感にほかならないし、“生活をデザインする”という御社のテーマにつながりますね。
生活をデザインするという観点でいえば、デザインする対象は必ずしも住宅だけに限らない。屋外施設はもちろんプロダクトなど、デザインでハッピーにできるものはたくさんあると思いますね。
最後に、今後、御社が見据える住まいの方向性をお聞かせください。
弊社では「環境」「暮らし」「家族」「文化」の4つを開発テーマとして掲げています。まずは住宅を建てて、住んでから解体するまでの住宅の一生を通して、環境にやさしい住まいを創ること。そして機能だけでなく美しさの耐久性にも配慮した、末永く暮らせる住まいを追求すること。また、バリアフリーのみならず、さまざまなセンサー技術の活用等により温度、空気や睡眠の質をモニタリングし、家族の健康増進につながる住まいを開発。さらに、オープンスペースの採用など、地域社会との交流を育み文化に根ざした住宅をつくること。これら4つの課題に対応しつつ、デザイン的にも美しい住宅をつくっていきたいと考えております。
単なる住宅デザインではなく、住む人の生活や人生をもデザインするということですね。また、その外観デザインは、写真に撮りたくなるほどにスタイリッシュであることはもちろんのこと(笑)。
行き交う人が撮りたいと思うと同時に、暮らす人にも「撮ってほしい」「見てほしい」と思えるようなデザインを手がけていきたい。そういう意識でデザインに取り組みたいですね。
見てほしいと思えるほど愛着をもてる家って、素晴らしいですね。ぜひ、今後もそうした住宅をつくり続けていただきたいと思います。本日は楽しいお話をありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。


上段写真:ミサワホームは、自然と〝響生〟し、環境やプライバシーを重んじる意匠により美しい景観が醸成され、地域の豊かなコミュニティを育成をする、心地よい「五感デザインのまちづくり」を推進する。
PHOTOⓒMISAWA HOMES CO., LTD.

下段写真:「写真を撮りたくなるような光景に美しいデザインの住宅は不可欠。そのためには、生活社の意識が向上することはもちろん、もっと上質な暮らしに対する欲求を高めてもいい」と、白浜さんは語る。
MISAWA HOMES DESIGN
現在、ミサワホームの信頼のデザインを紐解くスペシャルサイトを公開中です。
スペシャルサイトへ→www.misawa.co.jp/design

問い合わせ先/ミサワホーム株式会社 宣伝・Web企画一課 TEL:03-3349-8040
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