暮らして見つけた、私的サンフランシスコ案内【Part 2】

  • 文、写真:佐藤千紗

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時代を先取りする精神とリラックスした日常が共存するサンフランシスコ。その街に住んで見つけた、地元のライフスタイルを感じさせるスポットを紹介します。

カリフォルニア・ドリーム・ホーム

噴水が流れ、ソファがゆったりと配されたイタリアのヴィラのような中庭。
シンメトリーなインテリアが基本。古材のローテーブルに麻のクロス張りソファ。
まるで秘密の館に迷い込んでしまったよう。サインもなく、ここが店なのかと不安になりながら、パッラーディオ様式の邸宅の門をくぐると、そこには夢のようなカリフォルニア・ラグジュアリーの世界が広がります。
Restoration Hardware(リストレーション・ハードウェア)は、ウィリアムズ・ソノマにいたゲーリー・フリードマンがCEOになって以来、急成長中のインテリアショップ。彼の戦略のひとつは、クラシックでゴージャスな建物をショールームにすること。ボストンでは美術館の中にショップをオープンし、話題となっています。ここサンフランシスコでは、著名アンティーク・ディーラーのギャラリーだった建物を改装。店に入ると壮大な空間に置かれた巨大な家具の存在感とボリュームに圧倒されます。けれども、デザインはいまのテイストをおさえ、ヴィンテージやインダストリアルな要素を取り入れた素材、質感を重視したもの。ベージュからブラウン、グレーへのカラーグラデーションは、ヤスリがけしたような艶消しのアンティークのリプロダクションに馴染みます。見た目より価格は手頃で、サイズ展開も幅広い。ベルギーリネンを使ったベッドやテーブルリネン、クッションカバーはお土産にも最適です。
テック系企業の隆盛によって急増する、経済力がある若者に人気なのも納得。いまが旬のアメリカンスタイルを体現する、新生ライフスタイルブランドです。

Restoration Hardware

188 Henry Adams Street, San Francisco CA 94103

TEL:(415)865-0407

営業時間:9時~18時(月~金)10時~18時(土)12時~5時(日)

無休

http://www.restorationhardware.com/

60年代アメリカのモダンデザインを感じさせるインテリア。
エキシビジョンも充実。テキサス州マーファのデザイナー、Garza Marfaの個展で展示されたレザーチェア。
“ローカル”を重視しているベイエリアでは、アリス・ウォーターズの人気レストラン「シェ・パニース」を筆頭に、地元Heath Ceramics(ヒースセラミックス)の器を使っているレストランがいくつかあります。中でも器使いが秀逸だったのは、イタリアンレストランのFlour + Water(フラワーアンドウォーター)。マットなアースカラーのプレートが色鮮やかな野菜や果物を一層引き立てていました。
ミッションにあるタイル工場を併設したHeath Ceramicsの店舗では、フルラインと世界中からセレクトしたテーブル、キッチン小物が揃います。自然光が差し込む広々とした店内には、「ブルーボトルコーヒー」のスタンドもあり、ヒースのマグでコーヒーをサーブしています。
ヒースの陶器の特徴は、その色。陽の光と海風にさらされ、乾燥し、色が抜けたサンフランシスコ周辺の植物や土の色です。ヒースのうつわがあるだけで、テーブルコーディネートが西海岸スタイルに一変。ミッドセンチュリーデザインでありながら、民芸品のようなその土地のかたち、色を備えているからかもしれません。

Heath Ceramics

2900 18th Street, San Francisco CA 94110

TEL:(415)361-5552

営業時間:10時~18時(月~木、土) 10時~19時(金) 11時~18時(日)

無休

http://www.heathceramics.com/

緑の色合いが美しい、イタリアのテラコッタ。
店内は、ダイニングキッチンとアートが共存し、アーティスティックな暮らしを提案。
坂の上の高級住宅街、パシフィック・ハイツのサクラメントストリートには、ハイセンスなインテリアショップが並んでいます。中でもMarch(マーチ)は、現代の作家ものとアンティークを取り合わせ、うつわやキッチン道具など、テーブルまわりのアイテムを揃える、洗練されたギャラリーのようなショップ。オーナー、サム・ハミルトンが選び抜いた、クリスチャン・ペロションやジャスパー・コンラン、日本の東屋などのうつわが、シックでコンテンポラリーな食卓風景を作り出します。洋食器というと、メーカーものがほとんどで、個人作家ものが少ない中、微妙な色合いやゆがみをもつテーブルウェアからは、サンフランシスコらしいオーガニックな食文化への敬意が感じられます。
実際、スローフード運動に共鳴するオーナーは店内にクラシックなオーブンを設置し、店で軽食を振る舞うことも。店の奥に中庭が広がる、家のようなつくりも気持ちよく、つい長居してしまいます。美味しそうな匂いが漂う店内で、オーナーとコーディネートを相談しながら食器を選ぶ、そんな優雅なマダムも見かけます。

March

3075 Sacramento Street, San Francisco CA 94115

TEL:(415)931-7433

営業時間:10時~18時

定休日:日

http://www.marchsf.com/

古きよき時代を見直す。

工場を利用したブルワリー。気持ちのいい屋外のパティオ席はいつも賑わっている。
店の設計は人気コーヒーショップFour Barrel Coffeeなどで知られる建築事務所ボーア・ブリッジス。
その昔、ミッション地区の外れにはサザンパシフィック鉄道が通り、工業製品をアメリカ各地に輸送していました。そのため、いまでもそのエリアには、倉庫や工場が多く残っています。Southern Pacific Brewing(サザンパシフィックブルーイング)は、そうした元工場をコンバージョンした醸造所併設のビアバー。天井の窓から自然光が差し込み、いちじくの木が枝をのばす店内は、屋内ながらビアガーデンのような開放感があります。バーでは西海岸スタイルのペールエール、IPAなどを主に、常時8~10種類のクラフトビールを提供しています。
サンフランシスコでは、このような生産と販売を一カ所で行う工場直営店舗とでもいうようなスタイルの店が増えています。使われなくなった工場を再利用し、再びサンフランシスコに製造と雇用を作り出すメーカームーブメントの一環でもあります。隣接して、A.P. VINというアーバンワイナリーもあり、かつて市内で盛んだったビールやワインの醸造が復活しようとしています。ナパやソノマまで足を延ばせない時は、サンフランシスコ市内の醸造所をめぐるのもいまどきの楽しみ方かもしれません。

Southern Pacific Brewing

620 Treat Ave, San Francisco CA 94110

TEL:(415)341-0152

営業時間:11時~24時(日~水) 11時~26時(木~土)

無休

http://www.southernpacificbrewing.com/

テラリウムやペインティングは、ローカルアーティストによるもの。店内は彼らの作品を展示するギャラリーにもなっている。
近くの路地にて。下町で見かけるような多肉植物の植木鉢園芸。
1年中温暖で乾燥した地中海性気候のサンフランシスコでは、多肉植物がよく育ちます。街を歩いていると、ピンクやブルーの淡いパステルカラーで塗られたビクトリアンハウスに、スモーキーな色合いの多肉植物が調和した風景をたびたび見かけます。その多肉植物をカフェやレストランの植栽として使う店も増えています。人気グリーンデザイナーのLila B Designが建築家Malcolm Davisと手がけたのはStable Cafe(ステーブルカフェ)。200年前の馬車の厩を改装したカフェです。
室内にはガラスのテラリウム、中庭には多肉植物の寄せ植えなどが飾られ、サンフランシスコらしい建築と植物の融合したデザインとなっています。実はこの場所、建築事務所とグリーンショップ、グラフィックデザイン事務所などのオフィスとカフェの複合施設なのです。さらにカフェのキッチンをコマーシャルキッチンとして、フードビジネスを起業したい人向けに貸し出しています。古い厩をリノベーションしながら、中身はイノベーションを起こすための実験場。ここまで大胆なプランはめずらしいですが、サンフランシスコの店にコミュニティーを形成するための仕掛けは欠かせません。

Stable Cafe

2128 Folsom Street, San Francisco CA 94110

TEL:(415)552-1199

営業時間:7時半~16時(月~金) 9時~16時(土、日)

無休

http://stablecafe.com/

ワークショップも多数開催。動物の剥製作りや昆虫標本作りというマニア向けワークショップも。
ランドスケープデザインチームによるバックヤードガーデン。
鹿の剥製から貝殻、蝶の標本、化石、鉱物、エアプランツ、多肉植物に至るまで、少年が好きなものが一堂に集まった、まるで自然史博物館のような店がPaxton Gate(パクストンゲート)。ランドスケープデザイナーのオーナーが自然界にインスピレーションを得た、珍奇なものを世界中から集めています。一つひとつのものを見て行くと時間が経つのを忘れてしまいそうな「驚異の部屋」。もちろんガーデニンググッズの品揃えも豊富。エアプランツを入れて室内に吊るすガラスの花器やテラリウムなど、西海岸スタイルのインテリアに欠かせない、ナチュラルアイテムも豊富です。店の奥には知る人ぞ知るスモールガーデンがあり、ショッピングの合間の休憩にも最適。
系列のCuriosities for Kids Shopには、デジタル時代以前のノスタルジックでかわいいおもちゃが満載で、いつも大人が夢中になっています。個人のビザールな趣味全開の店が人気を集めてしまうのも、この街らしい大らかさと懐の深さです。

Paxton Gate

824 Valencia Street, San Francisco CA 94110

TEL:(415)824-1872

営業時間:11時~19時(日~水) 11時~20時(木~土)

無休

http://paxtongate.com/

コミュニティーと接点をもつアート

アーティストインレジデンスなど若手アーティストの支援プログラムも充実。
暗がりの中、ポラロイドで観客のポートレートを撮影するTorreya CummingsのStrange Familiars。
90年代~2000年代に「ミッション・スクール」と呼ばれるグラフィティを中心としたストリートアートが生まれたように、サンフランシスコはアートシーンもパワフル。ミッションの外れには、使われなくなった倉庫を利用したアーティストのスタジオやギャラリーが数多くあります。その一角にある、サザン・エクスポージャー(Southern Exposure)はアーティストたちの自主運営による老舗ギャラリー。インタラクティブアートやインスタレーションなど、サンフランシスコベイエリアの若手アーティストのいまを感じる企画展を開催しています。
若者を対象にしたアートクラスの企画やパブリックアートのコミッションを手がけるなど、アーティストとコミュニティーとの接点を作り出す活動にも積極的。アーティストが自分たちの才能を活かして、社会に参加する。そのアクティビストとしてのあり方も、サンフランシスコの伝統を感じます。

Southern Exposure

3030 20th Street, San Francisco CA 94110

TEL:(415) 863-2141

営業時間:12時~18時(火~土)

定休日:日、月

www.soex.org

ミッションストリートにある、Zio Zieglerのグラフィティ。
2012年にバークレー・ミュージアムで行われたバリー・マッギーの個展では、バンやマネキンを持ち込み、人目を忍び、ストリートで描き込む様子が再現された。
街のいたる所で目にするグラフィティやミューラル。サンフランシスコを訪れると、好景気を実感する一方、街の中心部にいるホームレスの多さに驚く人もいるでしょう。成功者の影で、取り残されるものも多く、光と影のコントラストを強く感じます。
そんな社会のひずみを糾弾し、溜め込んだ思いの発露のようなグラフィティには、街を歩いていても、はっとさせられるものが多くあります。人気アーティストの一人、Zio Zieglerのモノトーンで文様が描き込まれた動物や人は呪術的なパワーをもっています。いまでは人気アーティストとなった、バリー・マッギーもミッションの路上で活躍していました。また、ミューラルで埋め尽くされた通りClarion Alleyはストリートアートのショーケースとなっています。グラフィティやミューラルの鋭くストレートに訴えかける表現を感じながら街を歩くのも、サンフランシスコらしい体験です。

ミクロ気候といわれ、各エリアで異なるこの街の天気のように、ストリートが違うだけで別の顔を見せるサンフランシスコ。多種多様な人が暮らし、その違いをポジティブに捉える大らかな優しさが、多くの人が暮らしやすいと感じる一番の理由でしょう。
そこに、いま再びアメリカンドリームを夢見る人が集まり、新しいカルチャーが次々と生まれています。テクノロジーによるイノベーションが進む一方、これまでの機械的な大量生産の仕組みを改め、昔ながらの手仕事や真っ当な食べ物などを見つめ直し、いまに甦らせる作業も進みます。街全体がベンチャーを孵化させる巨大なインキュベーターのような気風をもつサンフランシスコ。この街の独特なスピリットをぜひ訪れて、体感してみてください。

暮らして見つけた、私的サンフランシスコ案内【Part 2】

  • 文、写真:佐藤千紗

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