春夏コレクションのチェックポイント PART 2

  • 文:高橋一史
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ミラノ&パリ、2014年メンズ・コレクションから探った、旬な着こなしのエッセンス

Tシャツ一枚にもシルエットの変化が

ボタニカル柄+プルオーバー・パーカの合わせ技

今季メンズのビッグトレンドといえば、ダークなトーンのフラワー柄に代表されるボタニカル(植物)柄です。ベルギー発の「ドリス ヴァン ノッテン」はもともとエスニックなモチーフを得意とするブランドですが、この春夏シーズンのコレクションをプリントワークを駆使したボタニカル柄で埋め尽くしました。掲載のルック(上写真)は、上下を柄×柄でミックスしたチャレンジングなコーディネート。トップスはこれもトレンドの、ボリューミーなプルーオーバー・マウンテンパーカです。
注目はブルー系の色、さりげなく柄を変えたセットアップ

ブルーという春夏の定番色が、今年は例年よりも多く市場に出揃っている印象です。とくにロイヤルブルーに近い鮮やかな発色のものが人気のよう。エルメスのこの軽やかで気負いないスタイル(上写真)も、主役はブルーといえるでしょう。そして、生地は細かなドット模様なのですが、実はスーツに見える上下は、ドットの大きさが異なる、別の生地の服なのです! こうした微妙なトーン違いをセットアップにするコーディネートは、お洒落上級者が狙いたい新しいテクニックです。
ビッグシルエットなら、Tシャツでチャレンジ

男女ともにタイトが主流だったトップスにも、変化の波が押し寄せてきました。女性の間ではコクーン(まゆ)シルエットやドロップショルダーが浸透しています。男性が大きなアウトラインの服にトライするなら、「ヴァレンティノ」(上写真)のようなTシャツから始めてはいかがでしょうか。このTシャツはハリのあるダブルフェイスのコットン素材を使い、ボディと肩をゆったりとさせながら着丈は短く仕上げられています。シンプルな服だからこそ、ゆとりがきちんと計算されたデザインを選びましょう。

色がシックなら、形は大胆に

街着に取り入れたい、ブルゾンとショートパンツの組み合わせ

スポーツ感覚がシーンを席巻するいま、着たいのはブルゾンやマウンテンパーカなどのカジュアルなアウター。定番化した太糸のニットカーディガンのネクストとして布帛のブルゾンを選べば、新鮮な気分を楽しめます。コーディネートのやり方で旬なのは、この「ルイ・ヴィトン」(上写真)のような同素材の上下セットアップ。ブルーの色も、足元を白スニーカーにして上品さを加味するテクニックも、デイリーに取り入れてみたいスタイルです。
ドレスシャツ生地の贅沢なプルオーバー・パーカ

毎シーズン、スポーツのエッセンスを入れる「クリスヴァンアッシュ」が今季発表したトレンドアイテムの中で、このパーカ(上写真)は特に優れた一着です。ご注目いただきたいのは、光沢のある高級ドレスシャツ生地が使われているという点。マテリアルの選択が、スポーツアイテムのエレガントなブラッシュアップに大きく貢献しています。短パンで素足履きスニーカーのコーディネートは、年代や体型を問わず誰もが受け入れられるバランスといえるでしょう。
ワイドパンツを黒白のコーディネートで

時代感覚が大きく表れるのがパンツのシルエットです。「ランバン」では、上の写真のようなエクストラワイドパンツ、ショート丈、スリムなどをバラエティ豊かに取り揃えています。メンズファッション全体の傾向としては、ルーズなパンツが増えてきていますが、クラシコ・イタリアやパンツ専業ブランドでは裾幅が狭くスリムなものがいまだ主流です。どんなシルエットを選んでもハズレがないのが今シーズンといえるのかもしれません。

注目トピック:話題を集めたコレクション

このページでは注目トピックとして、独自のスタイルを披露して評判を呼んだ「コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン」と「プラダ」、さらにトレンドモチーフをユーモラスにアレンジした「ポール・スミス」にフォーカスします。
1. 老舗バッグを服にした、 コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン

パリで発表されたこのコレクションによって、初めて「サイル マーシャル」の名を知った人もいるのではないでしょうか。ドイツにて、昔ながらの味わいのあるバックパックやショルダーバッグを主に製造している老舗です。今季の「コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン」(上写真)は、デザイナーの渡辺淳弥さんがサイル マーシャルのバッグをデザインすることからスタート。そのあと、できあがったバッグからインスパイアされた同じ素材やディテールを配したジャケットやコートに発展させた独創性溢れるラインアップです。
2. ダークなプリント模様のシンボル、プラダ

暗い色調のプリント模様を多用して、ノスタルジックなリゾートふうスタイルをミラノで発表した「プラダ」(上写真)。ショーの日程がパリより前で、ほかのブランドより早かったこともあり、今季トレンドのフラワー柄を代表するブランドに位置づけられました。ですが、注目なのは徹底したトゥーマッチなほどの着崩しにもあります。ダボッとしたトップスを、同じくルーズなパンツにインしてベルトで締めるコーディネートには、現代のファッションへのアイロニーも込められているようです。
3. ポール・スミス流解釈のフラワー柄 !?

ピーコック革命、フラワームーブメントなどの英国ストリートカルチャーを見てきた「ポール・スミス」は、凝ったプリント使いを昔から得意とするキャリアの長いデザイナーです。彼が今季コレクションの中にさりげなく混ぜた一枚のシャツ(上写真)が、とてもユニーク。遠目には流行のダークなフラワー柄に見えますが、実はモチーフが「サイケデリックなマッシュルーム」! 英国人らしいウィットに富むシャツは、ひとひねりした服をお探しの人にお薦めの一枚。



※「春夏コレクションのチェックポイント PART 1」はこちら。→ http://www.pen-online.jp/feature/report/2014-ss-mens-collection-introduction-milano/1/

※2014年 春夏 メンズ・コレクション、ブランド別の詳細はこちらで紹介しています。→www.pen-online.jp/fashion

※前回の2013-14年 秋冬 メンズ・コレクション、ブランド別の詳細はこちら。→www.pen-online.jp/fashion/season/2013-14AW