20年目の超絶複雑機構と、未来が見えるチタンの先進モデル

文:並木浩一 写真:宇田川 淳

「クロノメーター・レゾナンス」は、F.P.ジュルヌが打ち立てた腕時計史上の金字塔だ。いまから20年前に颯爽と登場して専門家たちを唖然とさせたその腕時計にはバランスホイールが2つあり、それぞれが独立して動いている。つながってもいない2つのホイールは連動して逆方向にシンクロして動き、ズレが生じると自ら補完して、誤差を補正するのである。 信じられない不思議は、科学の世界では“共振”と言われる現象として説明される。それを時計に活かしたのは過去にふたり、腕時計ではフランソワーポール・ジュルヌが初めてで唯一だ。以来、その天才時計師の名を冠したブランドの、発想力と技術力のシンボルであり、誰もまねの...

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