黄金比の美学と理知の果ての複雑さ、これぞ一流の証し。

文:並木浩一 写真:宇田川 淳

最もシンプルな時計と、いちばん複雑な時計。どちらのほうが優れているかを尋ねるのは愚問だが、それでも考えたくなるのはこのブランドだからだ。パテック フィリップでは切り詰めたミニマルな時計の美しさが、人智の極みのような複雑機構と等しい価値で並び立つ。世界最高峰と評されるつくり手の時計は、それぞれに頂点を示す存在なのである。 「ゴールデン・エリプス」は、その名の通り楕円(ellipse)のフォルムをもつ。しかしそれは普通の図形などでは決してなく、楕円を収める長方形を想定すると、短辺と対角線の比は黄金比(1対1.618……)の近似値を示すのである。   フィボナッチ数列からも導かれる1.618...

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