ワインジャーナリスト鹿取みゆきがこの秋薦める、日本の自然派ワイン5種を楽しむイベントが開催。

  • 写真・尾鷲陽介
  • 文:鹿取みゆき 

Share:

イベントで振舞われた5種類のワイン。左から、ドメーヌナカジマ「ペティアン・ナチュール・ロゼ2018」、Sail the Ship Vineyard「Gokigen!」、「クリサワブラン2017」栗澤ワインズ(ナカザワヴィンヤード)、ウッディファーム「原口プティマンサンオレンジ2017」、ドメーヌタカヒコ「ナナツモリピノ・ノワール2017」。

まだ暑さの残る9月25日。東京・神泉のカフェ・ブリュにて、Pen Onlineの連載「ワインは、自然派。」の関連イベント「鹿取みゆきがこの秋薦める、日本の自然派ワイン5種を楽しむ夕べ」が開催された。近年、日本でもつくり手が増えてきた、自然な栽培・醸造を目指したワインの魅力を、文字だけでなくリアルな体験として共有することを目指した催しだ。

イベントでは、連載の著者でもあるワインジャーナリスト・鹿取みゆきが、ワインをセレクト。ロゼの微発泡酒に始まり、白、オレンジ、そして赤2種の計5本が食事とともに振舞われた。新進気鋭のつくり手による新しい銘柄から、2000年代初頭からつくられている自然派ワイン好きなら一度は飲んでおきたい逸品まで、日本における自然派ワインの広がりが体感できるラインアップだ。また、自然派ワインの定義や最新の動向ついての解説も行われ、参加者はワインと食事を楽しみながら熱心に耳を傾けた。

1杯目のドメーヌナカジマ「ペティアン・ナチュール・ロゼ」で乾杯する参加者。

自然派ワインについて解説する筆者、鹿取みゆき。言葉だけが一人歩きしがちである「自然派」という言葉だが、実を言うとこの表現を使うことには抵抗があった。この連載の意図を伝えるためにも、「なにをもって自然とするのか、日本でいつからこうした動きがあったのか」という話からイベントはスタートした。

エチケットはもちろん、裏面のラベルの説明まで、写真で記録する参加者。公式ハッシュタグ「#ワインは自然派のゆうべ」を付けて、SNSでイベントの様子を投稿してくれた参加者もいた。

自然派ワインのつくり方は、「ミニマル・マニュプレーション(最小限の介入)」という言葉で表すこともある。ワインづくりは人が介入して行うものだが、一連の操作を最小限にするという考え方だ。化学合成農薬を使わない、環境に優しい栽培方法、仕込みの際には亜硫酸を加えない、あるいは使用料を最小限にする、培養酵母や酵素を使わない……ということなど。連載では、こうしたつくりを目指すワインとつくり手を紹介することで、彼らの取り組みを見つめている。

カレー好きでウェブでの連載ももっている、モデルの村田倫子さんもイベントに参加。日本ワインを集中して飲んだのは初めてだったが、「Gokigen!」が」気に入ったとのこと。

募集開始から、わずか3日ほどで満席に。総勢30名の方が参加した。

日本における、自然派ワインの広がりを体感。

メニューは、5種類のグラスワインに加え、3品の料理も。日本では希少な水牛でつくられたクルックフィールズのモッツァレラチーズ、広島の古江イチジクと燻製鴨の揚げ出し、メインは千代幻豚のローストだ。千葉、広島、長野といった日本各地の食材を活かしたものばかり。モッツァレラチーズは、当日出来たてのもので、地方の生産者との出会いを大切にしている、カフェ・ブリュの女将・岩倉久恵ならではのメニューだ。

イベントで振舞われたのは、全部で5種類のワイン。1杯目は、長野県東御市にあるドメーヌ・ナカジマの「ペティアン・ナチュール・ロゼ2018」。陰干しした巨峰を使った、凝縮した果実味とフレッシュさが楽しめるロゼの微発泡酒だ。参加者からは、「巨峰でこんなワインができるのか!」という驚きの声があがっていた。

2杯目は、北海道岩見沢市にあるナカザワヴィンヤードの「クリサワブラン2017」。生産量が少ないため、幻のワインと称されることもある銘柄だ。自社の畑で育てられたゲヴュルツトラミネール、ピノグリ、ピノ・ノワールなど15品種のブドウを同時に仕込んでつくるフィールドブレンド(混植混醸)という手法でつくられている。冴え渡るような清々しさをもちながら、ピュアでたっぷりした果実味と余韻のハチミツのニュアンスがあり、参加者の多くが惚れ惚れとしたワインだった。

3杯目は、山形県上山市にあるウッディファームの「原口プティマンサン オレンジ2017」。今秋リリースされたばかりの銘柄で、いま注目が集まるオレンジワインだ。つくり手の金原勇人さんが初めて野生酵母を使っての醸造に挑戦。自社農園のブドウで、化学合成農薬を使わずに栽培されている。後半の力強さと長く続く余韻の長さに、オレンジワインの魅力を初めて知ったという参加者もいた。

4杯目は、長野県上田市にあるまだほとんど無名のワイナリー、セイル・ザ・シップヴィンヤードのワイン。その名も「Gokigen!」。ブドウ栽培に取り組む田口航さんが初めて仕込んだ1本だ。一度見たら忘れられない、キャッチーなラベルデザイン。ギスギスした渋みなど微塵もない、なんとも言えない飲み心地のやわらかさと優しさがある。イベントでは、一口飲んですぐに気に入り、その場で購入しようとスマホで検索する方も現れた。

最後の1杯は、世界的にも注目されている北海道のドメーヌタカヒコでつくられた「ナナツモリピノ・ノワール2017」。シナモン、腐葉土、ラズベリーなどの香りがあふれ、妖艶な魅力を湛えたその味わいは、飲む者をうっとりさせる。これを飲むために参加したという方もいたほど、知る人ぞ知る人気の銘柄だ。

日本の自然派のワインのおいしさとバリエーションの豊かさに、参加者から驚きの声も多く上がった本イベント。今後も開催していく予定なので、ぜひご注目を。

メインの千代幻豚のロースト。

会場では、1830年にフランス・プロヴァンス地方で創業した伝統あるグルメグロサリー「メゾンブレモンド1830」の商品の試食も行われた。左から、シチリア産ピスタチオの歯ごたえとエキストラバージンオイルの濃厚さがマッチしたピスタチオのスプレッド「スプレッド シシリアンピスタチオ」 、フレッシュではじけるような爽快感あふれる香りが特徴の「フレーバーエキストラバージンオリーブオイル レモン」、地中海で育ったマンダリンオレンジ香りが爽やかな「フレーバーエキストラバージンオリーブオイル マンダリン」、瑞々しい風味のオリーブオイル「エキストラバージンオリーブオイル バスティデット」。

同じくメゾンブレモンド1830の「白トリュフソルト」。カマルグ塩に白トリュフ片と白トリュフのアロマエッセンスを加えている。料理の仕上げに使うのがお薦め。

イベントの会場となった渋谷・神泉にある「カフェ・ブリュ」。朝は自家製のパンとコーヒーでモーニング、昼はランチセット、夜は自然派ワインとビストロ料理が楽しめる。東京都渋谷区円山町23-9 平井ビル 1F 営業時間:10時~23時L.O.(火~金) 12時~24時(土、日) 定休日:月

連載「ワインは、自然派。」の記事はこちらから→
https://www.pen-online.jp/special/topics/shizenhawine/