創業者フェルディナント・アドルフ・ランゲの生誕年を戴くA.ランゲ&ゾーネの「1815」ファミリー。彼の想いとブランドの伝統を受け継いだ逸品をひも解く。
A.ランゲ&ゾーネの「1815」は、さまざまな魅力が交錯するコレクションである。創業者フェルディナント・アドルフ・ランゲの誕生年を名前に冠したその“ファミリー”がはじめて姿を現したのは、1995年のこと。A.ランゲ&ゾーネのルーツを再認識させるその時計はたちまち人気を博し、バリエーションを拡張していった。
文字盤側から見る「1815」は、ヒストリカルで特徴的な美意識にあふれている。線路を思わせるレイルウェイ・インデックス、シルバー無垢の地に映えるアラビア数字、焼き入れによるブルースチールの針。年・月・日付・曜日・月齢を表示する「1815アニュアルカレンダー」は、そのスタイルに技術の粋を重ねた複雑機構モデルだ。大・小の月を判別するカレンダーは、日付を2月末の年1回、月齢表示は122.6年に1日分しか調整を要さない。
シンプルな3針モデルから、 複雑機構までのラインアップ
ケースを裏に返せば、ファンを虜にして離さない美観が展開する。グラスヒュッテ・ストライプに仕上げられた洋銀製4分の3プレートは、青焼きビスでゴールドシャトンを留めた人工ルビーで彩られる。空隙から顔を出すバランスブリッジは手彫りで装飾され、古風なチラネジ付きのバランスホイール、スワンネックという2つの特別に伝統的な部品を従えた。時計であるために必要な細部のすべてが美しく、均整と調和が技術と芸術性を結び付ける。
創業者が開いた栄光の工房は代々引き継がれたが、第二次世界大戦後の混乱で東独に編入され、いっとき表舞台から姿を消した。その幻の存在はベルリンの壁崩壊、東西ドイツ統一という激動の中で、西側に逃れていた一族の末裔ウォルター・ランゲによって復活。ふたたび頂点へと昇る。
その物語には「1815」の存在が欠かせない。懐中時計時代の傑作の美点を読み込み、ディテールも部品も仕上げも、一つひとつがランゲの伝統を固守する。19世紀からの歴史を継承しながらも絶対的に新しく、足掛け3世紀を経ても褪せない魅力は、飽きることがない腕時計に結実した。複雑機構モデルからプレーンな3針まで、高度な要求も謙虚さへの期待も、すべて受け止める。華麗ながら真摯であり、巧緻の一方でシンプル。「1815」は、A.ランゲ&ゾーネそのものを反照しているのである。
バリエーション豊かな「1815」ファミリー
問い合わせ先/A.ランゲ&ゾーネ TEL:03-4461-8080