究極のSUVが誕生! 万能かつパワフル、ベントレーの「新型ベンテイガ スピード」を試乗

  • 文:小川フミオ
  • 写真:Bentley Motors
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ベントレーが売れ行き好調のSUV「ベンテイガ」に、シリーズ中もっともスポーティな「ベンテイガ スピード」を2025年に追加。6月に米国でテストドライブするチャンスがあった。オンもオフも万能、という自負の通りの出来映えだ。

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「オレンジフレーム」と名付けられた車体色。

英国で1919年に自動車づくりをはじめ、一貫してスポーティな(超)高級車づくりで知られるベントレーモーターズ。セダンとクーペに加えて、2015年にSUV、ベンテイガを発表。以来、ベントレーの屋台骨となっている。

当初、2012年に「EXP(エクスペリメンタルの意)9F」として発表されたコンセプトモデルは、かなり衝撃的だった。後に「コンチネンタルGT」(初代)などを手がけた才人、ベルギー人のダーク・バン・ブラッケル(Dirk van Braekel)によるデザインだ。ベントレーのセダンとクーペの要素をうまく取り込んでいて、新しい時代に向けてのベントレーの本気度が充溢していた。

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ベンテイガのプロトタイプとして開発された2012年の「EXP9F」。

大きなグリル、丸型ヘッドランプ、まだ前後フェンダーがボディとは独立していた時代のデザインを思わせるサイドパネルの造型など、セダンの要素をSUVとうまく融合。

ベンテイガはフルモデルチェンジを受けず、すこしずつ手を加えながら10年にわたって生産を続けている。その事実から、売り手と買い手ともに、このクルマを高く評価していることがわかる。 

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オプションの23インチ径のロードホイール装着。

技術的進化が、このプロダクトの比較的長い寿命を支えてきた。今回のベンテイガ スピードは好例。初代は6リッター12気筒エンジン搭載だったが、新型は4リッターV型8気筒ターボ。

「8気筒にしたメリットは軽量化、12気筒より100kg軽くなっていて、そのためハンドリングが向上しています」と語るのは、米国モンタナ州のリゾート・ビッグスカイでドライブさせてもらった際に出会った、クリス・コール氏。ベントレー車全体の開発においてディレクターを務める彼は、気筒数を減らした理由を、こののように説明する。

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この内装は「Imperial Blue」レザーに「Klein Blue」の挿し色。

ベントレー史上もっともパワフルと謳われるエンジンを、剛性アップしたシャシーに搭載。広範囲で走りの性能を大きく向上させている。

ブレーキを積極的に使ってカーブで外側にふくらんだりしないよう安定させるトルクベクタリング、加速時など姿勢制御をするダイナミックESC(電子的スタビリティコントロール)、電子制御サスペンション、後輪操舵という具合。23インチの大径ロードホイールやアクラポビッチ製エキゾーストマフラーもオプションで選べる。

たしかに、カーブが大きくても小さくても、面白いようにすっと曲がっていける。特に「スポーツ」モードを選んだときは、スポーツカーのように、アクセルやステアリングホイールに素早く反応。運転席にいると、全長5.1mのSUVとはとても思えないのだ。

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「スピード」には専用の意匠をもったヘッドランプが用意される。

今回、幅の狭い砂利道を登ったり下ったりしながら延々と続く牧場で、ベンテイガ スピードに乗るチャンスもくれた。なにより驚いたのは、砂利の上で思いっきり発進して、そののち急ブレーキをかけてみた時だ。ダイナミックESCなどの働きで、進路がほとんど乱れない。

上はドライブモードで「ベントレー」モードという、いわばメーカー推奨のノーマルモードで走った時。「スポーツ」モードだと、カーブでアクセルを強めに踏み込むと、車体後部が、一瞬外に流れる。 

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モンタナ州エニスの「Jumping Horse Stock Ranch」でオフロード体験。

リア部が軌跡よりふくらむのは、トルクのかかった後輪が、言ってみれば車体より前に出ようとするからだ。でもアクセルペダルに載せている足の力をすこしだけ緩めると、動きは落ち着き、4つの車輪がクルマをまっすぐ走らせることに機能を集中させる。

このように、その気になって速く走らせると楽しい一方で、高速やタウンスピードでは快適。インテリアも仕上げにこりまくっていて、ほぼフルオーダーが可能なのは、さすが超高級のベントレーと言いたくなる。

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左は「2+1」と呼ばれる後席、右は2人がけ仕様。

後席シートは、3人がけのベンチタイプと、2人がけで中央に大きなコンソールをそなえたタイプなど、バリエーションが豊富だ。スペースには余裕があり、スピードはスポーティなモデルとはいえ、ショックは丁寧に吸収され、居心地がよい。

ベンテイガがずっと愛されてきたのは、高い技術力と走行性能、ほかと一線を画したちょっと官能的な雰囲気もあるぜいたくな内装仕上げ、それにもちろん広い室内の機能性も大きい。ベンテイガ スピードはそれらを時代に即して“進化”させている。

さっそく乗ってみたいと思う人もいるだろうけれど、日本で正式に注文が開始されるのは25年8月ぐらいで、納車は26年初頭からという。

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一般道、オフロード、サーキットすべてをカバーすると自負するベンテイガ スピード。
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ドア下部に「Speed」のバッジがつく。

ベントレー ベンテイガ スピード

全長×全幅×全高:5144×2010×1728mm
ホイールベース:2995mm
車重:2470kg
3996cc V型8気筒 全輪駆動
最高出力:478kW
最大トルク:850Nm
0-100kph加速:3.6秒
最高速:310kph
乗車定員:4(5)名
価格:3408万円
問い合わせ:ベントレーモーターズ ジャパン
www.bentleymotors.jp