本格的オフローダーが電動化で性能アップ。「メルセデス・ベンツ G 580 with EQ テクノロジー」試乗記

  • 文&写真:小川フミオ
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メルセデス・ベンツが「Gクラス」をBEV化。2024年10月に日本でも「G 580 with EQ テクノロジー」が発売された。高いオフロード性能はそのまま、というよりむしろ、電気によって走破性を向上させたところが特長である。

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AMGラインパッケージやナイトパッケージなどを備えた「エディション1」。

「Gクラス」と言えば、すぐ思いつくのがラゲッド。つまり頑丈さをイメージさせるデザインだ。

クロスカントリー型4WDは、悪路でボディの一部が破損することを前提にデザインされてきたが「Gクラス」はその好例。平板に近いボディパネルや、丸型ヘッドランプ、変形してもフックをかけてウインチで引っ張って開けられるように採用する、いわゆるアイロン型のアウタードアハンドル。さらに割れにくい位置に設置したターニングランプ(ウインカー)などが、特徴としてイメージできる。ちなみにかつては平板だったウインドシールドは、いまのモデルではカーブがついている。 

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ロードホイールをブラック仕上げにするとボディだけが浮いているみたいに見えてしまうかも、と感じた。

上記の要素は、基本的に交換可能が前提だから。サービス工場にすぐ駆け込めるような状況でないオフロードで破損があっても、鉄板やガラス、汎用丸型ヘッドランプ(最近は少ないが)といった素材で応急処置ができるのが、クロスカントリー型4WDのデザインなのである。

「G 580 with EQ テクノロジー」(以下G 580)は、2018年に大きな改良を受けた現行型がベース。この時にフロントサスペンションが独立式になったり、ステアリングシステムがパワーアシストのラック&ピニオン式になったりと、かなりモダナイズした。

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BEV化しても基本的なレイアウトはICE(エンジン車)と大きく変わらない使い勝手のよさ。

乗った印象は、かなり洗練された。2018年にダカールラリーの練習に使うという南仏の岩山で乗った時も、ずいぶん変わったと印象だった。かつ、最新の「G 400d」や「メルセデス AMG G63」は、乗用車も顔負けなぐらい乗り心地も操縦性も楽ちんだ。

「G 580」についても、街乗りでの操縦感覚はやはり同じ。最近のメルセデス・ベンツ車のエンジンは、ガソリンだろうとディーゼルだろうと、スムーズな回転と静かな音で、たいへん洗練されている。足まわりもよく動いて路面の凹凸を吸収。Gクラス人気が衰えないわけだ、と思う。

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スペアタイヤのケースに見えるのは物入れで充電用ケーブルも収納可能。

「G 580」はバッテリー駆動だが、そこを強調してはいない。発進から加速まで、“ウルトラ”を付けたくなるぐらいスムーズな感覚は、けっして乱暴でない。大きな駆動用バッテリー搭載なので車重は3,120kgと軽くないけれど、運転しているぶんには重さを感じない。

重量感が希薄なのは、ステアリングフィールにも関連している。軽めで、かつ車体の動きは期待以上に速い。「G 580」は4輪ひとつずつにモーターを備える4モーター駆動なのだが、それぞれの回転を緻密に制御。小回りを効かせるGステアリングも、このクルマだけのシステムだ。

パワフルな走行性能も売りもののメルセデスAMGの「G 63」は最高出力430kW、最大トルク850Nmもあるけれど、「G 580」は432kWと1164Nmとその上をいく。

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ローレンジ用ボタンを中心に、360度その場で回転する「Gターン」(右)と、小回りが効かせられる「Gステアリング」(左)それぞれの起動ボタンがある。

先のGステアリングのようにモーターを使うメリットはさまざま。たとえば4基を正回転と逆回転、使いわけることで、その場で360度車体を回すことができ、狭い場所でもUターンができる(ただし一般道では使用禁止)。

どこかの車輪が浮いた状態になった際、従来のようにスイッチでデフロックをオンオフしなくても、モーターによって同じ機能が働く。登坂能力や渡河性能もより向上しているようだ。

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スペースが十分にある後席空間も居心地がよい。

今回乗ったのは、「G580 with EQ Technology Edition 1(エディションワン)」なる限定車。いまはこのモデルだけの販売だ。AMGラインパッケージ(フロントスポイラーやサイドスカートや本革張りシート)をはじめ、専用20インチ径ロードホイール、ブルーブレーキキャリパーや、ダーク仕様の灯火類の「ナイトパッケージ」などを備える。

「アンビション2039」といって、2039年までに、生産する車両、生産工場、それに部品や運搬など、すべてにおいて温室効果ガスの排出をゼロにする目標を掲げているメルセデス・ベンツ。

そのためには一般にも、BEV(バッテリー駆動のEV)の潜在能力の高さを見せつけておくのも重要、と考えて「G 580」を開発したのだろうか。そう考えても不思議でない出来のよさだ。 

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着座位置の高さは従来と変わらず、ホールド性にすぐれるシート形状も基本はおなじ。

メルセデス・ベンツ G580 with EQ テクノロジー エディション1

全長×全幅×全高:4,730×1,965×1,990mm
ホイールベース:2,890mm
電気モーター×4 全輪駆動
駆動用バッテリー容量:116kWh
最高出力:432kW
最大トルク:1,164Nm
一充電走行距離:530km(WLTC)
乗車定員:5名
価格:¥26,350,000
問い合わせ: メルセデス・ベンツ日本
www.mercedes-benz.co.jp