デイリーに着る和モダン、男性服の新しいカタチを老舗Y. & SONSが示す【着る/知る Vol.173】

  • 写真・文:一史

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数多く足を運んだファッションブランドの2024年春夏展示会のなかで、もっともワクワクする品揃えだったひとつがY. & SONS(ワイアンドサンズ)。きもの業界最大手の「やまと」が手掛けるメンズブランド&ショップだ。彼らのセンスの高さは、オーラリーやグラフペーパーらと長くコラボを続けていることからもよくわかる。東京大人シーンとリンクして、洗練された和モダンの世界を築いている。店では貫禄のある反物と一緒に、ユッタ・ニューマンのサンダルが並ぶ。そこには日本の男たちに個性と自信を与える卓越したスタイル提案がある。
今回お届けするのはY. & SONS新作からの6アイテムセレクション。伝統を未来へとつなぐ服とファッション小物を取り入れて、新しい日常のワードローブをつくろう。

街着になった作務衣の巧みなウール生地使い

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日本の伝統の作業着である作務衣のアップデート版。ともに3月30日(土)発売。上着 ¥46,200(税込)、パンツ ¥44,000(税込)/ Y. & SONS

この上下セットアップの服はあたかも、民族服にインスパイアされたヨーロピアンモードのよう。草色の中間色の色と、ウール生地のとろみが実に現代的だ。ジョガーパンツのような裾絞りも旬の感性。実は日本の伝統的な作務衣(さむえ)をアップデートしたものである。生地を変え、サイドにポケットをつけて街着にアレンジ。本格的な和装に基づく仕立てだから確かな本物感がある。サロモンなどのハイテクシューズを履き、「大人のストリートスタイル」にも挑戦したくなる逸品である。

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生地の裁断幅や縫い合わせは伝統を踏襲。フロント全開で羽織っても絵になる。

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トレンドのバケットハットを浴衣生地で 

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柄の出方がカモフラージュ風なバケットハット。¥17,600(税込)/Y. & SONS
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バケットハットの色バリエーション。横にプリントされた英文にも日本の心が。

コットン生地の柄は江戸時代の画家、伊藤若冲の作品から。帽子に仕立てたのはハットメーカーのキジマ タカユキ。現代的なファッション感覚を切り札にするY. & SONSならではの和洋折衷アイテムである。ユニークな柄以上にカタチの美しさが際立つ帽子だから大人によく似合う。左側にプリントされた英文にもご注目を。「The summer grass “Tis all 〜”」は松尾芭蕉の俳句「夏草や〜」の英訳だ。こんなところも大人の洒落心に満ちている。

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ボタンダウンシャツに和をプラス

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浴衣生地が効果的に配された、着丈短めのボタンダウンシャツ。3月30日(土)発売。¥27,500(税込)/Y. & SONS

神奈川県の葉山をベースにして現地に店を構えるSUNSHINE + CLOUD (サンシャイン プラス クラウド)への別注シャツ。Y. & SONSの浴衣生地を袖と胸にパッチワークして、ボタンダウンシャツにリズムを与えた。着ると心が踊るような楽しい一着だ。チビ襟でフロントに前立てもなく、アメリカンベーシックなボタンダウンとはやや趣が異なる。和装のインナーに着たり、作務衣のパンツと組ませたり、浴衣生地の巾着バッグを手に持つなど、シャツの味わいを引き出して着こなしたい。

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ビーサンを卒業して本家本元に戻る

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長く履ける品質で歩きやすい草履を実現させたこだわりのレザー製品。右のネイビーは6月発売予定。右 ¥52,800(税込)、左 ¥55,000(税込)/Y. & SONS

ハワイで生まれたビーチサンダルのルーツは草履(ぞうり)にあるとされるが、日本人は確かに鼻緒つきサンダルが似合うようだ。ただ伝統的な草履のフットベッド部分は、竹皮を編んだ「畳表」。それを足馴染みのいい上質なレザーに変え、新開発のスポンジを仕込んだのがY. & SONSのオリジナル品である。さらにミッドソールはEVAでアウトソールはビムラム社のもの。日本の歴史ある大手製靴メーカーに製造を依頼し、靴づくりのノウハウも組み込んだ。まさしく日本男児のためにつくられた最高のフットウェアである。

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手編みのカゴサコッシュにスマホを入れて

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宮城県を拠点にする「籠心」が製造したカゴサコッシュ。5月発売予定。¥33,000(税込)/Y. & SONS

スマホで何でも事足りる日常のなかで、モバイルバッテリーなどコンパクトでも重いものを持ち歩くことが増えた。服のポケットでは対応できず外出するときサコッシュを斜めがけする人も多いだろう。この日常の必需品にも個性を持たせたい人にぴったりなのがカゴ編みのサコッシュだ。野山に生えるあけびの蔓(つる)を手編みした工芸品である。ファッションの仕事経験のある蔓細工職人と、Y. & SONSとがタッグを組んだバッグ。ジル サンダーのような大人趣味のモード服との相性も抜群だ。

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オーラリーの生地を和服でまとう

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オーラリーのブランドネームがついたコットンシルク生地のコラボ羽織。3月30日(土)発売。¥82,500(税込)/Y. & SONS
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生地はオーラリーのオリジナル品で、裁断・縫製はY. & SONSが担当。両者の得意分野が絶妙にフィットした。

いまやパリコレブランドに仲間入りしたオーラリーは、ファブリック(テキスタイル)に強いこだわりを持つ日本ブランド。派手さのない無地の生地でも触ると気づく高級感や味わいがある。そのオーラリーの今季コレクションの生地を使い、和服仕立ての工房で羽織に仕立てたのがこの一着だ。布の軽く優雅なドレープが羽織にモダンな息遣いをプラス。袖が広がる丸みのある羽織を和装の文脈から離れてオーバーサイズのコートと考えると、着こなしの幅が大きく広がる。デニムに白Tシャツ姿で羽織るのも最高にクールだ。

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神田明神の入口横に佇む第1号店 

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「ビスポーク テーラリング」のイギリス調の言葉も小粋な神田店のエントランス。
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生地を選び仕立てる和装から、洋服にも合う小物類まで都会的趣味の品が並ぶ。

Y. & SONSの店は東京と京都の2店舗ある。京都の第2号店は商業施設の「新風館」内だが、東京の第1号店はなんと神田明神の鳥居すぐ横にある。鳥居をくぐると土産物店が立ち並ぶなかで、異質といえる洗練されたメンズショップである。秋葉原に歩いてすぐの土地柄もあり、外国人観光客も多く訪れるようだ。
「きものテーラー」を掲げる店だけあって、既製品が用意されたきものや浴衣でも自分サイズを採寸してもらいオーダーできる。完成までの2〜3週間待てるなら、価格も既製品と同じだからかなりお得なサービスだ。店を利用する人はぜひ頭に入れておこう。

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記事前半に掲載したバケットハットの元生地。伊藤若冲の絵を図案化したもの。この生地でバケットハットと揃いの浴衣を仕立てることも可能だ。
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レトロモダンな内装は居心地がよく、セレクトショップに行き慣れている人なら気軽に入りやすいムード。

Y. & SONS Kanda

東京都千代田区外神田2−17-2
営業:11時〜19時
水曜定休
TEL:03-5294-7521
www.yandsons.com

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【画像】デイリーに着る和モダン、男性服の新しいカタチを老舗Y. & SONSが示す【着る/知る Vol.173】

街着になった作務衣の巧みなウール生地使い

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日本の伝統の作業着である作務衣のアップデート版。上着 ¥46,200(税込)、パンツ ¥44,000(税込)/ Y. & SONS

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生地の裁断幅や縫い合わせは伝統を踏襲。フロント全開で羽織っても絵になる。

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トレンドのバケットハットを浴衣生地で 

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柄の出方がカモフラージュ風なバケットハット。¥17,600(税込)/Y. & SONS
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バケットハットの色バリエーション。横にプリントされた英文にも日本の心が。

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ボタンダウンシャツに和をプラス

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浴衣生地が効果的に配された、着丈短めのボタンダウンシャツ。¥27,500(税込)/Y. & SONS

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ビーサンを卒業して本家本元に戻る

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長く履ける品質で歩きやすい草履を実現させたこだわりのレザー製品。右 ¥52,800(税込)、左 ¥55,000(税込)/Y. & SONS ※右のネイビーは6月発売予定。

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手編みのカゴサコッシュにスマホを入れて

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宮城県を拠点にする「籠心」が製造したカゴサコッシュ。¥33,000(税込)/Y. & SONS

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オーラリーの生地を和服でまとう

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オーラリーのブランドネームがついたコットンシルク生地のコラボ羽織。¥82,500(税込)/Y. & SONS
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生地はオーラリーのオリジナル品で、裁断・縫製はY. & SONSが担当。両者の得意分野が絶妙にフィットした。

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神田明神の入口横に佇む第1号店 

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「ビスポーク テーラリング」のイギリス調の言葉も小粋な神田店のエントランス。

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生地を選び仕立てる和装から、洋服にも合う小物類まで都会的趣味の品が並ぶ。

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記事前半に掲載したバケットハットの元生地。伊藤若冲の絵を図案化したもの。この生地でバケットハットと揃いの浴衣を仕立てることも可能だ。
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レトロモダンな内装は居心地がよく、セレクトショップに行き慣れている人なら気軽に入りやすいムード

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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