5年ぶりに訪れたアフリカで気づいた、私の生きがい

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    49 ヨシダナギ|フォトグラファー

    各界で活躍する方々に、それぞれのオンとオフ、よい時間の過ごし方などについて聞く連載「MY Relax Time」。第49回は、アフリカやアマゾンなど世界の少数民族や先住民族を唯一無二の色彩感覚で鮮やかに写し取るフォトグラファーのヨシダナギさんです。

    写真:殿村 誠士 構成:舩越由実

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    ヨシダナギ●1986年、東京都生まれ。幼少期にテレビ番組でマサイ族を目にしてアフリカ人への憧れを抱き、2009年に初めてアフリカ渡航。2012年頃から少数民族と同じ格好で撮影を行い、被写体との垣根を超える撮影手法で注目を浴びる。2017年、第48回講談社出版文化賞の写真賞を受賞。エッセイ集『ヨシダナギの拾われる力』(CCCメディアハウス)など著書多数。2023年3月には4作目の作品集「HEROES Special Edition」を発売。

    コロナ禍もあって昨年末に5年ぶりにアフリカに行きました。実際に仕事として撮影する以前から毎年のように行っていたので、「いつ渡航をやめてもいい」って思っていた時期もあるんです。アフリカに行くことが当たり前になってしまっていたんですね。でも久しぶりにアフリカを訪れて、現地で一緒に焚火を囲んだりご飯のつくり方を教えてもらって食べたりする時間がとても尊いと気づいて。「彼らに会いたくて生きてきたんだなぁ」と、もう一度アフリカと向き合いたいと実感しました。

    写真を撮っている瞬間は、最高に格好いい状態で写してあげたいとしか考えていません。いま目の前にいる彼らの姿が、写真を見る人にとっては最初で最後に見る民族の姿という可能性が高い。だからこそ、少しでもいい瞬間を撮りたいと思っています。

    5歳の時にテレビで知ったマサイ族がアフリカに通うきっかけになったように、写真を通してアフリカに興味をもつ人が生まれるご縁ができたらいいですね。

    アフリカに行けない時期は、ドラァグクイーンを新しいテーマに選びました。少数民族くらい興味がもてる対象を考えた時に、ドラァグクイーンに会ってみたいと思ったんです。アフリカの少数民族との共通点は、立ち姿が美しいこと。他人の評価に揺るがない立ち姿が、勇ましくて魅力的に見えたんです。実は私は立ち姿がコンプレックス。私も格好いい立ち姿を見せられるところに、いつかたどり着きたいですね。

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    アフリカにいる時はリラックスしていることが多いです。撮影中はピリピリしていますが、仕事以外ではスイッチが切れているので、アフリカのガイドに「なんでこんなアウェイの地で無防備でいられるんだ」って毎回、驚かれます(笑)。

    言葉を使わないコミュニケーションが心地いいんだと思います。アフリカでは言葉が通じないから話さなくてもいいし、わからないふりをすることもできる。基本的に本音でウソとか建前がないから楽なんです。ウソをつかれても、顔に「ウソ」って書いてあるからわかりやすいですし。

    もちろんアフリカといっても国や民族、個人によって性格は違います。パワフルな人も好きだけど私自身の体の老朽化もあいまって、体力的にアフリカの過酷な環境には耐えられなくなってきました。口数が少ない民族だと、私の性格上の波長と合って安心感があります。

    日本にいる時は、これはどういう意味があるのかと行動に意味や理由、メッセージ性が求められるシーンが多い。そこから解放されるのがアフリカなんです。

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    少数民族と交流を深める時に、もらうことが多いのは食べ物やお酒ですね。こちらからのお土産には、現地の集落の手前にあるマーケットでお肉やお酒、嗜好品を買っていきます。

    わたしはたばこを吸わないので、たばこは持っていかないのですが、日本人スタッフがたばこをねだられていることもあります。現地でたばこの吸い回しをするところを見ると、やっぱりたばこってコミュニケーションツールなんだなって思います。

    たばこが似合う人はつい目で追ってしまいます。たばこをくわえている少数民族の男性のポートレートも複数ありますし、ドラァグクイーンの撮影でも小道具に使いました。少数民族では、女性が吸うこともありますが年配の人や男性が吸うことが多いので、喫煙していたおばあちゃんがいたから写真を撮らせてもらったこともあります。私自身がたばこを吸わないのは、似合わないからです。たばこが似合う姿の理想像が自分の中にあるんです(笑)。

     

    問い合わせ先/JT
    www.jti.co.jp