温泉と美食で心を整える、都会の日本旅館「星のや東京」

  • 写真:秋田大輔
  • 文:真下武久

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旅人を圧倒的な非日常でもてなす「星のや」にあって、唯一、東京・大手町という都市に構える「星のや東京」。そこには、一歩足を踏み入れた瞬間から都会の喧騒から離れた和のやすらぎが待っている。

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各フロアの一番奥にある、最も広い客室「菊」。小上がりになったベッドは、布団のようなフカフカな寝心地。

大手町という東京きっての金融街に、黒を基調とした17階建ての目を惹く建造物がある。近づくと、黒に思えた外観は江戸小紋の麻の葉崩しをモチーフにした格子柄。青森ヒバの一枚扉の先では白檀が香り、壁一面の竹細工や四季折々の草花とともに、和装のスタッフが出迎えてくれる。客人はここで靴を脱ぎ、目の細やかな目積表(めせきおもて)の畳の回廊へと通される。

エレベーターや客室を含め、館内は畳でひと続きになっており、目や鼻、足の裏からも、ホテルとは違った和のやすらぎが感じられる。「星のや東京」のコンセプトは「塔の日本旅館」。一服の茶をいただき、地下約1500mから湧き出す天然温泉に浸かれば、東京のド真ん中にいながらにして、瞬く間に和の世界へとトリップできる。

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左:最上17階にある天然温泉「大手町温泉」の内風呂。太古の昔、大手町付近は海だったことから、泉質は塩分を多く含みしっとりとなめらか。右奥の洞窟のような通路の先が露天風呂。 右:黒い銅板の壁の上部に、大きく天窓が開いた露天風呂。格子戸の隙間から心地いい風が吹き抜け、瞑想ルームにでもいるような幻想的な雰囲気。

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各フロアに設けられた「お茶の間ラウンジ」はそれぞれのフロアの宿泊客のみが24時間、自由に利用できる。

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白檀と畳のイグサの香りに癒やされるエントランス。非日常の世界へと引き込まれる空間だ。

食もまた独創性に満ちている。ディナーで供されるのは、フレンチの技法と、古来日本の食文化を支えてきた発酵食品を融合させたコース料理。

たとえばブールブランソースにエシャロットの古漬けを加えたり、レバーペーストに豆腐を味噌もろみに漬け込んだ「豆酩(とうべい)」を使ったり、コンソメに阿波伝統の「ねさし味噌」を練り込んだり、といった具合だ。発酵食品は素材の旨味を引き出すのみならず、免疫力も高めてくれるという。

都市=ホテルという先入観を捨て、東京であえて日本旅館を選ぶ。それが旅の新しいカタチなのかもしれない。

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左:ディナーコースの「Nipponキュイジーヌ~発酵~」より、浜田統之総料理長のシグネチャーでもある「五つの意思」。五味(酸・塩・苦・辛・甘)を5つの石の器の上に表現。 右:魚料理の「平目のアンクルート」。2枚に重ねた平目を、糟漬けにしたポルチーニ茸や海老&帆立のムースとともにパイ生地に包んで焼き上げた一皿。ソースはエシャロットの古漬けを加えたブールブラン。古漬けによる酸味が、素材の滋味を引き立てる。

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扇の格子戸で仕切られる全4卓の半個室。他に6室の完全個室を用意。

星のや東京

住所:東京都千代田区大手町1-9-1
TEL:03-6214-5151
全84室
料金:1室¥112,000~ ※税・サービス料込、食事別
アクセス:JR 東京駅より徒歩約10分、東京メトロ大手町駅より徒歩約1分

星のや総合予約 TEL:050-3134-8091
https://hoshinoya.com