『孤独のグルメ』第3話の聖地巡礼レビュー。東麻布で外国料理店のもつ“力”を感じる

  • 文:絶対に終電を逃さない女

Share:

Ⓒテレビ東京

第1、2話と東京郊外が続いた『孤独のグルメ Season9』だが、第3話は東麻布ときた。都心となると放送直後は混雑するかと思い、第1話と同様、「事前聖地巡礼」をすることに。

【前回の記事はこちら

麻布らしいオシャレで落ち着いた外観の「ギリシャ料理 タベルナ ミリュウ」。

テラス席で美味しそうに「ムサカ」を食べている一人客の男性を見かけ、直感的に「あ、聖地巡礼っぽいな」と思った。3店目ともなると、なんとなく雰囲気だけで『孤独のグルメ』の聖地巡礼をしている人がわかるようになってくるのだ。

(おそらく)ギリシャの音楽が流れる店内に入ると、井之頭五郎と同じ窓際の席に案内され、とりあえず予告に出ていた料理を注文する。

ぶどうの葉で牛肉と米を包んだ、ロールキャベツの原型とも言われる「ドルマーデス」。日本では馴染みの薄いぶどうの葉だが、意外とクセがなく食べやすい。微かにぶどうの香りもする。五郎はムサカを食べた時に「遠くに微かに焼きナス」と表現するが、個人的にはドルマーデスこそ「遠くに微かにぶどう」だった。

ぶどうの葉と肉と米とレモンが奏でる見事なハーモニーに、思わず目を閉じる。聖地巡礼ではなく普通に来ていたら食わず嫌いを発揮しそうなところだが、こうして食の楽しみを広げるきっかけをくれるところも、『孤独のグルメ』の魅力なのかもしれない。

ナス、牛肉のミンチ、じゃがいも、ホワイトソースをオーブンで焼いた「ムサカ」は、ラザニアやグラタンに近いが、よりマイルドな印象。今までギリシャ料理を食べたことがなかったが、日本人の舌にも合いそうだ。

---fadeinPager---

デザートにも挑戦

予告ではこの2品だけだったが、もはや四次元ポケットなのかと思うほどの五郎の胃袋がこれだけで満たされるはずがない。きっとあと3品は追加するはずで、その一つはデザートだろう。

そう推測して目を付けたのは「古代ギリシャのレシピから考案したシェフオリジナルのチーズケーキ」。もう名前だけで面白いじゃないか。

結果的に五郎が選んだデザートは「バクラヴァ」だったが、隣の客が食べているのが映されていた通り、側面だけがボロボロのプリンとでも言うべき新鮮なヴィジュアルも面白い。

濃厚なチーズケーキをイメージしていたが、食べてみるとかなり軽い口どけで驚く。良い意味で期待を裏切られ、芳醇でフルーティな香りが鼻をくすぐる。

あまりの美味しさに時間を忘れ、不思議と凪いだ海のように清々しく穏やかな気分になっていた。

窓から見える景色は東麻布の住宅街なのに、エーゲ海が広がっている。ひと夏のバカンス。小旅行。異国情緒。そんな言葉が似合う空間。

パナマ大使館での商談を終え、「海外もしばらく行ってないなあ。メニューがちっともわかんないような外国飯、したいなあ」とギリシャ料理に辿り着いた五郎も、「異国気分が心に焼き付けられる。ああ、良い旅になった」と和やかな表情で店を後にしている。

そう、小一時間ほど食事をしただけなのに、ちょっとした旅行に来たかのような気分が味わえるのだ。外国料理店には、そういう力がある。

なかなか海外に行けないこのご時世、たまには馴染みのない外国料理を食べるのも気分転換になって良いものだな、と思ったのだった。

020 (3).jpg
第三話冒頭でパナマ大使館へ商談に来た五郎。次回第4話の放送は7月30日(金)深夜0時22分よりスタート!Ⓒテレビ東京

絶対に終電を逃さない女

1995年生まれ、都内一人暮らし。ひょんなことから新卒でフリーライターになってしまう。Webを中心にコラム、エッセイ、取材記事などを書いている。『GINZA』(マガジンハウス)Web版にて東京の街で感じたことを綴るエッセイ『シティガール未満』、『TOKION』Web版にて『東京青春朝焼恋物語』連載中。
Twitter: @YPFiGtH
note: https://note.mu/syudengirl

連載記事