Food 下町ならではの空気が育む、大衆酒場の鏡。

下町ならではの空気が育む、大衆酒場の鏡。

山利喜

山利喜

エリア:森下

大きな赤提灯が店先に灯る頃、次々と客が暖簾に吸い込まれ、ほどなくして店は活況を呈す。入店を待つ行列もここでは日常の光景です。場所は下町・森下。関東大震災から復興間もない1924年に創業した「山利喜」という居酒屋です。昨夏から昨年末にかけて、建物の老朽化のため本館を一時閉店、大幅な改築工事を施しました。


厨房が見える1 階のカウンター席、吹き抜けのある2 階席、そして地下には掘り込み式のお座敷を拡張。大衆酒場らしい旧館の情緒はどことなく残しながら、新生「山利喜」として新たな時を刻み始めたばかり。

その一方で、先代から続く「煮込み」と「やきとん」という看板料理は何も変わりません。鋳物の大鍋で作る煮込みは、牛の小腸「しろ」と第4の胃「ギアラ」を、八丁味噌や赤玉ポートワインなどで6 時間以上かけて仕上げたもの。たれは40 年以上継ぎ足しながら使い、歴史という隠し味を忍ばせています。別注文したガーリックトーストで煮汁をすくいながら味わうのがここの定番。豚の内臓を串に刺して焼いた「やきとん」も健在です。戦後普及した安価で手頃な居酒屋のつまみは、売り切れ御免の人気ぶり。

ほかにもフランス料理の修業を経験した3 代目が作る気の利くつまみの数々に、ついつい酒がすすまずにはいられません。


そもそも居酒屋の起源は、江戸の酒屋が肴を提供したことに遡ります。「山利喜」でも20 種以上の日本酒や焼酎、10 年前から注力するワインなど、充実の銘柄を揃えています。ざっかけない下町の持ち味が気の利いた良店を育む――この店を一度でも訪れれば、誰もが人気の理由を知るはず。気取らず酒を酌み交わせる下町居酒屋の良心が、ここにはいつも変わらずあるのだから。


上写真:森下交差点すぐ。玄関にあるたぬきの置物、屋号入りの大きな暖簾、そして格子の窓枠が旧本館の面影を残す。17~18時までの入店分のみ事前予約を受け付けてくれる。

下町ならではの空気が育む、大衆酒場の鏡。

煮込み玉子入り¥630、ガーリックトースト¥300、やきとん各種¥300(1人前2本)。左から、軟骨たたき、かしら、しろ、れば、子袋。味つけはたれと塩から選べる。

下町ならではの空気が育む、大衆酒場の鏡。

やきとん台のある1階。煙とともに香ばしい匂いが立ち込める。ほろ酔い気分で賑わう光景は、これぞ日本の居酒屋。日本酒1合¥650~

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