2016年の“グッドデザイン”を振り返ってみよう。

2016年の“グッドデザイン”を振り返ってみよう。

画期的な世界地図図法、「オーサグラフ」が大賞獲得。

画期的な世界地図図法、「オーサグラフ」が大賞獲得。

昨年、2016年のグッドデザイン大賞は、世界地図図法「オーサグラフ世界地図」が獲得しました。地図図法という言葉にピンと来ない方も多いかもしれませんが、「メルカトル図法の世界地図」といえば学生時代から馴染んだビジュアルが頭に浮かぶはず。「オーサグラフ世界地図」は約500年前に発明されたメルカトル図法とは異なり、カメラオブスキュラという透視図法を応用し、面積比が正しく、形の歪みが少なく表示されるようデザインされています。この受賞で、空気のような存在の地図が社会的なインフラであること、「中心」と「周縁」というように、知らず知らずの間に人々の意識や考え方に深く影響を与えているグラフィックであることに気づいた方も多いはず。一見地味なこの地図図法が大賞を受賞したのも、デザイナーの鳴川肇さんが学生時代からコツコツと改良し続けてきたデザインの時間の積み重ねと完成度を、約4ヶ月間に及ぶ審査のプロセスでしっかりと読み解いて評価できたからこそと言えるでしょう。

オーサグラフ世界地図。面積比が正しく形の歪みが少ないだけでなく、どこを中心に据えても地図として成立するという特徴がある。
緻密な物語、小さな目配りが込められた“ていねいな”デザインが光る!

緻密な物語、小さな目配りが込められた“ていねいな”デザインが光る!

そのほかの大賞候補、金賞や特別賞では、IoTを取り入れた最新の学習ツールや生活用品、農業の後継者問題、空き家・空き団地対策、防災、そして障害を超えて様々な事象を共有するためのツールや場などのデザインに強い共感が集まりました。
グッドデザイン賞への応募デザインのジャンルが年々多彩になると同時に、フォルムの美しさだけでなく「もの」や「こと」の緻密な背景を検証し、「ソーシャルグッド」を追求しているかどうかの評価に、より重きが置かれる傾向にあります。応募する企業や個人も、知名度アップや社会的な評価を得るだけではなく、「今、社会で問われている問題点や課題とは?」という意識を広い視点でもつ機会として、グッドデザイン賞を捉えるところも増えてきているとか。GOOD DESIGN Marunouchiなどで、審査委員やフォーカス・イシューディレクターからの積極的なアウトプットが共有されるようになったことも影響しているかもしれません。

  • 大賞候補にもなり金賞を受賞した車椅子「COGY」。歩行困難な方でもどちらかの足が少しでも動かせれば操作できる構造。自分の足を使う喜びを実現した点が高く評価された。

  • 同じく大賞候補になり金賞受賞の「ホシノタニ団地」。居住者だけでなく、街にも開いた形で既存建物の有効活用を設計した点や、子どもを中心とした視点が評価された。

  • 読みたくなる防災ブックとして全国で話題となった『東京防災』。大賞候補かつ金賞を受賞。外国語版や視覚障害者版の用意や、無償ダウンロードを実現したことも注目された。

  • ヘアピン型の「Ontenna」は、振動と光で音の特徴をユーザに伝える音知覚装置。聴覚障害者の知覚体験を広げた点が評価された。グッドデザイン特別賞「未来づくり」受賞。