Pen編集者16名が初公開!我が愛読誌、教えます。

憧れの人を真似して買っていた雑誌が、いつしか本命に。

暮しの手帖

倉持 佑次

僕が少し背伸びをして購読している雑誌、それが「暮しの手帖」です。

僕には、実の兄弟のほかに、兄と慕う人がもうひとりいます。都内のヘアサロンで働くその人は、特にカルチャー面において自分に大きな影響を与えています。僕がチェット・ベイカーの歌を聴くのも、古いハミルトンの腕時計を着けるのも、もしかすると、他人にていねいに接することすらも、彼を真似して始めたこと。それはさながら、親の真似をしながら言葉や歩き方を覚える赤子のようだったかもしれません。ただ、そうすることで僕は新しい世界に足を踏み入れ、新しい感動を得ることができたのです。

さて、その彼と本や雑誌について語り合っていた時のこと。話題はお互いの愛読誌へとおよび、「Interview Magazine」を定期購読していると強がる僕に、彼が差し出してきたのがこの「暮しの手帖」。いわく、「日々の暮らしを充実させることで、人生はもっと楽しくなる」(といった趣旨だったような)と説いてくるわけです。それまで彼の一切合財を真似してきた僕も、これには拍子抜けしました。なぜなら、目次に並ぶ言葉は、「手芸」「暮らし」「紀行」「健康」など……。それ全部、老人の興味ごとやないかい! 目標とする人を追い抜いてしまった、と感じた瞬間でした。

時は流れ……。

職業柄、数多くの雑誌を手にとるようになったいま、僕が定期的に購入する雑誌は、「Interview Magazine」と、「暮しの手帖」だけ。なんだかんだ、真似する結果になってしまったわけです。「暮しの手帖」を手にとってまず最初に見るのが、スタイリスト原由美子さんの連載エッセイ「服と装」。最新号では「男性の装い」というタイトルで、小津安二郎さんの映画の話が出てくるのですが、これがまた興味深い。詳しくは雑誌をお買い求め頂くとして、個人的には「読むファッション誌」のような感覚で楽しんでいます。
暮しの手帖

過去には、「年齢と装いについて」「今日着る服の決め方」「雨の日の装い」などのテーマが。 (表紙・誌面写真:青野豊)

暮しの手帖
暮しの手帖社
奇数月25日発売
¥926
1948年創刊
編集長:松浦弥太郎