BEST MINUTES REPEATER

ROYAL OAK CONCEPT SUPERSONNERIE ロイヤル オーク コンセプト・スーパーソヌリ

ROYAL OAK CONCEPT SUPERSONNERIE

楽器のように設計されたミニッツリピーター

トゥールビヨン、クロノグラフ、それにミニッツリピーターを搭載したハイエンドなコンプリケーション。ハンマーがゴングを叩く音色と回数で時間、15分、分を教えてくれる。「スーパーソヌリ」と命名されているように、ノイズのないクリアで美しい音色が大きく反響する。そのために3つの革新的な技術が開発された。手巻き、チタン、ケース径44㎜。(価格はお問い合わせください。9月発売予定)

ミニッツリピーターをおさらいしておくと、一般的には高低2つの音色で時間を教えてくれる機構だ。たとえばコンとキンなら、コンコンで2時、キンコン・キンコンで15分×2回=30分、キンキンキンキンなら4分、つまり2時34分を示す。夜間に時間を知るために、電気のない時代に考案された複雑機構であり、懐中時計から腕時計にも導入されたのだが、ケースが小さくなり防水性も重視されるため、音が外部に出にくい構造になってしまった。
ところが「ロイヤル オーク コンセプト・スーパーソヌリ」は、濁りのまったくないクリアで美しい音色が、時計をしている人以外の耳にも自然に心地よく入ってくるのである。

3つの特許によって、美しい音色と音量を実現。

画期的なモデル開発に貢献したのは、先端機構開発工房「オーデマ ピゲ・ルノー エ パピ」だ。数千万円レベルのスーパーコンプリケーションを製作してきた超絶的な技術者集団だが、ミニッツリピーターは感性が判断する「音」が主役のため、完成までに10年以上もの歳月を費やしたという。
「各種のミニッツリピーターを聴き比べて、1924年製の音が最も美しいと確認できたのですが、その安定化が難しい。昔は絶対音感をもつ時計師がほんの数名いたようですが、現在は状況が異なります」と責任者のジュリオ・パピは語る。この音は時計内部の外周に張られたリング状のゴングをハンマーが叩いて発生する。つまり、このゴングの材質や太さ・長さなどが音色に直接的に関わってくるのだ。
「空気の振動である音に対する人間の感情的反応を数値化・視覚化することから始めました。音楽専門家などの助言を得て、調律しやすいゴングづくりにつながる素材加工などをローザンヌ工科大学と共同開発したのです」
人間の聴覚だけが頼りだった分野に最先端の科学を導入。「美しい音色」をデータ化したのである。それに基づいてつくられたゴングを時計師がチューニングするのだが、この段階からは熟練の経験と勘が不可欠となってくる。
美しい音色が実現できれば、それをクリアで豊かに反響させることが課題となる。まず障害となったのは、前述したハンマーをゼンマイで規則的に作動させる調速装置のノイズだ。この機構に柔軟性の高い特殊な形状のブレードを挟み込むことで、ほぼ完璧な消音と衝撃の吸収にも成功している。
残された最後の課題は、音を豊かに響かせることだが、これはゴングをムーブメントから切り離して音響板に配置するという革新的な発想で解決した。このリングの音を共鳴板が受けて増幅するという、アコースティックギターのような構造になっているのだ。
「独自のゴング製法、調速装置の消音機構、そして豊かな音量を出すメカニズムの3つで特許を取得しています。けれども、最初に説明したように、すべての開発は過去の時計から最大限の情報を集めることが始まりなのです」
時計の機構やデザインは未来的でも、その中には温故知新というべきか、伝統や高度な技術蓄積に対する尊敬が込められているのである。

ROYAL OAK CONCEPT SUPERSONNERIE
上:アコースティックギターをモデルに開発された音響構造。時計下部にゴングと共鳴板などを配置(写真は分解イメージ)。
左:ハンマーを制御する調速装置の仕組みを示す模型。赤い部分が柔軟性のあるノイズを軽減する新調速装置。
オーデマ ピゲ スイス本社
オーデマ ピゲ・ルノー エ パピ ディレクター
ジュリオ・パピ Giulio Papi 1965年、ラ・ショー・ド・フォン生まれ。時計学校を卒業後、オーデマ ピゲに入社。1986年に21歳の若さでドミニク・ルノーとムーブメントの専門工房を設立。1992年からオーデマ ピゲの傘下となったが、他ブランドの超複雑時計も数多く手がけている。