技術の粋を凝らした超複雑時計に、 なんとニシキヘビの野性味をダイナミックにアレンジ。

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    ユリス・ナルダン ロイヤル パイソン スケルトン トゥールビヨン

    技術の粋を凝らした超複雑時計に、 なんとニシキヘビの野性味をダイナミックにアレンジ。

    文:笠木恵司

    時計ジャーナリスト。1990年代半ばからスイスのジュネーブ、バーゼルで開催される国際時計展示会を取材してきた。時計工房などの取材経験も豊富。共著として『腕時計雑学ノート』(ダイヤモンド社)

    パイソンのウロコ模様が奇抜なイメージだが、各パーツを強度の限界まで美しく削り込んだ透明感の高いスケルトンモデルに、フライング・トゥールビヨンを搭載したアーティスティックなコンプリケーション。

    トゥールビヨンは伝統的な機械式時計で最高峰とされる複雑機構ですが、これを搭載したスケルトンモデルにパイソン(ニシキヘビ)の野性味をまとった異色の新作がユリス・ナルダンから登場しました。地板やブリッジを強度の限界まで美しく彫り込んだ透明感の高いモデルに、厳しい自然界に君臨してきたワイルドな生命力をアレンジした希少な美術工芸品です。

    この時計で圧倒的に目立つのは、ライトグリーンとブラックが混淆した独特のウロコ模様をもつパイソン革ストラップです。このモチーフを時計本体のインナーリングやブリッジにもハンドペイント。スケルトンになっているせいか、6時位置のトゥールビヨンを心臓として、時計全体があたかも生きているかのように感じられます。要所に埋め込まれた軸受けのルビーの鮮烈な紅色もその証といえそうです。

    こうした芸術性だけでなく、12時位置には大型の香箱(動力ゼンマイを収納)を配置。約170時間=約7日間のスーパーロングパワーリザーブ(1秒5振動、手巻き)を備えているほか、6時位置のトゥールビヨンは表側にブリッジのないフライング・タイプ。しかもヒゲゼンマイからアンクルやガンギ車もシリコン製になっており、耐久性、耐磁性、精度の安定性などにも優れています。

    現在ではムーブメントにシリコン製パーツを導入するブランドは決して珍しくありませんが、他に先駆けて開発・製品化したのがユリス・ナルダンなのです。

    1846 年にスイスのル・ロックルで創業した同ブランドが世界的な名声を築いたのは、船舶用(マリン)クロノメーターでの実績によってでした。船の正確な位置を知るためには安定した高精度の時計が不可欠であり、最盛期には50か国の海軍に納入したともいわれています。日露戦争でバルチック艦隊を撃滅した連合艦隊の旗艦・三笠にもユリス・ナルダンのマリン・クロノメーターが搭載されていたほか、懐中時計でも日本の皇室への納入実績があります。腕時計の時代になるとクロワゾネ(有線七宝)でも高い評価を獲得。その一方で、天体の運動を腕時計で表現した超複雑な「天文時計」も発表しています。

    21世紀の幕開けとなる2001年には、これまでに見たこともない画期的な複雑時計「フリーク」を開発して世界を驚嘆させました。この時計は調速脱進機をダイヤル上に配置。それ自体が回転することで時間を表示する仕組みになっています。そして、この「フリーク」で初めて採用されたのがシリコン製のパーツなのです。硬度が極めて高いためガンギ車やアンクルに使用すれば注油不要で耐久性が高く、ヒゲゼンマイなら金属ではないことから磁気の影響を受けません。そのほかに製造上のメリットもあるのですが、その先鞭を付けたのがユリス・ナルダンなのです。

    この「ロイヤル パイソン スケルトン トゥールビヨン」は一見するとパイソンのウロコ模様が強烈なインパクトを与えますが、こうした独創的な技術力と芸術性に裏打ちされた、繊細かつダイナミックな新時代のコンプリケーションといえるのではないでしょうか。

    なお、ユリス・ナルダンは2014年からケリンググループに参加しており、今後は日本での展開を本格化していく予定です。

    技術の粋を凝らした超複雑時計に、 なんとニシキヘビの野性味をダイナミックにアレンジ。

    12時位置に大型香箱(動力ゼンマイを収納)を配置。手巻きながら約7日間のロングパワーリザーブなので、週に1回だけ巻き上げる習慣を持てばむしろ便利。6時位置はトゥールビヨン

    手巻き、ローズゴールド、ケース径44㎜、30m防水、ストラップはバックル付きパイソン革、¥9,882,000(予価、5月発売予定)
    パトリック・ホフマン

    今回のコメント

    パトリック・ホフマン

    ユリス・ナルダンCEO

    この力強い7日間のパワーリザーブを誇るスケルトン・トゥールビヨンには、計時機器の限界を追い求めた創造性あふれる探究の中に、ユリス・ナルダンのマニュファクチュール・スピリットと革新性の融合や、メティエ・ダール(美術工芸)が息づいています。

    公認会計士としてキャリアをスタートさせ、アメリカ留学を経て、91年にスイスに帰国、オリスへ入社。マーケティング業務などを担当。99年にユリス・ナルダンに入社。セールス・マーケティングのバイスプレジデントなどを経て、2011年にCEO就任。