海外の日本車好きに訊く、僕らが古い日本車にはまった理由。【アメリカ編】

  • 撮影:鈴木香織
  • 文:稲石千奈美

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海外の人々にとって日本車は「輸入車」。そもそも自動車に対する価値観も異なる。我々とは違う古い日本車の楽しみ方を、「アメリカ」「イタリア」「イギリス」で探った。




デザイナーを目指すきっかけが、「ターセル」だった。

ブライアン・トンプソン/ロサンゼルス(アメリカ)自動車デザイナー。 日産自動車やエアストリームなど多様なクライアントの仕事を担当。コンパクトなクルマに完璧なデザインを感じ「日産パルサー」「スバル・レオーネ」「フィアット500」など新旧十数台を所有。LGBTの自動車・交通機関デザイン学生を対象とする奨学金も主宰。

「1983年、両親と一緒に訪れたディーラーで僕は宇宙船のようなターセルにひと目惚れ。買うまで動かないと、運転席に座って中からロックしたんだ」とブライアン。めでたく購入されたクルマは、デザインも機能も期待通りだった。ブルーのチェックのシート素材、リアクオーターの窓やランプのデザイン、ツートーン色など、すべてが刺激的だった。

カウンセラーに自動車デザイナーなんて儚い夢だと言われ、大学を中退。自力で欧州を旅し、自動車デザインスタジオの扉を叩きまくった。シトロエンで経験を積み、デトロイトの名門デザイン大学を卒業。日産に採用され、多数のデザインを担当した。

ターセルの強烈な原体験がインスピレーションの源であるというブライアンにとって、「トンプソン家が所有したターセルを買い戻すこと」はとても重要だった。だが、一度売却されたクルマの行方探しは困難を極めたが、持ち前のキャラクターとチャーミングさで、アイダホ州の雪の中に事故車として放置されていたターセルを発見。2年がかりのレストアを施した。カリフォルニアで、ターセルの幸せな第二の人生が始まったのだ。

1983年式 トヨタ・ターセルワゴン 「楽しく、ハッピーで、運転席に座れば気分はあがり、笑顔になる」という「トヨタ・ターセルワゴン」。ブライアンが自動車デザイナーに憧れ「人を幸せにするデザイン」を心がけるきっかけになったクルマだ。

81年式ホンダ・シティ。日本国内仕様でモトコンポ付き。ネットで見つけて即買いした。「モトコンポは楽しいけれど、重いっ!」とボディビルダーの彼が、よいしょと出し入れ。

シティとターセルのモデルカー。模型専門家の友人がつくったシティは実車より価値が高いそう。

83年にアリゾナのトンプソン家にやってきたターセルは家族のワゴンとして活躍。夏休みも雪遊びも一緒だった。売却された後も忘れられず、自動車デザイナーになったブライアンは、2000年にアイダホ州で事故車として放置されていたそのもののクルマを発見し救出。発見からレストアまでの記録が残る。

こちらの記事は、Vマガジン Vol.02「世界に誇る名ヴィンテージ こんな日本車を知っているか?」特集からの抜粋です。気になった方、ぜひチェックしてみてください。アマゾンで購入はこちらから。