80歳を迎えた「カーデザインの父」、ジウジアーロが語った傑作デザインの秘密。

80歳を迎えた「カーデザインの父」、ジウジアーロが語った傑作デザインの秘密。

写真:小野祐次 文:大矢アキオ

2018年9月にスイス・バーゼルで初開催された、デザインと建築をヴィンテージカーに融合させた新イベント「グランドバーゼル」。会場でひと際目をひいたのは、ジョルジェット・ジウジアーロがデザインした真っ白なスポーツクーペ「テスチュード」だった。55年前にベルトーネで生まれた出世作と、最新作のコンセプトEV(電気自動車)との共通点をきいた。

ジョルジェット・ジウジアーロ/カーデザイナー 1938年イタリア、クーネオ県生まれ。名設計者ダンテ・ジコーザに才能を見出され55年にフィアット社入社。59年ベルトーネのチーフデザイナーに。68年にイタルデザインを創立。いままでに200台以上のデザインを手がける。2015年に『GFGスタイル』を設立した。

ヴィンテージカーをテーマとするイベント、「グランドバーゼル」。古さや希少性を大事にする従来のヴィンテージカーイベントとは一線を画し、デザインや建築などの視点から自動車を見つめなおす初開催の展示だ。

記念すべきオープニングセレモニーはイタリアを代表するカーデザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロ80歳のバースデイを祝うことから始まった。曽祖父の代から教会のフレスコ画家を生業とする家に育ったジウジアーロはスケッチも一流だ。まず「アートとカーデザインとの関係とは?」 との質問に対して彼は「関係はない」と、峻別した。いままで200台以上のカーデザインを手がけてきた彼にとって、アートはあくまでもリフレッシュするためのもの。だがそのいっぽうで「クライアントへのプレゼンテーションで、絵の技術は十分に活用してきた」とも証言する。「たとえばベルトーネのチーフデザイナー時代に原寸大のスケッチを描いて誕生したクルマが、これだ」。そう指さす先にはコルベア・テスチュードが置かれていた。これはジウジアーロがわずか24歳の新人時代に生まれた作品。その実力は瞬く間に世界に知れ渡った。

そのジウジアーロが、いつかデザインしたいと熱望し続けてきたものが戦闘機だ。「現在もその思いはあるのか? 」と聞くと、マエストロは80歳とは思えない輝いた目で頷いた。会場の「テスチュード」も最新作「シビラ」もともに大胆なキャノピーをもっている。少年のような無垢な憧れと特別な表現力こそが、現代のダ・ヴィンチといわれる彼の核なのかもしれない。

「シボレー・コルベア・テスチュード」のリア。奥のランボルギーニ・ミウラの開発は後任のマルチェロ・ガンディーニ時代と跨っている。両車のデザイン的関連を考察できる展示方法もグランドバーゼルならでは。

1963年 シボレー・コルベア・テスチュード

ジウジアーロがテスチュードをデザインしたのは24歳の時。乗降は、ドアと一体のガラス製キャノピーを跳ね上げて行う。米国の小型実用車をここまで流麗に変身させ、かつショーカーとは思えぬほどしっかりしたパッケージングを実現。彼の天才としての片鱗が確認できる。

若きジョルジェット・ジウジアーロは社主ヌッチオ・ベルトーネと雪舞う中テスチュードを運転して63年ジュネーブ・ショー会場に乗り込んだ。

2018年 GFG シビラ GG80

2018年ジュネーブで公開したコンセプトEV。既存の高級セダンの全長を確保すれば、より大きな室内空間とラゲッジスペースを創出できることを証明。ドアを開くと前方へ750mmせり出すキャノピーや部分的に開くルーフは、パッケージングや乗降性を追求してきた彼ならではの発想。

こちらの記事は、Vマガジン Vol.01「グランドバーゼル&ペブルビーチ徹底取材 ヴィンテージカーの新潮流。」特集からの抜粋です。気になった方、ぜひチェックしてみてください。アマゾンで購入はこちらから。

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