日常を彩る美しい器に出合える、東京&京都の人気店4軒。
器作家も信頼を寄せる、審美眼をもつ人気店をピックアップ。それぞれの店主に、日常にひとつ取り入れるだけでいまの生活が少し変わる、そんな器を薦めてもらった。
1.千鳥(東京) ──使う人の気分を高揚させる、 現代作家の器が揃う。
2.工芸喜頓(東京) ──力強くキリッとした民藝の器が、 幅広い年齢層の心を捉える。
こちらの記事は、2020年 Pen 10/1号「中田英寿のニッポン文化特別講義。」特集よりPen編集部が再編集した記事です。
器作家も信頼を寄せる、審美眼をもつ人気店をピックアップ。それぞれの店主に、日常にひとつ取り入れるだけでいまの生活が少し変わる、そんな器を薦めてもらった。
1.千鳥(東京) ──使う人の気分を高揚させる、 現代作家の器が揃う。
2.工芸喜頓(東京) ──力強くキリッとした民藝の器が、 幅広い年齢層の心を捉える。
こちらの記事は、2020年 Pen 10/1号「中田英寿のニッポン文化特別講義。」特集よりPen編集部が再編集した記事です。
この店と出合って、現代作家の器を日常で使う楽しみにハマった人も多いだろう。人気陶芸家から若手まで、テイストも種類も幅広く揃うこの店の主人は、つくり手からの信頼も厚い柳田栄萬さん。改装したばかりの広い店内には、作家と店主が二人三脚でつくる器もある。たとえば、知多市の松村英治による翡翠色のオーバル皿。柳田さんいわく「イタリアの業務用皿をベースに、たたら(平たく延ばした粘土を型に押し付け成型する)技法でつくってもらったもの。普段はろくろ引きの武骨な器をつくる松村さんに、あえて型モノをお願いした」。業務用だけあって料理が映えるモダンなかたちだが、型モノなのに手の跡や歪みも残り、釉薬のかかり具合が一枚一枚異なるのもいい味わい。柳田さんは、長く土と向き合ってきたつくり手の底力を感じるという。
ガラスや木工、金属など、焼き物以外の作家ものも多い。東京のガラス作家、新田佳子の鉢は、吹きガラスにサンドブラストで幾何学模様を施したもの。「有機的なフォルムにシャープな模様がなにしろカッコいい。使うたびに気分が高揚するし、花を生けたくもなる」。最近、自宅用の花器を買い求める人も増えてきたと話す柳田さん。千鳥に並ぶ器には、日常のなにげないひとコマに潤いを与える力がある。
東京都千代田区神田三崎町3-10-5 原島第二ビル201A
TEL:03-6906-8631
営業時間と休業日はウェブで確認を。
https://chidori.info/home
焼き物、ガラス、木の器。全国各地の窯元や工房から選んできた民藝の器を扱う、世田谷の工芸喜頓。この店で少しでも気になる器が見つかったら、まず店主の石原文子さんに話しかけてみてほしい。器やつくられた土地の背景、つくり手の人柄やどう使ったら楽しいかまで、淡々と冷静に、でも大切な旧友を紹介するがごとき愛情をもって教えてくれる。
「丹波焼・俊彦窯(としひこがま)の大ベテランにお願いして、サンマ皿をつくってもらったんです。一尾まるごと収まるかたちではなく、少しハミ出すくらいの絶妙なサイズ。キリッとしているけれど、よそゆきすぎない佇まいがさすがです。島根の森山窯の、自然の景色を映したような白釉の器には参りっぱなし。関西風の汁たっぷりのおでんもいいし、野菜の色も映える」
比較的、力強い印象のものが多いことと、ひとつの窯や陶芸家について、小皿や鉢からピッチャーまで多彩な種類を揃えていることが特徴。そして、基本は「普段使いに合う親しみやすい器」が揃うのだが、その中に1割ほど「なにに使うか想像がつかないけれど、抗えない魅力がある」というような、分厚い大皿や個性的な碗も紛れている。そのダイナミズムもまた民藝の面白さ。年配の紳士から新婚夫婦まで、この店に通う人が途切れない理由のひとつだろう。
東京都世田谷区世田谷1-48-10
TEL:03-6805-3737
営業時間:13時~18時
定休日:月、火、日、祝日
www.kogei-keaton.com
「エッセンスの意味は本質。食べることと暮らすことの本質を、器を通して伝えたい」と語る店主の荒谷啓一さんと妻の里恵さん。京都でいま最も注目のエリア・岡崎にあるこの店は、海外の工芸ファンにも人気だ。「器には、大昔から食物や風土に敬意を払ってきた日本人の感性がピュアに表れています。そこを真摯に考えてものづくりをしている作家と作品を厳選し、誇りをもって世界中に紹介できたら」と啓一さん。
たとえばふたりが薦める、能登の塗師、赤木明登の飯椀。
「汁椀よりも大きめで高台も高い。赤木さんが、米を基本としてきた日本古来の食文化や、神様に感謝して捧げもつかたちを大切にしていることがわかります」と里恵さん。
静岡の修善寺にアトリエを構える二階堂明弘の器も然り。二階堂が常に意識しているのは、土器や青銅器など太古の器を見直し、その神髄を現代に合うかたちにして未来へとつなぐこと。薄手でシュッとしたフォルムが身上だが、使ってみると大地に根ざした骨太な力強さが伝わってくる。
「赤木さんの漆器も二階堂さんの焼き締めも、軽くてモダンで使いやすい。プロの料理人にも好評です。でも、とりわけ魅力的なのは、その奥に悠久の時の流れを感じること。どんな時代でも愛される、そんな普遍性があると思います」
京都府京都市左京区岡崎円勝寺町36-1 2F
TEL:075-744-0680
営業時間:11時~18時
定休日:月(臨時休業あり)
https://essencekyoto.com
「モダンでどんな器にも合う鳥取・延興寺(えんごうじ)窯の器や、和食はもちろんパスタもお菓子もどーんと受けとめる熊本・小代焼(しょうだいやき)ふもと窯のスリップウェア。どちらもデザインが魅力的で、民藝の器が初めての人にもお薦めです」
京都聖護院のロクは、器と生活道具の店。器は民藝の窯元や民藝の流れを組む作家の器を中心に扱っている。大らかな鉢や皿は、店主の橋本和美さんが10年以上使い続けて太鼓判を押すものや、窯元まで出向いて厳選したものばかり。選ぶ基準は土の味。「持った時の質感や重み、手に温かく寄り添う土の味わい。それが民藝の器の本意だと思うんです」
だからこの店では、見た目の好み最優先で選んでも大丈夫。毎日使ううちに、「見た目のよさだけじゃない」ことがしみじみとわかるからだ。心地よい肌触りと口当たり、とことん焼き抜かれた土の力強さ、そして生活道具としての勝手のよさ。「民藝の器ってこんなに素敵なんだ……と、きっといいかたちで裏切ってくれると思います」と橋本さん。
小皿ならば千円台から買える良心的な価格も嬉しい。「窯元のつくり手はみんな、使う人の喜びを考えて日々工夫を重ね、誠実に土と向き合っている。それを手頃な価格で暮らしに取り入れられるのは、本当にありがたいことだと思います」
京都府京都市左京区聖護院山王町18 メタボ岡崎101
TEL:075-756-4436
営業時間:13時30分~19時
定休日:水(臨時休業あり)
www.rokunamono.com
2019年に発表されたオーデマ ピゲの新コレクション「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」が高い人気を背景に快進撃を続けている。バリエーションがますます多彩になるだけでなく、ストラップも充実。腕元をより個性的に演出できるようになった。
ダイヤルの顔つきはオーソドックスだが、少し傾けるだけで独創的なサイドビューが目を惹く。立体物である腕時計は、真正面だけでなく、手首に巻いてやや斜めから見た状態が最も美しく見えるようにデザインされているが、「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」は最新の高度な工業技術を惜しみなく導入することで、21世紀にふさわしい新たなエレガンスを創造したと評しても決して過言ではないはずだ。
1993年の「ロイヤル オーク オフショア」からおよそ四半世紀ぶり。まさに"満を持して"という言葉を体現するかのように2019年に発表された新コレクションは、ネーミングから異色だった。伝統と革新の調和を意味する4つのワード(Challenge: 挑戦 Own: 継承 Dare: 追求心 Evolve: 進化)を「CODE」として集約。「11.59」とは、新たな1日が始まるまであと1分の高揚感と期待が込められている。最後にブランド名を加えたのは、当時でも144年の伝統を誇る老舗マニュファクチュール自身が、このコレクションによって「新たな1日」を迎えるというメッセージではないだろうか。
いずれにしても、「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」の際立った特徴は、軽快でモダンな印象を与える革新的なケースにある。ベルトとの接合部であるラグは大胆な中空構造になっており、上部は極薄のベゼルに注意深く溶接されている。その一方で、下部はメンテナンス時などに着脱できるよう裏蓋に薄紙1枚程度の隙間で密着。これだけでも最先端の技術力がなければ不可能だったという。8角形のミドルケースもサイドビューを印象的にしているが、こうしたハイレベルな基本構造が多彩なバラエティを生み出すベースになっている。また、ダブルカーブとも呼ばれるサファイアクリスタルの風防も宝飾品のような煌めきを感じさせる。
新コレクションにもかかわらず、発表当初から自動巻き3針、クロノグラフだけでなく、超複雑機構といわれるトゥールビヨンもラインアップ。老舗マニュファクチュールの底力を発揮したが、翌年には深紅のバーガンディやバープルなど5色の斬新なカラーダイヤルを追加して、嬉しい驚きをもたらした。ただし、平板な色味ではなく、深みのある上品なラッカー仕上げ。2019年のモデルと同様に8層を塗り重ねることで、美しい色彩を実現している。
そして、前述したミドルケースの多様化が、絶えざる自己革新の表明といえるだろう。2020年に発表されたモデルは、ベゼル・ラグと裏蓋は18Kホワイトゴールドだが、ミドルケースは18Kピンクゴールド。色違いなので構造がわかりやすいだけでなく、これほど個性的でスタイリッシュなラグジュアリー感は他にないのではないだろうか。このミドルケースに、新たな素材としてセラミックを採用したのが2021年の最新作だ。
「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」の際立った特徴は、中空に造形されたラグが8角形のミドルケースを上下から挟み込むダイナミックな構造にある。このため別素材の組み合わせが可能となり、2020年に色違いのゴールドをコンビネーションしたモデルを追加。そして2021年の新作では、クロノグラフのミドルケースにブラックセラミックが採用された。
セラミックは表面硬度が極めて高く、傷がつきにくいという特性があることから、一般的には外部と接触するベゼルなどに使用される素材だ。これをミドルケースに使用するケースは珍しいが、金属とは異なった質感が加わることで、新しい雰囲気が生まれたといっていい。だからといって手を抜くわけではなく、原料の酸化ジルコニウムを特殊な方法でさらに強化。高硬度で焼結したセラミックをダイヤモンドツールで加工後に、熟練職人が手作業で磨き上げている。こうした綿密な工程が高品質につながるのである。
ケースバックから見られるクロノグラフのムーブメントも、自社開発の「キャリバー4401」を搭載。ベースムーブメントにクロノ機構を載せるモジュールスタイルではなく、ゼロから設計する一体型。複雑時計を得意とする屈指のマニュファクチュール、オーデマ ピゲの意欲が漲る最新鋭のクロノグラフ専用ムーブメントだ。コラムホイール式の垂直クラッチなので、プッシュボタンは軽快で針飛びの怖れもない。計測途中でも瞬時にリスタートできるフライバック機構も備えている。特許取得のゼロリセットメカニズムで、すべての指針がぴたりとゼロ位置に戻るのも心地よく感じる。
ブラックセラミックのモデルは、18Kホワイトゴールドと18Kピンクゴールドの2タイプ。どらちもダイヤルはヘアライン加工のスモークグレーなので、ベゼルとラグのラインが美しく映える。洗練された造形美が、セラミックという異素材でさらにアップグレードしたといえるだろう。
それだけなく、オーデマ ピゲブティックの2Fにあるカスタマーサービスではストラップを数多くラインアップした専用サロンを新設。多彩なカラーバリエーションはもちろん、アリゲーターやカーフ、ラバーなどの素材も豊富に揃えている。来店する時間的余裕がない場合は、ストラップ交換を全国どこからでも配送無料で受け付けてくれる。汗じみや傷みなどによる単純な交換に限らず、ストラップを別のタイプにするだけで腕時計全体の印象が大きく変わるので、より個性的な組み合わせにチャレンジできる。
また、オーデマ ピゲ カスタマーサービスでは最新のVRシステムを活用し、スイスのル・ブラッシュにある本社工房での腕時計づくりを、日本に居ながら体験できるサービスを開始した。「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」を組み上げていく各種作業を疑似体験できる。製作工程でさまざまな開発秘話なども特別に披露されるので、興味のある人はぜひ利用していただきたい。腕時計を持つ喜びや楽しみがさらに深まるはずだ。