ティファニーから、自社ムーブメントを搭載した角形ウォッチが登場! その秘密と魅力を解き明かしましょう。

  • 写真:宇田川 淳
  • 文:並木浩一

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ティファニー スイス ウォッチ カンパニー代表のニコラ・アンドレアッタさん。話題の自社ムーブ搭載機を中心に、お話を伺いました。

いまティファニーが、腕時計の世界にホットなニュースを提供しています。というのも新作の「ティファニー スクエア」が、なんと自社製ムーブメント搭載で登場したからです。いうまでもなく自社製ムーブメントは今日、高級時計ブランドの証なのですが、それを実現するのには多大な困難をともないます。ティファニーはなぜ、あえてその道を選んだのでしょうか。ティファニー スイス ウォッチ カンパニー代表のニコラ・アンドレアッタさんが、インタビューに答えてくれました。実はティファニー自身が1920年代に製造したスクエアウォッチとの出合いが、すべてのきっかけだったそうです。

「その時計をアーカイブで見つけてから、本当に恋に落ちました。そこを起点に、このような時計のための完璧なムーブメントを探したのですが、既存のものでは見つかりませんでした。丸形につくったものを入れてしまうのならばいいのですが、スクエアウォッチに合わせるためのスクエア形のムーブメントは、非常に難しいのです。そこで、私たちは自社でつくれないかと考え始めました」

大胆な発想でありながら、ティファニーにはそこに踏み出す理由も自信もあります。1837年にニューヨークで創業した国際的ジュエラーであるティファニーは、実は腕時計でも歴史的な経験を重ねています。なんと1870年代にはジュネーブに工場を構え、ムーブメントからの時計づくりを行っていました。しかも後にその工場を譲渡した相手は、あのパテック フィリップです。 

4年前からティファニーは、スイスに開発・デザインからムーブメントの組み立てまでを行える拠点を構えています。そのワークショップで、自社製ムーブメントのプロジェクトが実行に移されることになりました。

スモールセコンドを備えたシンプルな3針スタイルで、ヒストリカルな雰囲気が漂う角形時計「ティファニー スクエア」。手巻き、ケースサイズ27x35.8mm。¥2,322,000 (税込み)

通常の角形時計では使い回しのできる丸形ムーブメントを使って、ケースの4隅を余らせてしまうものです。スクエアウォッチにスクエアの端正な自社製ムーブメントを搭載するのは、本当の贅沢です。

「実物を見ることなしに、100本以上の注文が入ってしまった」

腕時計ビジネスに精通したアンドレアッタさんは、自社製ムーブメントがもつ意味を知っている。その上でこの先のティファニーの行き方は「これから考えなくては」と語ります。

アーカイブにインスパイアされた腕時計には、2つの方向性があります。オリジナルに 忠実なのか、進歩をこめるのか。「ティファニー スクエア」は、その両方を満たしています。
「もともと美しいデザインはタイムレスなので、あまり変えたくないのです。1920年代のものが、いまではそれ以上に、むしろ以前よりもさらに美しさを増しています」 

いっぽうで、搭載ムーブメントはどちらもマニュアル(手巻き)ですが、実はオリジナルのものは“丸形”だったそう。それを角形の自社ムーブメントにインテグレートするということは、本当にスペシャルな試みといえるでしょう。

新作「ティファニー・スクエア」の元となった、1920年代のティファニー製腕時計。レイルウェイ・インデックスに、相似形のスモールセコンド。花開くアメリカン・デコの時代を先取りするこの時計が、「ティファニー スクエア」の天啓に繋がった。

「今日では、ラグジュアリーなブランドが自社製ムーブメントをつくる動きが盛んです。では私たちが完全にこうしたものづくりの方向に向くのかというと、そう決めているわけでもないのです。ただ、誰もやっていない特別なことに取り組むということに、プライドを感じてはいます」。

その「ティファニー スクエア」は、創業180年を記念した世界限定180本だけのスペシャルモデルです。「ある意味、コレクターアイテムです。実際に広告をみて、実物を見ることになしに、すでに100個以上のオーダーが入っているのです」

貴重なスペシャルモデルの一本を、腕に着けるアンドレアッタさん。薄くスタイリッシュで、気品に満ちたオーラのある時計。

ティファニーは現在、28ヶ国で300以上のストアを展開しています。その規模に比べてもあまりにも少ない、わずか180個の貴重な時計を手に入れることができた人は、本当に幸運な人といえるでしょう。その時計はただ時計なのではなく、現代に本当のラグジュアリーの意味を問うものでもあります。

「180周年を記念するこの時計は、ティファニーブランドの変遷のまさに証人です。美しさをつくり出していく、美しさをデザインするティファニーならではの、タイムレス・デザインを備えた時計なのですから」

●ニコラ・アンドレアッタ
ティファニー スイス ウォッチ カンパニー代表1997年ミラノのカトリック大学を卒業後、ヨーロッパやアジアの時計ブランドで管理職ならびにコンサルタントとして経験を積む。2003年に自身の企業を設立、ラグジュアリーウォッチの製造を手がけた後、2013年からティファニーに参加。ウォッチビジネスの経営管理業務全般を担っている。

問い合わせ先/ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク
TEL:0120-488-712   www.tiffany.com