バランスボールからスツールまで、テレワークに最適な椅子5選。

  • 写真:後藤武浩
  • セレクト&スタイリング:今吉高志
  • 文:岩崎香央理

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オフィスから自宅でのテレワークに切り替える企業が増える中で、リビングの一角やダイニングテーブルを利用した作業スペースに、やや行き詰まりを感じている人も多いのではないだろうか。

たとえ一時的なホームオフィスだとしても、快適な環境を整えて、仕事の気分も効率も高めたい。そんな時には、「とりあえずの一脚」ではなくて、ずっと使える新しい椅子をひとつ、インテリアにプラスしてみるのがお薦めだ。普段の生活スタイルに馴染みながらもテレワーク空間をアップグレードしてくれる、個性豊かな5脚を紹介する。


1. 折り畳みチェアで、外でも中でもフレキシブルに仕事。

2. 作業時間を特別なひと時に変える、360度で美しい回転椅子。

3. 本革のバランスボールで、筋力と集中力をアップする。

4. 用途は自由自在、汎用性の高い低価格スツールをまず一脚。

5. 浮遊感のあるデザインが、長時間座ったままのストレスを軽減。

折り畳みチェアで、外でも中でもフレキシブルに仕事。

ランドノーム「ディレクターズチェア」( W51×D54cm×H83.5cm)¥24,200(税込)/アクタス TEL:03-5269-3207

通勤や外回りのない毎日は、家の中の定位置で長時間過ごしてしまうことにもなりがちだ。ときにはマンネリな気分を変えて、バルコニーや庭を仕事場にしてみるというのも、テレワークの醍醐味だろう。

ヘリーハンセンとアクタスによるコラボレーションコレクション、LandNorm(ランドノーム)のディレクターズチェアは、カジュアルすぎないマットブラックのアルミフレームが落ち着いた印象。ダイニングにもよく馴染む。気軽に外へ持ち運びできる折り畳み式ながらも、シックな重厚感があり、メッシュ素材の座面がほどよいクッションで身体を支える。

爽やかな空の下、いつもより仕事が捗るか、あるいは心地よくてつい眠ってしまうかは、自分次第だ。

インドアにもアウトドアにも合う都会的な黒。折り畳むとフラットになるので、収納時に場所をとらない。

作業時間を特別なひと時に変える、360度で美しい回転椅子。

「インドシンヌ スウィベルチェア」(W61×D56×H71cm)¥462,000~(税込)/カッシーナ・イクスシー青山本店 TEL:03-5474-9001

ル・コルビュジエとシャルロット・ペリアン、ピエール・ジャンヌレが共作し、オフィス家具の名品として知られるスウィベルチェア(回転椅子)の「LC7」。これを、ペリアンがベトナム滞在中の1943年、入手できる材料でアレンジしたのが「INDOCHINE(インドシンヌ)」だ。

金属パイプのシャープな機能美を誇るLC7に対し、インドシンヌの脚は木製のハンドクラフト。書斎やリビングで過ごす時間を特別なものにしてくれる、温かな佇まいが特徴である。一体化した背もたれと肘かけのカーブは、腰掛けた時に身体のラインにしっくりと沿い、座面をなめらかに回転させれば、疲れた気分もたちまちほぐれる。テレワーク期間が過ぎても、ずっと大切に使い続けたくなるマスターピースだ。

背面から見ても惚れ惚れする造形美。ル・コルビュジエのデザイン哲学と、ペリアンの感性とが見事に融合している。座面が回転するので、背面に置いてあるモノを取る時など、フレキシブルに動けるのも魅力だ。

本革のバランスボールで、筋力と集中力をアップする。

「AURA バランスボール」(径55cm)¥107,800(税込)/ティストゥー トウキョウ TEL:03-5829-4085

運動不足になりやすいテレワーカーには、姿勢を意識して腰痛改善にも効果のあるバランスボールを、ワークチェアとして取り入れることをお薦めしたい。とはいえ、従来のスポーティな素材感とビビッドなカラーリングは、どうしてもインテリアから浮いてしまうのが難点だ。

その点、上の写真の品ならいかがだろう。モカベージュとグレーの落ち着いたトーンでリビングにも馴染む本革スエードの「AURA(アウラ)」は、フィレンツェ郊外で3代続くなめし革工房「CASINI(カジーニ)」が開発したバランスボール。球体を包むのに最適な革づくりからスタートし、裁断や縫製にも研究を重ね、職人たちの技術を結集してつくられた逸品だ。

バランスをとりながら姿勢を保つことは、集中力のトレーニングにもつながる。ゆらゆらとゆれるうちに思考もやわらかくなり、ふと新しいアイデアがひらめくかもしれない。

強度を増すためにダブルステッチを施し、耐荷重は140kg。付属の手動ポンプで膨らませる。

用途は自由自在、汎用性の高い低価格スツールをまず一脚。

「KYRRE( シルレ)」(W42×D48×H45cm)¥1,499(税込)/イケア TEL:0570-01-3900

ダイニングでPCと書類を広げてはみたものの、合間に食事をしたり、家族とスペースを共有したりと、仕事が捗らないこともしばしば。ダイニングテーブルは生活の中心だからこそ、誰もがニュートラルに使いたいもの。そのためには、作業スペースをコンパクトに保ち、必要とあらばセッティングをすぐさま、こまめに切り替えられる工夫が必要だ。

イケアの三角スツール「KYRRE( シルレ)」は、書類をちょっと積んでおいたり、食事時になったらいったんノートPCを仮置きするなど、サイドテーブルとして使うのにも最適。バーチ材の風合いがどんな空間にも馴染みやすいし、驚きのロープライスなので、気軽にひとつ、またひとつと買い足していけるのもありがたい。

イケアは、日本初の都市型ストアを2020年5月28日、原宿にオープン予定。ホームオフィスづくりのヒントを探しに訪れる日を、楽しみに待ちたい。

スペースを少し拡張するだけで、作業効率がアップ。バーチ材のライトな質感がどんなインテリアにも合う。スタッキング可能なので、収納する際は場所をとらないのも魅力だ。

浮遊感のあるデザインが、長時間座ったままのストレスを軽減。

「ニューソン アルミナムチェア」(W57×D60.5×H84cm)¥379,500(税込)/ノル ジャパン TEL:03-6447-5405

テレワークが長引いてメンタルの落ち込みを感じてきたら、デザインの力を借りて、部屋の雰囲気と自分の心に軽快なリズムを取り戻そう。

マーク・ニューソンが手がけた「アルミナムチェア」は、背もたれと座面とが脚部を通してぐるりとつながった、クリエイティビティあふれるデザイン。建築におけるカンチレバー(通常は両端で支えられているのに対し、その一端が固定され、他端が持ち出されて自由な状態にある梁のこと)を応用した、ミース・ファン・デル・ローエの名作「MRチェア」の流れを汲む構造だという。宙に浮くような座面は適度な弾力が感じられ、メッシュのファブリックも軽やかな座り心地だ。

気に入ったデザインの椅子をひとつプラスするだけで、沈みがちな気分もリフレッシュするはず。自分だけの空間を楽しみながら、テレワークを上手に乗り切ろう。

背もたれから座面までが、ひと筆書きのようなラインを描く逆カンチレバー構造。理論と計算に基づいたシンプルな美学を実現している。