極小ボディに凝縮された、無限の能力。

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    青野 豊・写真photographs by Yutaka Aono

    極小ボディに凝縮された、無限の能力。

    これまで高級コンデジとして人気を得てきたRXシリーズが、極小サイズで登場。¥86,270(税込)

    ソニーは「軽薄短小」の元祖だ。それも単に軽く・薄く・短く・小さくするだけでなく、新しい使い方、新しい形、新しい価値を提案するのが得意だった。でも最近、そんな文脈のソニー製品がないとお嘆きの諸兄よ、朗報だ。RXシリーズの最新機「RX0」は、まさに往年のソニー・スピリットが横溢した「ソニーでないとつくれないカメラ」だ。

    うーん、小さい! 掌にすっぽり隠れる。わずか110ℊ。極小(幅59×高さ40.5×奥行29.8㎜)なのに、1インチという大サイズのCMOSセンサーを搭載した(1530万画素)。ソニーのコンパクトデジカメでは、「RX」はこだわりのシリーズだ。これまでは、「高級」「高倍率」が切り口だったが、今回のRX0は「超小型+ヘビーデューティ」だ。雨に強いカメラを、落としても壊れないカメラを……とのユーザーの要望に真摯に答えたのだ。

    ボディを小さくしてセンサーも同時に小さくするのなら、それはRXではない。あくまでも1インチセンサーは譲れない。RXと名付けるのだから画質には徹底的にこだわり、ソニーの高級デジカメの技術をたっぷり投入した。外からは、口径の小さなレンズ(24㎜広角、単焦点)しかみえないが、中には本体サイズにしては大きなレンズが収まり、入射した光をしっかりと取り込む。すると、ボディのほとんどはレンズ部とバッテリー部が占める。空いた僅かな隙間に信号回路を入れなくてはならず、相当、苦労したという。

    画質とともにこだわったのは、堅牢性。雨天や水中、砂埃、カメラに衝撃が加わる……など、想定されるあらゆる場面で静止画、動画を問題なく撮影するには、まずボディ剛性が大事だ。そこでボディをアルミのインゴット(塊)から削り出してつくった。通常は面を組み合わせて立方体を形成するが、界面は力学的に弱い。削り出しなら、剛性は圧倒的に高い。堅牢性確保のためにレンズのズームやオート・フォーカスも外した。高剛性化の成果は2ⅿの落下耐性、200 ㎏fの耐荷重、水深10ⅿで60分までの撮影可能というスペックに結実、環境や天候を選ばず全天候撮影が可能になった。

    映像表現の可能性を広げるのもRX0のミッション。最高毎秒960フレームのスーパースローモーション、複数のRX0を組み合わせた多視点撮影など、小ささと独自機能、高画質を活かすのも面白い。本製品のウェブサイトには、ボール、フラフープ、棒の先、床、壁などに直接RX0を仕込んで、舞踊を撮影したスーパースローのダイナミックな動画がアップされている。

    RX0の‟0”とはINFINITE(無限)を意味する。小サイズに凝縮し、可能性を無限に拡げたカメラ、それがRX0だ。

    背面のモニターも極小ながら、操作系はこれまでのRXシリーズに近いデザインを踏襲しておりわかりやすい。

    麻倉怜士
    デジタルメディア評論家。1950年生まれ。デジタルシーン全般の動向を常に見据えている。巧みな感性評価にファンも多い。近著に『高音質保証!麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)がある。
    ※Pen本誌より転載