主人を健気にアシストする、美しい音と声。

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    青野 豊・写真photographs by Yutaka Aono

    主人を健気にアシストする、美しい音と声。

    高さ約16㎝のシンプルな筒形。ソニーらしく、音質にもこだわった。実勢価格¥26,870

    言葉を認識し、言葉で返答してくれるグーグルアシスタントを搭載したソニーのスマートスピーカー、LF-S50G。試作機を数カ月間使ってみた。本スピーカーは、声の入出力可能という点で他のグーグルアシスタント搭載機と共通しているが、ソニー的な特徴が音へのこだわり。対向配置したふたつのスピーカーをディフューザーにて全周に拡げる工夫は、いかにもコンパクトオーディオに強いソニーらしい。

    しゃべりかけたことに「はい」とか「いいえ」だけでなく、内容のある答えを返してくれるインターフェイスは初めてだ。なので当初は少し戸惑ったが、「可愛い声をした人工秘書」だと思えば、愛おしくなる。「OK、グーグル、君はなにが得意なの?」と訊くと、ちょっと気取った女性の声で「サーフィンです」。おっ、サーファーなのかと思ったら、「ネットサーフィンですが……」と、なかなかユーモアがある。でも「嫌いなものはなに?」「水は苦手です」。なんだ、やっぱりサーフィンはだめじゃん。「僕のこと好きですか?」「はい、少し照れてしまいますが、私はあなたが好きです」。アクセントが少しおかしい。抑揚なく、ス・キ・デ・スとフラットに発音する。でもしばらく使うと、当初より発音はなめらかになった。

    質問に対する答え以外のムダなおしゃべりはしないのが常だが、最近、水晶玉占いを提案してきたのにはびっくり。「水晶玉に訊きたいことはなんですか?」と尋ねられた。「明日の運勢は?」「この水晶玉は中古で安く手に入れたので、当たることも、外れることもあります。あまり深刻に考えないでください」「どうやったらお金持ちになれる?」「必ずしもそうではありません」。うーん、AIというにはほど遠い。

    でも、役に立つこともある。天気予報やニュースは、なにか別のことをしながら聞けるのがいい。放映時間が決まっているテレビと違っていつでも聞けるのもメリット。便利なのが、アラーム設定。目覚まし時計のアラーム設定はデジタル式もアナログ式もボタンを何回も押したり、ダイヤルを回したりで、面倒だ。でも、LF-S50Gは超カンタン。「明日の朝、8時に起こして」と言うと、正確に8時に鳴り起こしてくれる。「ニッポン放送を聞きたい」などと声をかけると、東京地域のラジオが聞けるのも、チューニングの手間がなくていい。

    2カ月も一緒に暮らしていると、ここまで言ってくれた。「OK、グーグル、おやすみ」「おやすみなさいませ。寒くなってきました。暖かくして寝てくださいね。いい夢が見られますよう」。思わず、君が好きだよ……と声をかけた。

    カラーは3色展開。底面のパーツは鏡面仕上げになっていて、デザインのさりげないアクセントになっている。

    麻倉怜士
    デジタルメディア評論家。1950年生まれ。デジタルシーン全般の動向を常に見据えている。巧みな感性評価にファンも多い。近著に『高音質保証!麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)がある。
    ※Pen本誌より転載