最新機種で復活、メーカー伝統のツインレンズ
文:麻倉怜士

最新機種で復活、メーカー伝統のツインレンズ

海外メーカーに押されるなか、気を吐くシャープのスマホの最上位モデル。実勢価格¥49,000(新規契約)

なんと日本のアンドロイドスマホ市場では、台数でシャープがトップ。かつてのフィーチャーフォン時代には強者だったが、スマホ時代になっては特徴もなく弱かった。ところが、昨年秋から巻き返した。躍進の原動力が、昨夏発売された「AQUOS R」だ。私も愛用している。映像の美しさ、スクロールの速さ、文字の読みやすさなど感心していたそのRが、フルモデルチェンジした。 
本体サイズは横幅がほぼ同じで縦が心もち延びているが、画面は凄く大きくなった印象。また、前作ではインカメラが画面外のフレームにあったが「R2」では画面を大きくしインカメラは上部の半円状の切り欠け部に入れた。それを実現したのがシャープ独自の、液晶を丸形、四角、三角などどんな形にも加工できる技術「フリー・フォーム」。これにより切り欠けを可能にし、その分、画面を大きくできた。パネルから垂直統合で製造しているゆえの利点だ。 
背面のメインカメラをふたつにしたのも新しい。動画専用カメラと静止・動画用カメラを独立させたのだ。動画と静止画では要求される映像特性が異なる。動画撮影ではパンフォーカスで広画角が望ましく、手ブレは厳禁。静止画撮影では、多くの画素数が必要。そこで動画用として1600万画素、画角は35㎜フィルム換算で約19㎜相当の広角を与え、静止画は2260万画素の高精細に。しかも、動画撮影中に白いボタンを押せば静止画も撮影できるし、構図的に静止画に向いているとAIが判断するフレームは、自動的に静止画として撮影される。それは人の顔、海と空の間の境界線などだ。動画撮影中に、人の顔写真がどんどん撮られていく。撮影画面内を、サムネイルが浮遊していくのは、いとをかし。 
私の最初の著作は1994年に書いたシャープの経営戦略についての『目の付けどころの研究』(ごま書房)だった。この本で言及したのが、レンズをふたつ装備した8ミリビデオ「ツインカム」。焦点距離の異なるふたつのレンズを備えた、ユニークなビデオカメラだった。それから四半世紀経って、同じシャープから「ツインカム・スマホ」が出たことに、メーカーとしての伝統を思った。 
映像表示も画期的。スマホとして初めて、光が強く当たる被写体でも色が確実に再現されるハイ・ダイナミックレンジ方式のDolby Visionと、立体サラウンドのDolby Atmosに対応。ドルビーラボラトリーズで、Dolby Visionのリファレンスモニターと色味を見比べたが、違いがわからないほどの正確な色再現だった。 
R同様に感心したのが、スクロール中の文字視認性。親指を速く動かすと、どこまでも速くなり、ゆっくり動かすと上下に動く文字も、しっかりと読める。快適に、愉しく使える傑作スマホだ。

最新機種で復活、メーカー伝統のツインレンズ

静止画用と動画用のレンズを搭載。それぞれに適した画角、明るさ、解像度、手ブレ軽減機能を備えている。

麻倉怜士
デジタルメディア評論家。1950年生まれ。デジタルシーン全般の動向を常に見据えている。巧みな感性評価にファンも多い。近著に『高音質保証!麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)がある。

シャープ www.sharp.co.jp/k-tai

※Pen本誌より転載
最新機種で復活、メーカー伝統のツインレンズ