シンプルさにこそ、“毒”が映える。
vol.05
マテリアルを追求した、美しさの神髄。

シンプルさにこそ、“毒”が映える。

写真:岡村昌宏(CROSSOVER) 文:まつあみ靖

『ラドー トゥルー シンライン トゲ』クオーツ、ハイテクセラミックス・ケース&ブレスレット、ケース径39.0㎜。世界限定1001本。¥231,000(税込)

「うっとりのテイスト」「気詰まりのテイスト」「不気味さのテイスト」。フード・アーティスト諏訪綾子氏が手がけたゲリラレストランのメニューには、そんな興味を引く言葉の数々が躍る。

「食とは本能的な無意識に訴えることのできる究極のコミュニケーション媒体。旬の食材などでなく、記憶や余韻、気配を味わうことを追求しています」

美食や栄養ではなく、人間の本能的な欲望、好奇心や進化をテーマにパフォーミングアート、インスタレーション、ダイニングエクスペリエンスなど食をめぐる表現を展開する。

時計以外の分野のデザイナーやアーティストを起用したウォッチデザインに積極的に取り組むラドーは、そんな彼女を今回のコラボレーターに選んだ。

「セラミックウォッチのミニマルな薄さや、体温と一体化し身体の一部になる感覚に興味を覚えました。食を通した“体験”を作品として発表しているので、“プロダクト”としてよりも、装着することで、その人の内面がより魅力的でミステリアスに浮かび上がる現象が起こせたらと考えました」

そこで彼女が選んだのは“毒”。

「猛毒のあるフグを食すのは日本独特の食文化。毒がなければ、フグはここまで珍重されてこなかったかもしれない。薔薇もトゲの存在によって、より魅力的に見える。毒やトゲは、そのものの魅力を浮かび上がらせてくれる」

その発想から誕生した『ラドー トゥルー シンライン トゲ』は、細かいトゲに覆われたフグの表皮がモチーフの文字盤が目を引く。時分針はハリセンボンのトゲが着想源。他に類を見ない“毒”を盛った表現が、着用者の内面を揺さぶる。

トゲが特徴的なハリセンボンやフグを本社に送り3Dスキャンすることに始まり、完成に2年を費やした。時分針にもトゲの形状が忠実に反映されている。

2020年1月18日から3月22日まで、『記憶の珍味 諏訪綾子展』を、東京・銀座の資生堂ギャラリーで開催。その美しい世界観を味わいたい。 Photograph by Rowland Kirishima

シンプルさにこそ、“毒”が映える。

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愛用品と、ともに。