甘やかし不要! 主の助けなしで、完璧な掃除ぶり。

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    青野 豊・写真photographs by Yutaka Aono

    甘やかし不要! 主の助けなしで、完璧な掃除ぶり。

    最先端のセンサーシステムにより、障害物をこまやかに避けて掃除してくれる。¥140,400(税込)

    ロボット掃除機には愛着が湧き、まるでペットを飼っているように思えるから、彼が掃除しやすいように部屋の片付けをするのも厭わなくなる――初めてロボット掃除機を使ってから10年あまり、言い訳のようにこう唱え続けてきたことを撤回したい。本当は部屋を片付けるのは面倒だし、コードやケーブルに絡まって行き倒れになられても困りものである。片付けないで済むのなら、それに越したことはない。問題は、そんなよくできたロボット掃除機など存在しなかったことにある。

    ところが、それがついに登場した。片付けなくてもいいロボット掃除機が。それはスウェーデンに本社を置く世界でも有数の家電メーカー、エレクトロラックス社から3月初旬に発売されたばかりの「PURE ⅰ9(ピュア・アイ・ナイン)」だ。同社がロボット掃除機「トリロバイト」を世界に先駆けて発売したのは2001年のことだったが、まだまだ技術が追いついていなかったため満足のいく製品とはならず、同社いわく〝失敗作〞となってしまった。

    リベンジを図るべく開発されたPURE ⅰ9は、高性能の3Dセンサーを備え、まるで人の目で見ているようにギリギリまで近づきながらも、床上のコード類を巻き込むこともなく、障害物にぶつかることもなく進んでいき、部屋全体をマッピングしながら効率よく掃除をしていく。とにかくぶつからないし、巻き込まない。なのに限界まで近づいてサイドブラシでホコリをかき出しながら、見事な吸引力でキャッチしていく。何とも丁寧な掃除ぶりで、無駄がない。三角形の形状の底辺部分(こちらが前面になる)に備えたロールブラシの幅が広く、吸引口までの距離が短いのも、掃除能力の高さを裏付けるものになるだろう。

    また、わが家には17歳の老犬がいるため、よく通るところには滑らないようにコルクのマットを敷き、テーブルの下にはラグを置くなど微妙な段差が多く存在する。それでも、センサーが障害物の先まで把握して段差もスムーズに乗り越えるので、一度たりとも立ち往生している姿を見たことがないのは頼もしい限り。専用アプリで、外出先から操作することももちろん可能だ 

    発表会で語られたのは「ロボットではなく〝掃除をするもの〞」という考え方。ここに同社の掃除機の長い歴史を見る思いがする。12年に同社のハンガリー工場で開催されたクリーナー誕生100周年のイベントを取材した際、「少しでも家事を楽にしたいと、持ち運び可能な軽量の掃除機をつくったのがエレクトロラックス」だとCEOが熱を込めて話していた様子が目に浮かぶ。

    時を超えて誕生したPURE ⅰ9。待ちわびたロボット掃除機に、拍手を送りたい。

    スマートフォンの専用アプリを使えば、モード設定やスケジュール予約などを外出先からも行うことができる。

    神原サリー
    新聞社勤務を経て「家電コンシェルジュ」として独立。豊富な知識と積極的な取材をもとに、独自の視点で情報を発信している。2016年、広尾に「家電アトリエ」を開設。テレビ出演や執筆、コンサルティングなど幅広く活躍中。
    ※Pen本誌より転載