和の美意識を感じる、匠なトゥールビヨン

    Share:

    CREDORクレドール

    和の美意識を感じる、匠なトゥールビヨン

    岩崎 寛(STASH)・写真
    photographs by Hiroshi Iwasaki
    並木浩一・文
    text by Koichi Namiki

    セイコーがトゥールビヨンの造り手となり、世間を驚かせたのは昨年のことだ。スイス的に修辞すれば〝東洋最高のマニュファクチュール〞は、そのハイエンドなコレクションの第2フェイズを「クレドール」ブランドから登場させた。ピンクゴールドとホワイトゴールド版を、年間約3本ずつ製作するという。

    文字盤は3種の風合いの格子模様で構成されている。短冊のそれぞれは砂目サテンのベース、鏡面の面取りを施した上で、ヘアライン状の筋目を入れた18金の薄片、ブルーに仕上げた白蝶貝。端正な直線の交錯は、和室に見られるような静寂をその中に見立てている。高度に抽象化されたその模様の整然をアシメトリーに破調するのが、アーモンド型の眼のようなトゥールビヨンの領域だ。キャリッジの虹彩に、バランスホイールの大きな瞳。間を透かしたブルーのトゥールビヨンブリッジが、地板に水平の平行線を磨きだしたゾーンの上で、美しく緩やかに曲線を描く。クサビ型にファセットを切ったアワーマーカーは、文字盤に植えられたのではなく、外縁のリングから宙にせり出している。入射光によってはガラスに印字されたクレドールのロゴとともに、絶妙の陰影を文字盤上に描く。

    搭載するのはセイコー伝統の極薄キャリバー「68系」を発展させた、極薄のトゥールビヨン・ムーブメント。体積が世界最小であるだけでなく、キャリッジ素材にチタンを使う新機軸も盛り込まれた。実は裏側も美しく、〝現代の名工〞に認定された照井清の監修により、ムーブメント一面に彫金が施されている。雪の結晶の間を風が吹き抜ける構成は、和室の丸窓から見た雪景色そのものであるという。

    「香炉峰の雪は簾を掲げて看る」枕草子の情感と機知にも似た、ほかにはないクレドールのもつ和の美意識が、これも目に快い。

    GBCC997

    手巻きトゥールビヨン、自社製キャリバー6830搭載、18金ホワイトゴールド、ケース径40㎜、厚さ8.5㎜、耐磁時計、クロコダイル革ストラップ+18KWG製ワンプッシュ三つ折れ中留、日常生活防水、年間約3本を販売。¥12,960,000
    セイコーウオッチ TEL : 0120-061-012