橋と建築物を想起させる、独創的な文字盤。

    Share:

    コルムの「ゴールデン ブリッジ」は、1980年に誕生した永遠の名品だ。腕時計のデザイン以前にムーブメントの巧緻さ、その美しさが直截に印象的。魅力的なバリエーションを更新し続けるこの橋たち(bridges)に、またひとつ魅力的な角形の新作が加わった。

    時計の街ラ・ショー・ド・フォンに本拠を置くコルムは、スイス高級時計ブランドの中でも若い世代として、1955年に名乗りを上げた。ミッドセンチュリー生まれのブランドは、たとえば本物のコインをスライスしてムーブメントを挟んだ「コイン・ウォッチ」で世界を瞠目させた。また、ヨットレースに使われる国際信号旗をアワー表示に採る「アドミラル」を知らない洒落者はいないだろう。誰も見たことがない独創とロングセラーが、ブランドを不動の地位に押し上げていった。そのブランドでも「ゴールデン ブリッジ」の存在感は、ほかには代えられないものだ。

    「ゴールデン ブリッジ」のコレクションは、歯車の列を一直線に並べたあり得ない独自の構造をもっている。誰もなし得ないバゲット形ムーブメントを発明したのは現代の天才、ヴィンセント・カラブレーゼ。世界最高峰の才能が集まる、独立時計師アカデミー(AHCI)創立メンバーの出世作なのである。世紀の傑作を譲り受けたコルムは、決して陳腐化しない宝物を磨き続けた。

    このモデルでは、奇数時のアワーマーカーをローマ数字で仕立て、アールデコ・スタイルを薫らせる。いっぽう全体はブリッジという表題を解釈し直し、メイン〝ブリッジ〞の一本道に、トラスを張ったアーチ橋の構成に見立てた。時を伝える使命を果たしながら、芸術的な視覚のレベルでの評価を満たす。稀有なムーブメントの価値はそのまま、唯一無二な腕時計の存在意義に重なるのである。