いっそこのまま海援隊!? あの日をこのまま抱きしめたいポルシェ・カイエン最終モデル!

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    東京車日記いっそこのままクルマれたい!

    第49回 Porsche Cayenne GTS / ポルシェ カイエン GTS

    いっそこのまま海援隊!? あの日をこのまま抱きしめたいポルシェ・カイエン最終モデル!

    構成・文:青木雄介

    編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー カマロ改。手に入れて11年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

    荒地とカイエン。いいねぇ。個人的にはこのリアランプが911とデザイン共通化される前の現行型カイエンを、ラスト・カイエンと呼びたい。せめて新型が出るまでは(笑)。

    日本でも来年春の販売が噂される新型カイエン。パナメーラの劇的進化を目にすると否が応でも期待は高まるわけだけど、実際のところ2代目カイエンにはまだ乗ったことがなかった。「あかんなぁ」と思っていたところに、カイエンSEハイブリッドとカイエンGTSを乗り比べる機会があると聞きつけ行ってきた! それも愛さずにはいられない、磐梯吾妻スカイラインとその周辺。ちなみにカイエンって麻布の外交官ナンバー御用達だったよね。あるいはモデル事務所やベンチャー企業の社長たち。さらに言えば社長はきっちりV8ターボ、って印象(笑)。六本木・麻布界隈の海援隊ですよ。あはははは。

    さて、この2台を比べてみるとEハイブリッドは高級車だし、GTSは素直に走りに振られているSUV。そのキャラクターが明確に違っていて面白かった。どちらもさすがにマカンと比べるとワインディングを攻めるには重たいなぁという話になるんだけど、それはどうだっていいね(笑)。カイエンは「悠々として急げ」っていう開高健先輩の人生訓そのままのSUV。高い視座でクルーザーのように悠々と木立を抜け、湖を周回し、山頂を目指す。静謐さもまた高級性能と言いたげなEハイブリッドは湖畔の風景がよく似合う。

    かたやGTSは急峻な坂もV型エンジンの咆哮とともに力強く登り、荒地だってなんのその。ま、そこはイメージだし完全に好みだけど(笑)、最初の予想に反してGTSのほうが楽しかった。先代のV8エンジンほどではないにしろ、北米市場を意識したV型エンジンのオーバースペック感。巡航速度高めのドライブだと、その3.6ℓ V6ツインターボの素性が見えるGTSが、ドライブをよりダイレクトに感じさせてくれる。コンシャスだけどV型エンジンのSUVっていう、カイエンの血統を感じるんだな。来年発売される新型カイエンはマカンやパナメーラがそうだったように、リアランプのデザインが共通化され、911の乗り味を標榜した抜本的なモデルチェンジになるんだろうなって予想する。しかるに現行型のカイエンって現状のポルシェのラインアップで、911を引き合いに出されない唯一の車種になっちゃったんだ。

    新型のそれはきっと車体のすみずみに神経を張り巡らせるような、新たなボディスーツの誕生だし、911ライクなスポーツカーテイストの乗り味。たぶんね(笑)。それはむろん楽しみなんだけど、現行最終型カイエンの2tの巨体を利点に変えている優雅さや余裕のある身のこなし。SUVなのにパワフルなスポーツカーであろうと構想され、初代カイエンから改良を重ねてきた円熟の歴史が、これで終止符を打つって考えると胸に来るものがあった。嗚呼、これがカイエンってジャンルなんだよね。これがラストダンスと考えると名残惜しいし、絶対このままでよかったって人もいるはず。911らしさはいらない。あのカイエンが欲しいって人向き。「もう一度夜を止めて」的な!?

    ポルシェ カイエン GTS
    ●エンジン:3.6ℓ V型6気筒ツインターボ
    ●出力:440PS
    ●トルク:600Nm
    ●トランスミッション:8速ティプトロニックS
    ●車両価格:¥14,240,000(税込)~

    ●問い合わせ先/ポルシェ カスタマーケアセンター
    TEL:0120-846-911
    www.porsche.com/japan/jp